太田述正コラム#3424(2009.7.29)
<皆さんとディスカッション(続x553)>

<戸愚呂(妹)>

 民主党は23日、衆院選マニフェストの原案となる「09年政策集」を公表した。同党が目指す「より対等な日米同盟」の一環として主張してきた日米地位協定の改定方針を後退させ、「改定を提起する」の表現にとどめた。昨年10月に公表された政策集では「抜本的改定に着手する」としていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090723-00000133-mai-pol

 「在日米軍司令官が民主政権公約案牽制
 在日米軍のエドワード・ライス司令官が23日、都内の日本外国特派員協会で会見し、日米地位協定の改定を提起することなどを盛り込んだ民主党の衆院選政権公約(マニフェスト)原案を念頭に「これまでの合意は日米両政府にとって重要であり、今後も持続させていくことが重要だ」と述べ、民主党による衆院選後の対米関係の見直しを牽制(けんせい)した。」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090724-00000103-san-int

 民主党はアメリカからの独立に躊躇してるってことですか? また、アメリカが日本のことをお荷物だと思っているのならなぜ、このような牽制(?)をするんですか?

<太田>

 地位協定の条文等は、
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/kyoutei/index.html
を参照してください。

 これまで一番議論の対象となってきたのは、公務外の米軍人・軍属の犯罪の取り扱いですが、日本の外務省は、

 「・・・米軍人や軍属が公務外で罪を犯した場合・・・<で>日本の警察当局が現行犯逮捕等により被疑者の身柄を確保していない場合で、米側が被疑者の身柄を確保した時には、日米地位協定上、日本側が被疑者を起訴する時まで、米側が被疑者を引き続き拘禁することとされています(地位協定第17条5項(c))。・・・<この>考え方は、米国も参加している北大西洋条約機構(NATO)の諸国が締結しているNATO地位協定と同じ考え方です。(また、ドイツもNATO地位協定の締結国ですが、ドイツにおけるNATO諸国軍の地位についての詳細規定を定めているボン補足協定では、)米国が韓国と締結している米韓地位協定では、このようなケースでの韓国側への身柄引渡は、12種類の凶悪な犯罪の場合は韓国側による起訴時、それ以外の犯罪については判決確定後とされています。・・・
 2. このように、身柄の移転のタイミングに関する日米地位協定の規定は、各種地位協定と比較して、受け入れ国に最も有利な規定となっています。さらに、日米両国間では、平成7年に沖縄県で発生した少女暴行事件を受け、殺人又は強姦等については、起訴よりも前の段階で、日本側から米側に対し、被疑者の身柄の引渡を要請できる仕組みを作りました(刑事裁判手続に関する日米合同委員会合意)。受け入れ国が、起訴前に被疑者の身柄の引渡を要請することができる仕組みに基づいて何度も実際に基礎前の身柄の引渡しが行われている地位協定は日米地位協定以外にはなく、この意味では、日米地位協定がいちばん進んでいるということができます。・・・」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/rem_01.html

と指摘しています。
 そうだとすると、日米地位協定を改定すれば、NATO、米韓地位協定等にもただちに波及してしまうことになりかねません。
 米国が改定に同意するわけがないと思った方がよいのです。

 では、どうしてNATO、日米、米韓の各地位協定が、基本的にかかる内容になっているか、についてです。

 ・・・American officials allege that the Japanese police use coercive interrogation tactics and are concerned more with attaining a high conviction rate than finding "justice". American authorities also note the difference in police investigation powers, as well as the judiciary. No lawyer can be present in investigation discussions in Japan, though a translator is provided, and no mention made of an equivalent to America's Miranda rights. As of 2008, jury trials do not yet exist in Japan (but are scheduled to start in 2009), so current trials are all bench or multiple judge trials. For these reasons American authorities insist that service members be tried in military tribunals.・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Status_of_Forces_Agreement

と、(ルイジアナ州を除いてアングロサクソン法系に属する)米国には、日本を含む欧州大陸法系諸国の刑事司法に対する不信がある、ということだと思います。
 しかし、NATO地位協定の加盟国の大部分は大陸法系であり、しかも相互的なもの・・例えばフランス軍が(西)ドイツに駐留・・なのに、どうしてそんな地位協定に全加盟国が同意したか、ですが、同協定が発効した1953年における米国(及び英国、(ケベック州を除いてアングロサクソン法系の)カナダ)の他の加盟国に対する圧倒的優位、という時代背景を考慮する必要がありそうです。
 (ちなみに、米英地位協定の内容は公開されていないと承知しています(典拠省略)。)
 更には、1952年時点でギリシャやトルコといった発展途上国的な国がNATO加盟国であったこと、また、冷戦終結後、東欧のブルガリア等の発展途上国的な国々がNATO加盟国になったことも考慮する必要があるでしょう。

 この関連ですが、発展途上国に対しては、駐留受け入れ国に極めて不利な取り決め内容になるのが通例です。

 例えば、米軍のイラク駐留に係る地位協定的取り決めにおいては、

 ・・・Iraq has the primary legal jurisdiction over armed forces members and civilian members in cases of major and intentional crimes mentioned in paragraph 8 that takes place outside areas and installations agreed upon while troops are off duty.・・・
http://www.afsc.org/ht/a/GetDocumentAction/i/69064

という具合に、米軍施設外における非公務の重大な故意犯に限って、イラク側の第一次裁判権が認められているに過ぎません。
 しかも、

 ・・・All members of U.S. armed forces or civilian members must be handed over to the U.S. as soon as they are arrested by the Iraqi authorities. When Iraq is exercising its legal jurisdiction in accordance to paragraph 2 of this article, the U.S. authorities shall manage the tasks of detention of U.S. armed forces or civilian contractors. The U.S. authorities will allow Iraqi authorities access to suspects for interrogation and court hearings.・・・(同上)

という具合であり、被疑者は米側が一元的に身柄を確保することとされています。
 米軍以外のケースにおいても、例えば韓国軍のキルギスタン駐留に係る地位協定においては、

 ・・・South Korea, itself has forces in Kyrgyzstan and has negotiated a SOFA that confers total immunity to its servicemembers from prosecution by Kyrgyz authorities for any crime whatsoever・・・
http://en.wikipedia.org/wiki/Status_of_Forces_Agreement 前掲

と、韓国側が公務非公務を問わず、韓国の軍人・軍属が犯したあらゆる犯罪について裁判権を有するものとされているところです。

 これは、法系の違いを超えた、発展途上国の刑事司法に対する不信があるからです。
 かつての治外法権のことを思い出して下さい。

 話をもとに戻しますが、日本の場合にむしろ問題なのは、(本件に限らず、)地位協定及び関連合意議事録ないし日米合同委員会合意にもかかわらず、同協定の実際の運用が米側に有利に行われているところにある、と言えるでしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E7%B1%B3%E5%9C%B0%E4%BD%8D%E5%8D%94%E5%AE%9A

 これは、日本が米国の属国であることに原因を求めるべきでしょう。

 結論的に申し上げれば、地位協定いじりなどより、日本の米国からの独立を追求しようってことです。

<ΚΑΚΑ>(「たった一人の反乱」より)

 <米国が>景気回復だと〜(笑) <フロリダなんか>ゴーストタウン化している…
http://s218.photobucket.com/albums/cc205/pictureserverphotos/?albumview=slideshow

 ふと最近読み出した、村上龍の「半島を出よ」。
 日本も崩壊の危機…

<ΚΑΑΚ>(同上)

 「半島を出よ」かあ。まあ感想はいろいろあるだろ。
 防衛省ってのは間接侵略についての手当ては全然考えてないんだろうな。
 大体米国なんて人口侵略なんて概念には鈍感そうだし。
 国体がまるっきり違う外国を宗主国にしてる日本は実にやばい。

 村上龍についての太田の評<(コラム#3040)>は結構当たってる。
 昔JMMを読んでたときに感じた違和感を上手く説明された感じだ。

<コバ>

 --チャイワン--

 中国と韓国の経済関係が改善されて、Chaiwanという用語が作られたようです。
http://schott.blogs.nytimes.com/2009/07/27/chaiwan/

 作ったのは韓国メディアのようで、中国資本と台湾のハイテクノロジーの融合は韓国企業の脅威になっているようです。しかし韓国は各国とのFTA交渉を着々と進めています。
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20090713D2M1302713.html
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090617AT2M1700J17062009.html

 日本も早く米国の下駄の雪を止めて独立を果たさなければ、さらに世界から無視され、古川議員の言うように韓国や世界各国との共助関係など築けないのではないでしょうか。
<KT>

  「経済協力開発機構(OECD)の調査では、ひとり親世帯の貧困率(国民所得の中央値の半分未満で生活している人の比率)は2000年ごろの調査で57%。OECD加盟国のうち、トルコに次いでワースト二位となっている。10%前後の北欧諸国よりはるかに高く、米国の49%も上回っている。」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009072902000065.html

<太田>

 本日も記事の紹介はありません。
 世界全体が夏休みに入ったんでしょうかね。
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太田述正コラム#3425(2009.7.29)
<イラン燃ゆ(補遺2)>

→非公開