太田述正コラム#3339(2009.6.16)
<北朝鮮の「核」をめぐって(その2)>(2009.7.13公開)

 「・・・国家情報長官のデニス・ブレアは、・・・北朝鮮は恐らく(probably)地下核実験を5月25日に行い、その威力は数(a few)キロトン、TNT換算で数千トンだったと語った。・・・
 対照的に、北朝鮮の2006年11月の最初の核実験はわずか1キロトンであったと推定されており、何人かの専門家はそれは部分的には失敗だったと考えている。
 上記国家情報長官による声明は、「恐らく」核実験と述べているが、役人達は、5月25日の爆発は核によるものであったことについて、この規模のマグニチュードの爆発を在来の爆発物でシミュレートする困難さとコストを考えれば、深刻な疑いは抱いていないと述べた。」
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2009/06/16/2009061600321.html
(6月16日アクセス)

→やはり、核実験であったと考えざるをえない、ということのようですね。(太田)

 (5)北朝鮮と核開発

 現在の北朝鮮が、核を放棄するつもりなど全くないことは衆目の認めるところですが、以前からそうであったかどうかについては、なお、意見が分かれています。

 ワシントンポストは、「病んでいる健康の下、北朝鮮の指導者たる金<正日>は、外の世界のことについてはほとんど知らない軍部の人々の要求と圧力に屈したと考えられる」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/06/13/AR2009061300636_pf.html
(6月16日アクセス)
という韓国の研究者の言を引用しています。
 これは、北朝鮮は核政策を変更した、という説です。

 これに対し、朝鮮日報は、「・・・そもそも北朝鮮は当初から核を放棄する考えなどなかった。この事実は徐々に明らかになって」いる、という論調です。
http://www.chosunonline.com/news/20090615000014
(6月15日アクセス)

 これは、米国のオバマ政権の考えでもあります。

 「北朝鮮の意図に係るオバマ氏の<考えは、>・・・これまでの米国の政権の考えとは根本的に異なった分析に基づいている。
 1994年と2003年の大きな危機によって画されているところの、16年間に及ぶ<米国と北朝鮮との>断続的な交渉は、最終的には北朝鮮はその核能力を放棄する意思があるとの前提に基づいて行われた。
 しかし、政権発足後の最初の月において行われた<北朝鮮政策>見直し作業の結果、北朝鮮は、食糧、燃料、そして安全の保証の見返りにその「核抑止力」と彼等が呼ぶところのものを放棄する意図など最初からなかった、という結論に達したのだ。
 オバマ氏の補佐官達は、新大統領は、北朝鮮との間で、その隣人達とともに、あるいは直接の2国間会議を行う用意はあるものの、彼が、これまでの、北朝鮮の核施設の漸進的解体のやり方に同意することはないだろうと述べてきている。
 「これを行うための真に不可逆的な方法がいくつかある」とオバマ氏の補佐官の一人は語ったが、彼は、具体的な話をすることは拒んだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/06/16/world/asia/16korea.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
(6月16日アクセス)

 私は、ブッシュ政権の対北朝鮮政策は、飴をちらつかせて、結局は碌な飴を与えないという、いわば、北朝鮮をなぶりものにする政策である、と主張してきました。
 これは、ブッシュ/チェイニーの頭の中を、彼等に成りきって私が忖度してみた上での主張だったわけですが、今でも間違っていたとは思いません。
 しかし、北朝鮮が実は最初から飴など欲しがっていなかったということになると、このようななぶりもの政策は、全くのマスターベーションであったということになります。
 とはいえ、結局のところ、(韓国はともかくとして、)米国は、北朝鮮に飴らしい飴は与えなかったわけですし、この間、飴を欲しがっていると装わなければならなかった北朝鮮をして、ヨンビョンの核施設の操業を停止させ、施設の一部解体までさせることによって、その核計画の進捗を若干なりとも遅らせたのですから、ブッシュ政権の政策は全くの無駄ではなかった、と思わなければ仕方ないでしょうね。

 では一体北朝鮮は、その核でどうしようというのでしょうか。
 米国の朝鮮問題専門家のヴィクター・チャ(Victor Cha)は次のように言っています。
 「・・・北朝鮮は、単に核爆弾が欲しいだけではない。
 この国は、<インドのような、>核保有国としての地位と威信を<米国によって>与えられることを欲しているのだ。
 <また、>北朝鮮は、単に米国が同国を攻撃しないという、安全の保証を欲しているだけではない。
 <そもそも、このような保証は、ソ連に対してすら与えられなかったというのに、北朝鮮に対しては、2005年9月に既に与えられていた。>
 <それどころか、北朝鮮は、その体制の変革を米国が試みないという保証以上の保証を欲しているのだ。>
 北朝鮮は、金正日後の彼の化身の時代になって、それが崩壊し始めたとしても、現在の体制を米国政府が梃子入れし続けると約束することを欲しているのだ。・・・」と。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/06/12/AR2009061202685_pf.html
(6月14日アクセス)

 狂気の沙汰、と言うほかありませんね。

(続く)