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太田述正コラム#3288(2009.5.21)
<英国議員の金銭不祥事(その2)>(2009.6.29公開)

 「・・・マーチンは・・・<前述の議長としての責任に加えて>自身の贅沢も批判を呼んだ(彼の妻は食料を購入するためのタクシー代4,000ポンドを請求した)・
 彼の辞任・・同僚下院議員達によるところの、最終的には彼に対する不信任動議という形をとった攻撃によって強いられたもの・・は、議会における騒擾や全英に漲る怒りを緩和しそうにもない。・・・」
 <保守党党首の>キャメロンの、この大衆の怒りに対する対応は巧妙だったが、彼自身の党も付随的な損害を被った。
 彼は、自分の上級顧問であるアンドルー・マッケイ(Andrew MacKay)を、マッケイがその下院議員たる妻が彼らの住宅に関し二重請求を行ったことが判明したことで失った。 保守党の「最高貴族」たるダグラス・ホッグ(Douglas Hogg)は・・・、リンカーンシャーにある邸宅の堀のメンテナンス目的で公金の請求を行ったことで、次の選挙では立候補しないと表明した。・・・
 オリバー・クロムウェル(Oliver Cromwell)は、下院議員達に・・・「神の名において、去れ」と怒りの訓戒をたれた<ことがある>。・・・
 女王は、英国の議会制民主主義に対して<この不祥事が与えた>打撃に対し「怒り狂っている」と伝えられている。
 君主と、反君主制者たるクロムウェルが同じ側に立つとは、摩訶不思議な時代であると言わざるをえない。」
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1899626,00.html

 「・・・マーチン・・・は・・・宗教改革以降、カトリック教徒として初めて下院議長になった人物だ。
 彼の後継者は、下院議員達によって、初めて採択されたところの、秘密投票という新しいルールの下で選ばれることになろう。
 議会名物の儀式の一つだが、議長選出の後、新議長はしぶしぶであることを装いつつ、みんなに引っ張られながら議長席におもむくことになる。
 なお、形の上では、この選出はエリザベス2世によって承認されなければならない。」http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-britain-resign20-2009may20,0,1295924,print.story
(5月21日アクセス)

3 今回の10大不祥事議員

 (1)元農相ダグラス・ホッグ

 「ホッグは、自分の田舎の大邸宅を取り囲む堀の浚渫のための経費約3,000ドルの請求を行った。
 また、この保守党下院議員は、22,000ドルを、常雇いの奉公人<の給与>(彼女が運転する車<の経費>を含む)、及びホッグの厩舎作業、そして何とピアノの調律にあてた。・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897669,00.html

 (2)陣笠下院議員のための1922委員会委員長サー・マイケル・スパイサー(Michael Spicer)

 「保守党陣笠議員(backbench)の最先任者たる彼は、自分の家の庭の9ヶ月間にわたる維持費8,600ドルを請求した。
 <このほか、自分のヘリコプター発着所と菜園を取り囲む生け垣の刈り込みのための経費930ドル、及び>彼の庄園にある自宅のシャンデリアをつるす経費も請求し、これをせしめた。・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897670,00.html

 (3)首相ゴードン・ブラウン

 「首相は、彼の弟のアンドルーに対し、2年間にわたってブラウンのウェストミンスターのマンションの清掃管理経費として計10,000ドル支払った。・・・
 官邸は、この兄弟は、二人のマンションで働いた掃除婦をシェアしたのである、と説明した。
 アンドルー・ブラウンは、兄の分を彼女に立て替え払いし、それを後で兄に支払ってもらったというのだ。
 官邸の広報官は、抜け目なく、アンドルーは自分で掃除をしたわけではないし、金銭的に利得したわけでもないと指摘した。
 首相が同じ下水管修理<費>を6ヶ月以内に2回請求した件については、下院経費部は、不注意で過ちを犯したとし、これに気がつかなかったことを陳謝した。
 ブラウンは、230ドルを戻入したと見られている。」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897671,00.html

 (4)文化相アンディ・バーナム(Andy Burnham)

 「バーナムは、2007年に30ドルのバスローブを・・・買<い、その経費を請求した。>
 この話が露見した時、彼は下院経費部にカネを戻入し・・・た。・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897674,00.html

 (5)元副首相ジョン・プレスコット(John Prescott)

 「プレスコットは、彼の選挙区・・・の自宅玄関の<探照灯の経費>475ドルを請求した。
 また、鉛管工が彼に便座改修費320ドルを請求し<、彼はこれをつけ回した>。ちなみに、プレスコットの便座は2年間に2度も修理されている。・・・
 プレスコットは、戻入するかどうか、一切発言していない。」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897675,00.html

 (6)住宅・計画相マーガレット・ベケット(Margaret Beckett)

 「ベケットは、<観賞用の>・・・植物を購入するための経費900ドルと、更に、夏の別荘<等>を塗装するための労賃と材料費用として1,100ドルを請求したが、これは下院の規則違反と見なされた。・・・
 ベケットは、巨額のガーデニング経費の請求書が提出されたのはミスであったと認めている。」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897676,00.html

 (7)観光相バーバラ・フォレット(Barbera Follett)

 「フォレットの主たる仕事は、バカンスを過ごす人を英国にやってこさせることだが、彼女は、2つ目の自宅と主張している家の外でひったくりに遭ってから38,000ドルちょっとの警備経費を請求した。(フォレットの選挙区は・・・ロンドンからすぐの所にある。)
 フォレットはまた、彼女の中国製の手織り毛氈を修理しクリーニングした経費807ドルを請求したが、金額が大きすぎるとして、458ドルしかもらえなかった。
 <彼女の弁明:>「私の請求は、1件を除いて、受け容れられ、グリーン・ブック<記載の>規定に基づいて経費部から支払われている。だから、私はこれ以上コメントすることは何もない」・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897678,00.html

 (8)移民相フィル・ウーラス(Phil Woolas)

 「・・・<彼は、>オムツ、マンガ、女性の衣服、赤ワイン、タンポン、頭髪用染料<の経費を請求した。>
 <彼の弁明:>「食料の領収書は提出することが求められていなかったものだ。しかし、透明性の観点から、私はいつも求められていない領収書も提出してきた。」・・・
 ウーラスは、戦う姿勢をとっており、新聞が「嫌悪すべき」ほのめかしを行ったことに対し、裁判を提起すると脅している。
 彼は、経費記録が「盗まれた財産」にあたるとまで述べている。」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897679,00.html

 (9)影のウェールズ相チェリル・ギラン(Cheryl Gillan)

 「<ドッグフードのドライなタイプ5.64ドルに缶詰タイプ1.20ドルの請求をつけ回した。>・・・
 <彼の弁明:>「私はうっかりして請求するつもりではなかったものまで食料の請求書類の一環として提出してしまった。私はその分を戻入する」・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897680,00.html

 (10)北アイルランド相ショーン・ウッドワード(Shaun Woodward)

 「ウッドワードは、第2の自宅に関して認められる上限額の約35.260ドルを支払ってもらっただけでなく、153,000ドル近くを206万ドル相当の不動産・・彼が所有している7つの不動産のうちの1つ・・のローン利子分として請求していたことで、人々を仰天させた上、その一方でゴミみたいなものまで請求していたので人々を呆れさせた。
 <すなわち、彼の>助手がヨーグルト代58セント、ピザ代1.62ドルを請求し、これらをウッドワードは、スタッフの必要経費としてつけ回ししていたのだ。
 <彼の弁明:>「私はこの経費補填制度全体を見直すべきだと思う。この制度はムチャクチャだと思う。」・・・」
http://www.time.com/time/specials/packages/article/0,28804,1897682_1897683_1897681,00.html

4 ブラウン政権の方針

 ブラウン首相は、下院議員がお手盛りでやってきた制度を改め、第三者機関を設置し、この機関が従来経費部がやってきた査定を行うことにする、と表明しました。
 また、労働党執行部は、労働党の下院議員で現行の規則を破ったことが判明した者は、次回以降の選挙には労働党候補としては立候補させないことにしました。
http://www.guardian.co.uk/politics/2009/may/19/expenses-mps-brown

5 終わりに

 英国の政治家達の不祥事ってかわいいもんですね。
 絶不況の最中に露見したのが運の尽きでした。
 ブラウン首相は、野党保守党からの下院解散要求を理由にもならない理由をあげて拒否していますが、来年には任期が来るので総選挙が行われます。
 今度は保守党政権になるのがほぼ確実です。

(完)

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