太田述正コラム#3286(2009.5.20)
<英国議員の金銭不祥事(その1)>(2009.6.25公開)

1 始めに

 もともと不人気をかこっていた英国のブラウン政権でしたが、このほど、労働党議員を中心とする議員達の金銭不祥事により、いよいよ窮地に追い詰められるに至りました。
 日本の政治家の金銭不祥事と比較する意味で、一興かと思い、本件をとりあげることにした次第です。

2 下院議長辞職へ

 「・・・マーチン<英下院議長>としては、自分が、1560以前のように、7人の下院議長が首をはねられ、もう1人は殺害される、というような憂き目に遭わないだけで良しとしなければなるまい。・・・
 生け垣の刈り込み、堀の浚渫、テニスコートの修繕のための経費を下院議員達が請求し、支払いを受けてきたことが判明した。
 馬糞処理費、マッサージ椅子購入費、ポルノビデオ購入費も経費として落としていた。
 また、薄型テレビやバスローブの購入費、作業員達に電球を交換させ、また、彼らに洗濯機の使い方を教えるための経費まで請求していた。
 更には、この制度を自分達の住宅ローンの支払いや、巨大な利益を上げて売却する前に行う住宅の改修に利用した者もいた。・・・」
http://thelede.blogs.nytimes.com/2009/05/19/british-parliaments-speaker-to-resign/
(5月20日アクセス。以下特に断っていない限り同じ)

 「・・・マーチン<議長は、>悪いことをしたと非難されているわけでは必ずしもない。
 しかし、議員達の大部分は、彼が適切な指導と誘導を行わず、現在進行形の危機の取り扱いでドジを踏んだと考えている。
 彼は先週、英国中に蔓延している怒りのムードについての判断を誤り、この経費問題で彼が下院で最初の発言を行った際に遺憾の意を表明しなかった。
 彼は、現状を擁護しようとしているように見えた。
 それどころか、彼は、議長席から、経費問題についての情報をテレグラフ紙に漏洩したのが誰かを警察に捜査させようとする計画(その後取りやめられた)に反対した2人の議員を攻撃するという異例の言動をとった。
 そもそも、マーチン氏は、議長として、下院の行政諸部局を取り仕切っており、その中には、議員達の経費請求を扱う経費部(fees office)も含まれている。
 もとより彼自身が領収書類をチェックしていたわけではないが、彼は制度の濫用が横行し、ひどくなっていくのを放置した。・・・
 テレグラフ紙への漏洩について言えば、マーチン氏は、実は、裁判所で、情報の自由を掲げ、経費勘定の詳細を開示するよう求めるグループの努力を妨害すべく、激しく戦った。
 しかし、彼は敗北し、裁判所は、議会に対し、この詳細を明らかにするよう命じた。
 期限はこの夏だった。
 しかし、テレグラフ紙は、この情報をいち早く入手し、生の形のまま、まさに赤裸々に、従って恥ずかしい限りの詳細を、いの一番に紙面に載せたのだ。・・・
 下院議員は、一例をあげれば、第2の自宅のための手当として、年間約24,000ポンド以下の金額を使うことができる。
 これは、選挙区の家とロンドンの家を維持する経費・・家具代、食費、修理費等を含む・・<の一部>を負担するものだ。・・・
 テレグラフ紙の報道によれば、経費部は、しばしば議員達に対し、様々な個別事項に関し疑義を示していることが分かるが、議論になった経費について、大抵は、疑義を撤回して全額払うことに同意するか、一部を払って決着させていることが分かる。・・・
 保守党党首のデーヴィッド・キャメロンは、かねてより自分は偉大なる道徳者であると訴えてきているところ、党員たる議員達のカネの使い方を縛り始めているものの、彼自身、毎年住宅ローンの利子の支払いに<上記>24,000ポンドの上限近い金額を毎年使っている。・・・
 英検察庁(Crown Prosecution Service)<は、>詐欺的経費請求、就中もはや支払ってもいない住宅ローンに係る請求を行ったり、第2の自宅のための議会経費を請求しておいて、それを売却するときには、主たる自宅扱いをして、売買差額にかかるはずの税金を免れたりした者を捜査して起訴する可能性<がある。>・・・」
http://thelede.blogs.nytimes.com/2009/05/19/ask-a-question-on-the-british-expenses-scandal/

 「元は鉄板工で労組役員であり、グラスゴーを選挙区とするマイケル・マーチンは、2000年に英下院議長になった。・・・
 テレグラフ紙・・・の報道により、ひどい景気後退のただ中にある今、不当な金銭的支援を受けるためにその特権的地位を悪用している選良達に対し、英国民達の多くは怒りを覚えている。
 <英下院は700年の歴史があるが、マーチンは、やはり労働党議員で英下院の最初の女性議長となったベティ・ブースロイドの後を襲って議長になったところ、彼女同様、議長が伝統的につけるカツラの着用を拒み、儀式的な黒衣を身に纏うこともできるだけ避けてきた。>
 この前、辞めさせられた下院議長は、1695年のサー・ジョン・トレヴァーであり、ある法律を通すための賄賂を受け取ったことをつきとめた下院によって強制的に職を解かれた。
 下院議長の職は14世紀に遡り、爾来下院議長は、議会と国王との間に立つ微妙な役割を演じてきた。・・・」
http://topics.nytimes.com/top/reference/timestopics/people/m/michael_martin/index.html

(続く)