太田述正コラム#2981(2008.12.18)
<イタリアの第一次世界大戦(その1)/「桜」出演準備>(2009.6.18公開)

1 始めに

 今回は、マーク・トムソン(Mark Thompson)の'The White War: Life and Death on the Italian Front 1915-1918'のご紹介です。

 以下、この本の6つの書評(1つは、この本の抜粋を含む)を用います。

2 イタリアの第一次世界大戦参戦

 「イタリアは、第二次世界大戦に、第一次世界大戦の時と同じような参戦の仕方をした。イタリアはどちら側が勝つかを見極めるために9ヶ月待ち、戦利品を獲得するもくろみの下に参戦したのだ。とこが違うかと言えば、1940年にはムッソリーニがどちら側が勝つかを見極めることに失敗したという点だけだ。
 イタリアは、1915年の時点ではまだ、ドイツとオーストリアとの間で<1882年に締結された>三国同盟の加盟国だった。しかし、当時のイタリアの首相は、「聖なるエゴイズム」が外交政策の決定要因であると考えており、長年の同盟国に対して攻撃をしかけることにした。
 エゴイズムは、ハプスブルグ帝国のイタリア語地域・・基本的にはトレンティーノとトリエステ市・・を獲得しさえすれば満たされるはずだった。ところが、イタリアは、ドイツ語地域である南ティロルとイストリア、アルバニア、及びダルマティアの一部まで要求したのだ。・・・
 このエゴイズムの代償は、(一般市民やオーストリアの死者を除く)イタリアの兵士68万9,000人の死だった。その多くは南部出身の農民達であり、彼らは、トリエステやトレンティーノがイタリアの一部のになるかどうかなどにはほとんど関心などなかったというのに。・・・」
http://entertainment.timesonline.co.uk/tol/arts_and_entertainment/books/non-fiction/article4625496.ec
(12月18日アクセス)

 「<イタリアの>ナショナリスト達は、ウィンストン・チャーチルがイタリアを「欧州のあばずれ女」と形容したところの、傭兵的理由で土地をぶんどりたい気持ちがあったというだけではなかった。連中は、自分達の国の魂を救うために人間の犠牲を求めていたのだ。・・・イタリア歩兵の虐殺は恩寵深いパージであり、「必要なホロコースト」だったのだ。
 トムソンは、詩人のダヌンティオ(D'Annunzio)(注1)と未来主義者(Futurist)のマリネッティ(Marinetti)によって最も精神錯乱的に表明されたところの、この種の屍姦好み的ナンセンスに対して、見事なまでに容赦がない。

 (注1)Gabriele d'Annunzio (1863〜1938年)。詩人・ジャーナリスト・小説家・戯曲家。ファシスト運動の指導者の一人となる。
http://en.wikipedia.org/wiki/Gabriele_D%27Annunzio
 (注2)Filippo Tommaso Emilio Marinetti (1876〜1944年)。イデオローグ・詩人・編集者。未来派の創始者。
http://en.wikipedia.org/wiki/Filippo_Tommaso_Marinetti

 この二人とその亜流は、「イタリアの血管から噴出する」血液というビジョンに欣喜雀躍した。連中は、戦争を「世界の唯一の浄化方法(hygiene)」であると賛美した。連中は、大量破壊と強姦の予想(prospect)を、「我々は母親達の子宮を火で掠奪(ransack)すべきだ」と歓迎した。更に連中は、自由主義、社会主義、そして民主主義の理想を、「民主主義かぶれ(democretins)」にしか適さないと貶めた。
 ダヌンティオは、戦闘の経験をオルガスムに喩え、戦争においてとりわけ悪しき役割を演じた。彼は砲兵中隊に対し、捕虜になった同国人達の縦列に向けて火砲を撃ちかけるよう命じたことがある。」
http://www.guardian.co.uk/culture/2008/aug/30/history.italy  
(8月31日アクセス)

(続く)
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 --「桜」出演準備--

<太田>

チャンネル桜は、私のために24日の収録時間を15:30〜19:00に繰り下げてくれました。
文化放送は浜松町なので、渋谷の「桜」まで山手線で移動するとして、ぎりぎり間にあいそうですが、何ともせわしないクリスマスイブになりそうです。
テーマは、要するに、日本の防衛はこれでいいのか、という一般的なもののようです。
私の政策論の基本を展開することになりそうです。

<遠江人>

チャンネル桜は太田さんを買ってくれていますね。
ここ1年くらいで「右」と「左」のそれぞれで太田さんを買っている人やマスコミがなんとなく分かってきたように思いますが、「右」でも「左」でもない太田さんに引っかかって買っているだけでもたいしたものだと思います。
 これらの人々は、日本の言論界やマスコミの中でも決してメジャーといえない方々が多いわけですが、思想を超えて敬意を表したいところですね。
これらの人達は、将来、思想を乗り超えて連携できる「金や権力に転ばない」人達?かもしれないので覚えておいて損はないかもしれませんね。
テーマが一般的なもののようで、テーマがこれと決まっていない、こういうときのほうが言いたいことが言えそうで、更に割り込み発言などが無いチャンネル桜ですからいい放送になりそうですね。

<MS>

 <同番組出演時に太田さんが用いる>フリップを考える上で参考にしたいので、・・・太田さんの出演の目的を、もう少し明確にお教え願えないでしょうか?

例えば、
視聴者に向けての啓蒙活動を目的にするのならば、番組の流れを無視して、持論の展開に徹するべきだと思います。
具体的には、開始時に持論を十分な時間をとって全て提示し、その後も強引に議論に割り込んででも、繰り返し主張すべきではないでしょうか?
ただし、このやり方は、チャンネル桜の視聴者層である、「右」派の考え方を変えさせる上では、必ずしも効率的でないかもしれません。
おそらく、前回の出演時に、水島氏や他の出演者に見受けられたように、太田さんが持論を述べても、聞く耳を持たない可能性があります。

もし、無理を承知で、「右」派の考え方を、少しでもかえさせることを目的にするならば、他の出演者全員に基本的な質問をし、挙手でYesかNoか、答えさせた上で、Noと答えた人を個別かつ徹底的に論破してはどうでしょうか?

質問としては、例えば、

<日本が米国の属国であること>

1. ポジリストで規定されている自衛隊は軍隊ではない。 Yes or No?

2. 自前の軍隊をもたず、他国に守られている国は、
 どれだけ経済的に繁栄していても保護国である。 Yes or No?

3. 日本は属国(保護国)だ。 Yes or No?

 (ここで、属国であることにコンセンサスがあるのならば、個別の防衛問題を云々しても仕方がないので、もっと根本的な問題を議論しよう、と主張する。)

<誰が悪いか?>

4. 日本は吉田ドクトリンという「戦略」をとることで、国民も政治家も、安全保障上の自主性を放棄し、自らアメリカの保護国の地位に安住してきた。 Yes or No?
  
5. 属国からの脱却のために、吉田ドクトリンは打倒すべきだ。 Yes or No?

6. 50年間、吉田ドクトリンを堅持してきた自民党(特にタカ派)に、吉田ドクトリンの打破を期待しても、無駄である。 Yes or No?

(ここで、そもそも腐敗しきった自民党政権の存在に国民が、50年間耐えてきているのは、かなりの程度、国民の奴隷化がすすでいるからだと、主張した上で、以下の質問をする。)

<属国である結果、日本はどうなっているか?>

7. 日本が属国であるため、国民の意識が奴隷化している。 Yes or No?

8. 国民に主権者たる意識がないため、55年体制(とその終極的体制である自公連立政権)が続き、政府は腐敗し放題だ。 Yes or No?

<何をすべきか?>

9. 日本が属国であることを、一般国民に訴えることで、国民の意識を変革すべきだ。  Yes or No?

10. 意識の変革された国民は、政権交代を繰り返すことで、主権者の地位を政官業癒着集団から奪い返すべきだ。 Yes or No?

(ここで、田母神問題に言及して、以下の質問をする。)

11. 主権者となった国民が安心して、国軍の創設、その海外派兵に同意できるよう、今から国軍の卵である自衛隊に対する信頼を醸成する必要がある。 Yes or No?

1をYesと答えられれば、あとは結構すんなりいくのじゃないかと思うのですが、過去の番組からすると、潮匡人氏、荒木和博氏や元自衛隊員は、Noの立場をとることと思います。
そういう意味では、1の質問に関する議論だけでも、徹底的にしてみる意味はあると思います。

<太田>

 具体的な説明がないので、私自身、「桜」に聞いてみたのですが、「前回の延長みたいなものですよ」というのです。
 「前回」は、田母神問題をとりあげたところの、要するに私が出演した前回だ、と受け止めたのですが、ひょっとして先方に勘違いがあるのかもしれません。
 「具体的な<日本が侵攻を受ける>シナリオの話なんか出るのですか」と聞いたら、「そこまでは行かないでしょう。一般的な話にとどまると思います」ということでした。

 水島氏が進行を一手に取り仕切っているわけで、なかなか私がイニシアティブをとるのはむつかしいのではないでしょうか。
 ただ、どうせユーチューブを通じてこの番組も「普及」するわけで、出演者の受け止め方より、広範な視聴者の反応の方を気にすべきだと思います。

>挙手でYesかNoか、答えさせた上で、Noと答えた人を個別かつ徹底的に論破してはどうでしょうか?

 実現はむつかしいでしょうね。
 第一、やられた側が反発して前に進まなくなるのでは?

>1の質問に関する議論だけでも、徹底的にしてみる意味はあると思います。

 潮氏は出るみたいですよ。
 これは考えてみてもいいですね。
 いずれにせよ、MSさんによる上記整理は、フリップ作成に反映できそうですね。
 なお、私としては、「何を守るのか」=「守るべきは、自由民主主義であり、それと親和性のある日本文明である」ということも言いたいところです