太田述正コラム#3232(2009.4.23)
<米国結婚/離婚事情>(2009.6.4公開)

1 始めに

 これまでのコラムを通じ、米国はできそこないのアングロサクソン・・アングロサクソン文明と欧州文明のキメラ・・という、まことにもってユニークな、というか異常な国であることは、大方の読者の皆さんにもお分かりいただいたことと思います。
 今回は、米国における結婚/離婚事情を詳らかにすることを通じて、改めてこのことを確認してみたいと思います。
 もちろん、これは日本における結婚/離婚事情を考えるにあたっても参考になることでしょう。
 手がかりにするのは、このたび上梓された、アンドルー・J・チャーリン(Andrew J. Cherlin)の著書 'The Marriage-Go-Round: The State of Marriage and the Family in America Today' の書評です。

2 米国結婚/離婚事情

 「結婚と結婚解消の権利を双方ともに大切にするという<変わった>文化を持っているのは<世界中で>米国だけだ・・・。・・・
 ・・・破綻したカップルの間に生まれた米国人の子供達の半分近くは、3年以内に彼らの家庭に新しいパートナーがやってくる経験をする。これは欧州における<どの国>よりも早い。
 子供達が15歳になるまでに3人以上の異なった同居パートナー達を母親が迎えるケースが10%もあるのだ。・・・
 このような、<メリーゴーランドならぬ>マリッジ・ゴーランド(marriage-go-round)に対する制度的支えがあることも一つの理由として、・・・<米国において、>・・・大恐慌時代に起こったような・・・「結婚、家、そして子育てへの大規模な回帰」が起こる可能性は近い将来にはなさそうだ。将来の世代が地殻変動的な一連の出来事に直面すれば別だが・・(注)。

 (注)「著書 'The Lonely American<: Drifting Apart in the Twenty-First Century>' の中で、 シュワルツ(<Richard S. >Schwartz)と奥さんのジャクリーン・オールズ(Jacqueline Olds)・・二人ともハーバード大学の精神病学者・・は、・・・<チャーリンが言うところの、>内に閉じこもったような家族生活<に回帰したとて、それ>が本当の家庭的安定を確保できるかは疑問だとし、・・・結婚は、<本来>幅広い社会的支援網を必要としていると指摘する。
 米国人は、幅広い社会的紐帯を維持するための義務と時間から逃れるために隠れ穴に閉じこもってきた、と著者達は言う。そして、そうすることで、米国の人々は、実際には自分達自身の関係を不安定化してきたのだというのだ。
 拡大された紐帯は、親密さを育み、カップルの生活に証人として関わり、展望を与え、しばしばこのパートナー達にお互いに対してより思慮深くふるまうよう誘ってくれる。
 このような幅広い支援がない場合は、配偶者が、愛人、連れ合い、親友、のすべてを同時に務めなければならないため、負荷が大きくなりすぎるのだ。・・・
 他の先進国の配偶者達と比べて、ここ何十年かの米国の人々は、より長時間働き、より多くの収入を得、より多くの財・サービスを費消してきた。
 このように長時間働くことは、<配偶者との>緊密な関係及び職場外での社会的活動を阻害する。
 また、収入が余分にあるものだから、カップルは移動手段から子供の世話から雪かきまで、自分達の親戚や隣人達に頼る代わりに、サービスを購入することで対処してきた。
 要するに、市場に依存することで、米国の人々は、幅広い社会的コネから引退してしまったのだ。・・・
 <これでは、離婚したい気持ちを抑えたところで、結婚がうまくいくはずがない、と著者達は言う。>」
http://www.prospect.org/cs/articles?article=intimacy_meets_hard_times
(4月23日アクセス)

 「・・・米国人の約90%が、生涯の間に一度は結婚する。米国の結婚率は欧米諸国の中で最も高いのだ。・・・
 米国人は、結婚したり同棲したりする年齢が最も早く、離婚するのもその後第二の結婚をしたり同棲生活に入るのも最も早い。・・・
 このような米国の家族生活の最大の問題点は、子供達にとってはたまったものではないことだ。・・・
 このような・・・ことが一つの原因となって、・・・10台でのセックス、妊娠、飲酒、不登校や学校での問題行動の高さがもたらされている。・・・」
http://stephenlaughlin.posterous.com/book-review-the-marriage-go-round
(4月23日アクセス)

 「・・・<最近、米国では結婚率が低下傾向を見せているが、>1960年代以来、離婚率は上昇を続けてきており、現在では結婚の半分近くは破綻する。これは、<結婚に関して>自由主義的なスウェーデン<の離婚率>よりも高い。・・・
 我々は、結婚せずに同棲している場合においても、他の諸国より、それが破綻するまでの期間が短い・・・。
 この本の中に書かれている驚くべきことの一つは、両親が結婚している米国の子供達が、その両親の関係の破綻を経験する可能性が、スウェーデンにおいて、結婚せずに同棲生活を送っている両親と生活している子供達がその両親の関係の破綻を経験する可能性より高いことだ。・・・
 我が米国は、欧米諸国の中で唯一、政府が結婚を支援する予算を使っている国だ。
 2005年連邦健康的結婚イニシアティブにより、現在、毎年1億米ドルが結婚の奨励のために使われている。
 もっとも、これは機能していないように見える。というのは、米国人は依然結婚したいとは思っているものの、結婚率が急速に減少してきているからだ。・・・
 ・・・同性愛の人々が、これほどまなじりを決して結婚する権利のための闘争を続けている国は米国だけだ・・・。
 ・・・欧州のゲイの男性やレスビアン達は、・・・結婚をもう一つの異性間の抑圧的制度とみなしている<というのに>。・・・
 米国では、二つの強い力が相争っている。一方で、我々の宗教的伝統に根ざしているところの、結婚に対する歴史的信条と、他方で、個人的自由とポストモダン的自己実現権的感覚という基本的原則とが・・。
 この二つの価値が衝突すると、別居や離婚がもたらされる。・・・
 古の欧州のカトリシズムにおいては、独身を通すことが個人の究極的な到達点だったが、マルティン・ルターがこの考え方を否定した。
 元尼僧と結婚したルターは、「良い結婚ほど、素敵な、または友情のような、または魅惑的な関係のような、または霊的な交渉(communion)のような、または一座(company)のような、ものはない」と言ったとされる。
 宗教改革は、カトリックの宗教的階等制も否定し、個人の神との直接的な関係を重視した。・・・
 <他方、>昔から、米国では欧州諸国におけるよりも、離婚を得ることが常により容易だった。
 植民地時代でさえ、離婚は困難ではあったもの、離婚することはたくさんの場所で可能だった。
 他方、英国では1857年までは離婚は合法化されなかった。
 有責でない離婚が認められるまでの待ち時間が、一般的にかくも短い欧米諸国は他にはない・・・。
 ・・・<これほど神を恐れないというのに、>米国人は、少なくとも月一回は教会に行くと言うのだから、アイルランドを除く他のいかなる欧米諸国よりも教会に行く頻度が多い。・・・
 <いずれにせよ、>結婚の奨励にカネを使うより、我々はそのカネを子供達の安定のために使うべきだ。・・・
 ・・・配偶者が家庭に入ったり出たりするするたびに、青少年が盗んだり、学校をさぼったり、飲んだくれたりする可能性が12%も増加するのだから・・。
 もっとも、破綻した家の青少年の大部分が問題行動に走らないことも銘記すべきだろう・・・。
 子供達の心理的安定を確保するためには、シングル・マザー達を支援することによって、彼女達が自分達を支えるための配偶者達を早く見つけなければならないという強迫観念にとらわれる必要がないようにしてやることも一つの方法だろう。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/04/20/books/20smit.html?hpw=&pagewanted=print
(4月21日アクセス)

3 終わりに

 米国は、欧州文明から結婚への強迫観念を、アングロサクソン文明から離婚への衝動を受け継いだ結果、家庭生活は極めて不安定なものとなり、子供達が被害を被っている、というわけです。
 米国の犯罪率の高さの最大の原因は、このあたりにありそうです。

 さて、日本の結婚/離婚事情はどうなっているのでしょうか。
 また、日本の子供達は幸せなのでしょうか。