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太田述正コラム#3182(2009.3.29)
<テポドン狂騒曲(その2)>(2009.5.13公開)

<補注>

 「・・・PACの発射機1基が防護できるのは半径約20キロで、秋田市や盛岡市など県庁所在地周辺の防護に限られる。・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090329/plc0903290839004-n1.htm
(3月29日アクセス)
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 「・・・日本は、1998年に北朝鮮が長距離のテポドン1(Taepodong-1)ミサイルを日本列島を越えて太平洋へと発射したことで世界を驚かして以来、ミサイル防衛兵器への投資を始めた。・・・
 この発射と2006年の再度のミサイルのテストは日本に警戒心を呼び起こし、日本は米国製の弾道ミサイル防衛諸システムに大々的に投資を続けてきた。
 北朝鮮は、・・・日本のどこにでも打ち込める200基の中距離ミサイル・ノドンを持っている。
 ミサイルの専門家達の間では、日本の対ミサイル網・・海対空のイージスミサイルと陸対空のパトリオットロケットの組み合わせ・・でノドンの攻撃の際に同国を守れるか疑問の声がある。
 マサチューセッツ工科大学の科学技術・安全保障政策教授のテオドール・ポストル(Theodore Postol)は、ミサイルシステムの専門家だが、「<日本のミサイル網は、>到底その任にあらず」と言っている。」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/03/27/AR2009032700501.html

 「・・・北朝鮮は、核弾頭を弾道ミサイルに装着できるようになっているかもしれない」と米国防情報庁(Defense Intelligence Agency)長官のマイケル・D・メープルズ(Michael D. Maples)中将は乗員軍事委員会での今年の証言で述べた。
 ワシントンにある科学と国際安全保障研究所(Institute for Science and International Security)の主宰者で物理学者かつ核兵器専門家のデーヴィッド・オルブライト(David Albright)は、北朝鮮は、日本を標的とする中距離ミサイルのための「初歩的な核弾頭をつくることができると思われる」と記している。
 専門家達は、北朝鮮が米国に打ち込むことができる長距離ミサイルに核弾頭を装着できるようになるまでは恐らく何年もかかるだろうという点で一致している。・・・
 韓国政府と日本政府はまだ北朝鮮が核弾頭を小型化することに成功していないと言っている。
 しかし、日本の防衛省は北朝鮮は、それに成功するのがそう遠くないかもしれないと結論づけている。・・・
 ・・・テオドール・ポストルは、・・・北朝鮮が、実験で検証されていないところの、2006年の核実験の時と同程度の比較的小さな核爆発を起こすことができる、初歩的な型式の弾頭をつくった可能性が全くないわけではないと述べた。
 それは、TNT換算で数百トンの威力があるかもしれない。
 (他方、<米国やロシアが保有しているところの>高度の核弾頭の25キロトンの破壊的威力はこれより何乗も優っている。)
 <よって>ポストルは、北朝鮮は、4フィートほどの直径があり約2,200ポンドの重さのものを搭載できるノドン・ミサイルに装着できるような小さくて軽い弾頭をつくることができると推測している。・・・
 北朝鮮のミサイル及びミサイル技術の最も初期からの、かつ最も忠実な顧客はイランだ。・・・
 先月、イランは長距離のサフィール(Safir)ミサイルを発射し、小さな衛星を軌道に乗せることに<初めて>成功した。
 このミサイルは、北朝鮮によって提供されたミサイル部品と技術的支援に拠っている。 同様、パキスタンの、核弾頭を搭載できる中距離のガウリ(Ghauri)ミサイルは、実際には、北朝鮮のノドンの名前を変えただけのものだ。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/03/26/AR2009032600414_pf.html

 「・・・そもそも日本にとっての脅威は、日本列島を射程に収める中距離弾道ミサイル・ノドンだ。北朝鮮の長距離ミサイルが脅威となるのは、グアムやハワイ、アラスカなどが射程に入る米国である。・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090327-OYT1T01328.htm
(3月28日アクセス)

→肝心なことを言っている日本のメディアの電子版は、この讀賣の社説くらいなものです。ノドン200基は、日本だけを念頭に置いたミサイルであり、もちろんすべて弾頭付きであり、中には核弾頭付きのものが複数あるかもしれない、ということについて騒ぐのであればそれなりに分からないでもありませんが、弾頭のついていないテポドンの試射に騒ぐ、というのは私には全く理解できません。
 もとより、米国が、テポドン2はグアムやアラスカ、米本土太平洋岸に打ち込める、というので騒ぐのは分かります。
 日本は米国の属国だからこそ騒がされている、という自覚をわれわれは持つ必要があります。(太田)

3 終わりに

 日本が整備しているイージス艦搭載SM3とPAC3からなるミサイル防衛網は、巨額の経費をかけているところの、現在の整備計画が完成した暁にも、北朝鮮の大量のノドンの脅威から日本の人口密集地全体を守るためには、質量ともに不足しており、ほとんど無効であるということです。
 では、どうして日本はそんなものを米国に整備させられているのでしょうか。
 日本のミサイル防衛網中の、SM3搭載イージス艦は、北朝鮮のノドンやテポドンの軌道の追跡に有効であるというのが第1点です。
 日本のミサイル防衛網中のPAC3は、大量に飛来するノドンに対しても、在日米軍基地だけを守るのであれば、それなりの効果があるというのが第2点です。
 そして、日本列島を越えてグアムやハワイの米軍基地に向けて発射される、ごく少数のテポドンに対してなら、SM3もそれなりの効果がある、というのが第3点です。
 これに加えて、日本は、そのカネと技術力を米国に吸い上げられ、SM3の後継ミサイルの共同開発をさせられています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB%E9%98%B2%E8%A1%9B上掲
 このように、日本は、ミサイル防衛においても、属国として宗主国米国に徹底的に収奪されている、と考えるべきなのです。 

(完)

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