太田述正コラム#3172(2009.3.24)
<売春事情の最先端(その2)>(2009.5.7公開)

3 欧州の売春非合法化

 「・・・<最初に、欧州での売春非合法化の動きをまとめておこう。>

スウェーデン:セックスの対価を払うことが1999年に禁止される。
ノルウェー:セックスを買うことが2009年1月に非合法化される。
イギリス/ウェールズ:議員達の間で「被支配下の女性(controlled women)からセックスを買うことの禁止を目指す動きあり。
オランダ:内閣が、<人身>密輸された人々のセックスを買うことの禁止が提案された・・・。

 「ニュージーランドは隔離されている場所にあるので事情が異なる」と、<ノルウェーの>オスロにある、<人身>密輸業者や犯罪者から救出された売春婦達の面倒を見る教会経営のシェルターたるナドハイム(Nadheim)女性センターの・・・は言う。
 「<それに対し、>欧州では移民が多く、欧州外との境界は開放されている」と彼女は述べ、売春婦に対価を払ってつかまった者を重い罰金か6ヶ月の投獄に処するというノルウェーの新しい法律を擁護する。
 このアプローチの背後にある考え方は、犠牲者たる売春婦を標的にするのではなく、彼女達に力を貸す(empower)、というものだ。
 彼女達の業務に対する需要を摘発することによって、彼女達を餌食にしている連中の力を削ぐことが期待される、というのだ。
 同じ理屈が英国議会での法案づくりにおいても用いられている。
 この法案は、「売春を強要された」か「他者の利益のために支配されている」者とのセックスに関し、対価を支払うことを犯罪とするものだ。
 <イギリスで>売春をしている女性の80%くらいが麻薬の売人、ひも、あるいは<人身>密輸業者によって支配されている<というのだ>・・・。・・・
 ・・・<確かに>2007年の推計では、英国には約25,000人も性奴隷がいることになっている。
 しかし、性労働者達のために弁ずる人々は、この類の数字に異を唱える。そして彼らは、性労働者達の権利と安全は、更なる抑圧よりもむしろ・・・ニュージーランドのような・・・自由化によってよりよく守られるはずだと信じている。
 イギリス売春婦組合(English Collective of Prostitutes)の・・・は、・・・ロンドンの売春宿で働いている女性の80%が外国人だと推定している。・・・
 人々はこのことから、性労働者の80%が銃で脅されてこの世界に連れ込まれ、建物の中に閉じ込められているという風に理解しているが、これはとんだ誤解だ・・・。・・・警察の定義によるところの「密輸された」<性労働者>に該当するのは5%未満に過ぎないのだ。・・・
 この割合は、たまたまだが、ニュージーランド議会報告書で強制的に<性労働を>やらされていると推計されたところの、全売春婦中の4%という割合と大差ない。・・・
 ニュージーランド売春婦組合も、そして性労働者達を代表する欧州の諸団体も、この産業の大部分の女性達は意識的な選択を行っているのであって、スウェーデン流の諸法は、存在しないと言っても過言ではないような問題を「是正」しようとしているのだと主張している。・・・
 ・・・こんな法律の効果と言ったら、警察を自分達に対して敵対的に見るように仕向ける結果、性労働者達をより脆弱な立場に追い込む結果が招来さえるであろうことくらいだ、という。
 ・・・それくらいなら、むしろ単に売春を禁止する方が、「より公正でより誠実」なのではないかというわけだ。「警察がおためごかしに彼女達を犠牲者達として追っかけ回すより、彼女達を犯罪者達としてくれた方がマシだ」と。・・・
 ・・・公衆の意識は、虐待経験を持つ売春婦達を支援する諸団体の意識に大きな影響を受けている。
 確かにそのような売春婦達は存在するし、これらの諸団体は重要な役割を果たしているけれど、彼らは例外的状況を相手にしているのだ。・・・
 <喩えて言うならば、夫婦間暴力(Domestic violence)の存在でもって夫婦関係全体を推し量ってはならない、ということだ。>
 2000年に売春宿を合法化したところの、自由主義的なオランダですら、北欧流の禁止政策の影響を受けつつある。
 ・・・密輸された女性に係るセックスの購入を政府によって禁止しようとする動きがオランダ議会内にあるのだ。・・・
 ・・・<人身>密輸が頻繁に行われていることは事実だが、だからといってそれに強制が伴っているということでは必ずしもない。
 密輸された女性達の多くは、自分達が性労働者として働くことになることを承知の上<であえて密輸されたの>だから・・・。」

→BBCの記者、ひいてはBBCの主張に軍配を上げざるをえないですね。
 わがNHKが、売春の問題でなくてもいいのだけれど、国会の動きを真っ向から批判する報道を行うことなど、まず考えられません。BBCにだって問題なしとしませんが、このような点に関する限り、NHKはBBCの爪の垢でも煎じて飲んで欲しいものです。(太田)

(完)