太田述正コラム#3219(2009.4.17)
<皆さんとディスカッション(続x459)>

<Kiken Yochi>

 コラム#3215で、「政官業癒着構造粉砕を標榜している民主党中心の政権」ですが、自民党の中にも(1)小池百合子氏の昨夏の自民党総裁戦のとき、「霞ヶ関をぶっ壊す」、「役所の縦割りに横串を刺し、さらにその上に国家戦略部隊約100人で構築」する案を提唱しています。(2)中川秀直氏は著書「官僚国家の崩壊」(2008年5月、講談社)で霞ヶ関改革の推進を真剣に提案しています。(3)今は無所属となりましたが、渡辺喜美氏が江田憲司氏と共に「脱官僚主義」を掲げています。自民の中にも、現状が時代と合わないとの認識の人もいます。
 もう一つ心配なのは、「民主党が少なくとも吉田ドクトリン墨守政党とは言えない」とのこと、今はそうでも政権奪取後変異する(外務省、財務省などから吹き込まれて)可能性はないのでしょうか。
 小沢一郎代表が匿名人から多額の献金を受けながら、納得のいく説明責任を果たしていないのに、ほとんどの党員から異論が出ない民主党の体質が解せません。「ナイーブ(naive)」なのか本当は皆さん「チキン(chiken)」なのか判断できません。政権をとればチャイナ、アメリカならびにロシアとのタフな「駆け引き」が待っています。国際的な人脈、情報を持っていそうな民主党議員の存在も私には不明です。時間的な余裕はあまりなさそうです。
 さらに日本版NSC(国家安全保障会議)の創設構想は、以前の安倍内閣時にあり、最近また自民党内会議で小池百合子氏が提案したと、産経に出ていました。民主党も考えている思いますが。

<太田>

 自民党は、自衛隊を対米見せ金として維持してきたように、(昔から)「タカ」派や(比較的最近始めたことですが)「反官僚」派を、「タカ」派的あるいは「反官僚」派的有権者向けに見せ金として飼ってきたということなのですよ。
 自民党内の「タカ」派や「反官僚」派の自民党議員が何を言っているかではなく、自民党が党として何をやっているかだけを我々は注視すべきなのです。
 また、少し前に自民党を逃げ出した江田憲司や最近逃げ出したばかりの渡辺喜美なんてのは、民主党等に入ろうとしていないところを見ると、隠れ自民党ないしは自民党別働隊だと言われても仕方ないでしょう。
 なお、私が、文字通り自民党に取り込まれ、その延命のためにパンダ的に利用されている「タカ」派たる小池百合子に甘いのは、彼女の女性たるハンデを考慮しているからです。
 
 残りのご指摘について、一言ずつ申し上げます。
一、外務省や財務省は、吉田ドクトリンを含め、省として、いかなる国家戦略をも信奉してはいません。政治家に吹き込むべき何物も持っていないのです。
二、戦後の日本は、外交と安全保障の基本を宗主国米国にぶんなげてきたわけですから、政治家も官僚も、諸外国と「タフな「駆け引き」」 など、一度たりともやった試しはありません。
三、実質的小選挙区制の下、自民党にせよ、民主党にせよ、議員は、資金と公認権を握る党執行部に対しては一様にチキンになりがちです。
 そこにもってきて、根本的な問題として、大部分の議員が、属国の民を代表しているから不思議ではないとはいうものの、買弁議員であって、まともな政治的信念など抱いていない、ということがあります。
 これでは、必然的に長いもの・・宗主国や党執行部・・にまかれるチキンになってしまう、ということです。 
四、大事なことは機構いじりをして、米国のNSCのようなものをつくることではなく、日本が「独立」を決意することです。

<一有料読者>

 私がサイキックビジョンとして感じるのは、北朝鮮が潜水艦からミサイルを日本海沿岸地域に発射するのではということです。時期は2010年から2011年くらいです。日本海側の沿岸地区が目標に感じますが、断定できません。もしこうしたことが生じた場合、北朝鮮の目的は何でしょか。ミサイル数は何十発もと言うわけではなく、1発〜3発に感じますが、単なるビジョンですのでやはり断定できません。その際、PAC3などは有効でしょうか。費用対効果で考えれば無駄なMDシステムにも感じられますが、それでも無いよりはいい、と言えるかもしれません。

<太田>

 典拠をつけて質問して下さい!

 North Korea is developing a long distance・・・missile・・・which can be launched from a submarine or vessel・・・and is in the midst of stationing it・・・
 ・・・the missile currently in possession has a firing range greater than the Rodong missile (shooting range 1,300km) and Taepodong 1 missile (1,500〜2.500km). They contend the missile could reach either Guam or Macau・・・
 It seems that North Korea imported and made improvements on the Soviet Union’s R-27 missile (SS-N-6 named by NATO) which is known to be more accurate than the North’s scud missile of the ‘90s. ・・・
http://www.dailynk.com/english/read.php?cataId=nk00100&num=1644

と米議会調査局が2007年に報じたことがあるようです。
 仮にこれが事実だとしても、狙いは在日米軍基地ではなさそうです。
 ちなみに、

 The threat of the North Korean submarine force, with its obsolete submarines, may easily be dismissed by a capable navy.・・・. <ただし、>In a worst case, the North Korean submarine threat could make all maritime operations so risky as to virtually suspend use of the seas in the Korean region<(=朝鮮半島周辺海域)> until the threat is eliminated. ・・・
http://www.stormingmedia.us/13/1302/A130213.html
というわけですから、北朝鮮の潜水艦が、日本列島の近くまでやってくる、ということはなさそうです。
 仮に、朝鮮半島周辺海域で北朝鮮がこのような弾道ミサイルを発射したとすれば、このミサイルが、
 The R-27 / SS-N-6 submarine-launched ballistic missile is a single-stage, storable liquid-propellant missile.・・・
http://www.fas.org/nuke/guide/russia/slbm/r-27.htm

と、一段式で大きい(長い)ことから、SM3でも撃墜可能と一応は言えそうです。
 また、間違って日本の領域内に落下してきた場合には、その近傍にたまたまPAC3が配備されておれば、撃墜は可能でしょう。

<一有料読者>

 今後のアメリカに関しても、もしアメリカという国が2012年以降に暴動が生じ、分裂した場合、日米安保はどうあるべきでしょうか。

<太田>

 このご質問の方は、典拠を付けていただくまでは、回答は保留させていただきます。
 
<深雪>

≫それはともかく、深雪さん、後一歩でコラム書けますね。しかも、様々なテーマで・・。フレーフレー、深雪さん!≪(コラム#3217。太田)

 過分なエールをいただき、恐縮です。
 私のタイプとして、目的まで到達するのは比較的速いんですよね。でも、そこに立ちはだかっている壁を乗り越えるのがすごく難しい。そうこうしているうちに、後続の人々がその壁を乗り越えていき、私は取り残されている。
 立ちはだかる壁をついぞ乗り越えたためしがない、というのが私の人生です。

 太田さんとこのように絡む事で遊んでもらうのは、ひとえにリフレッシュの部分で己の精神が楽しいからです。知識や経験や分析力などは、太田さんの足元にも及びません。

≫要するに、タクシン派=赤シャツ隊は、タクシン・チナワットら指導層こそ華僑・・・だが、構成員の大部分はタイ土着民であるのに対し、アピシットを現首相に押し上げた反タクシン派=黄シャツ隊は、もっぱら華僑によって構成されており、王室、軍、官僚機構、財界、言論界、学界らタイ支配層たる華僑勢力がその後ろ盾になっている、ということです。≪(コラム#3217。太田)

 太田さん、すごいなぁ。上にご紹介した早大の相場英治教授の論文を根拠に、すっぱりこのような正確な読みを瞬時に導きだす。赤派と黄色派のバトルの裏にある勢力分布まで私も書けば、太田さんおっしゃる所の「もう一歩」に到着した訳ですね。

 ちなみに、スワンナプーム国際空港に集結した反政府市民団=民主主義のための市民連合(PAD)の着衣は、押し並べて黄色。
 この時の首相はソムチャイ<(ソムチャーイ・ウォンサワット=Somchai Wongsawat)>氏。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BD%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%83%83%E3%83%88
 時のソムチャイ首相は、国家警察トップのパチャラワット警察長官を更迭した。つまり、この長官は首相の意思に反したということでしょう。警察すら掌握できないのだから、ソムチャイ政権は風前のともしび状態だったという事ですよね。
 また、武力行使に断固反した軍は政府と一線を画していた。つまり、軍部からも見放されていたソムチャイ政権。 首相就任1ヶ月も持たずに政権を放棄することとなったソムチャイ氏・・・。

<太田>

 ソムチャーイ(1947年〜)は、タクシン(1949年〜)の義理の兄弟で、官僚のトップまで上り詰めたエリートであり、奥さんは、憲法裁判所で資格を剥奪されるまで、タクシン派の下院議員でした。
http://en.wikipedia.org/wiki/Somchai_Wongsawat
 要するにソムチャーイは、バリバリのタクシン派であり、恐らくタクシン同様、華僑系でしょう。
 ここが、大部分が原住民系(=非華僑系)であるところの、タクシン派(=赤シャツ隊)にとって悩ましいところである、ということになります。

 ・・・Thailand's conflict is more accurately portrayed as a struggle between competing elites, both able to mobilize disruptive masses to their political calls, jockeying for position ahead of an uncertain royal succession. ・・・
http://www.atimes.com/atimes/Southeast_Asia/KD17Ae02.html

なんていう、突き放した見方も出ているくらいです。

<遠江人>

≫御説に従うと、上の御意見も、「典拠が示されていなければ、そもそも検証することができないので、個人の妄想と同義」ということになりますか(私は御説には100%の賛成はいたしませんが)。≪(コラム#3217。後からすみません)

 一応言っておきますが、「典拠を示す必要のある事案については」という断りを入れているとおり、典拠が必要な場合と必要では無いことがあるのは言うまでもありません。

<後からすみません>

≫・・・典拠をつけるもつけないも管理者たる私の自由・・・、ひきこもりされてるのではないかと心配していたあなた、ご健在のようで一安心です。≪(コラム#3217。太田)

 大変恐縮ですが、先生の、一人「中華世界」にお付き合いするヒマと根気がありませんので、御無礼はお許しください。

<太田>

 何の何の。
 私と「お付き合いするヒマと根気が」再び出てこられたようで、慶賀の至りです、と申し上げたつもりです。
 ますます、ご快復のご様子、改めてお喜び申し上げます。

<後からすみません>

≫電通の始まりは、通信社だった(Wikipediaをリンク)ので、諜報や軍事技術とは無縁ではなかったと言えそうだ、なんてくらいなら簡単に調べられたはずです≪(コラム#3217。太田)

 通信社起源という話を直接、プロパガンダや軍事技術に結び付けたり、誤りも多い(日本語)Wikipediaを典拠(?)になさったり、この程度の知的能力で他人を批判なさる心臓にはいつも感心致しております。

<太田>

 少なくとも何も典拠をつけないよりはいいですよ、とせっかく袖刷り合うご縁ができたあなたの自己啓発のために、そしてまた、他の読者の参考のために、アドバイスをさせていただいているだけのことです。
 これも何度も記してきたことですが、私は氏素性の分からない投稿者とは議論などするつもりはないのであって、ゆめ、あなたを「批判」などしてはおりません。

 蛇足ながら申し上げておきますが、英語のウィキペディア・・有料のブリタニカに遜色のない正確さを誇り(コラム#1092)、ついに有料のマイクロソフトのエンカルタを駆逐した
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0903/31/news045.html
(4月17日アクセス)・・より日本のウィキペディアが一般的にクォリティにおいて劣るのは、ご指摘の通りかもしれませんが、電通関係のウィキペディアの記述に関しては、電通あるいは電通の社員が・・電通が広告会社であることを考えればなおさら・・きちんと内容をチェックしている、と考えるのが順当でしょう。
 従って、電通関係のウィキペディアの記述の信頼性は、極めて高いと考えるべきでしょう。

 卑近な例で恐縮ですが、誰かが「太田述正」についてウィキペディアに項を起こしてくれて以来、私だって、数ヶ月に一回くらいはアクセスして、誤りがないかどうかチェックしてますよ。
 幸いこれまで誤りを発見したことは一度もないですがね。

 ちなみに、私が引用した電通創設者の「光永星郎」に関するウィキには、「・・・光永<は>・・・陸軍士官学校の予備門育雄校に入り、軍人を志すが、・・・ひょうそ・・・のため右脚の自由を失<い、>・・・軍人になる道を閉ざされた・・・日清戦争時には従軍記者として中国に向かう。この時、通信手段の不備が原因でせっかく書いた記事の掲載が大幅に遅れた経験から、通信社の設立を構想するようになる。同時に広告代理店を設立し、新聞社から得る通信料と新聞社に支払う広告料を相殺することを思い立つ・・・1931年(昭和6年)の満州事変後、国内の情報通信機関を一元化するため、電通と競合していた新聞聯合社との合併を図る動きが浮上した。光永は強硬に反発したが、かなわなかった。1936年(昭和11年)、新聞聯合社の後身「同盟通信社」が誕生すると、電通は通信部を同盟に譲渡。以後、電通は広告専門業者として再出発した。・・・」とあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%89%E6%B0%B8%E6%98%9F%E9%83%8E

 初期の電通の歩みが、軍ないし戦争と切っても切り離せないものであったことが分かります。

 知的能力の極めて高いあなたのような方には、噛んで含むようなご説明は失礼だったかもしれませんが、ご容赦いただければ幸いです。

 では、記事の紹介です。

 新自由主義とケインズ主義の違いに関し、コラム##3218「<キリスト教・合理論哲学・全体主義(続)」シリーズ(未公開)を読まれた方には特にお奨めしたいコラムがありました。
 やはり、我々が抱える最大の矛盾は、我々が、世界政府のない、全地球的資本主義の下に生きているところにあるように思われます。
http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090417k0000m070135000c.html

 時差ぼけについてのコラムがありました。
http://judson.blogs.nytimes.com/2009/04/14/guest-column-who-put-the-lag-in-jet-lag/?ref=opinion

 サルコジ仏大統領が行った、各国首脳に係る、言いたい放題の月旦が出てました。
 ・・・ Chancellor Angela Merkel of Germany did not comprehend her country’s economic problems and “had no other choice than to rally to my position”; and the leader of the European Commission, Jose Manuel Barroso, was “totally absent” from the recent Group of 20 meeting negotiations in London.
 ・・・Jose Luis Rodriguez Zapatero of Spain “may not be very clever・・・
 Mr. Obama, ・・・“has a subtle mind, very intelligent and very charismatic. But he was elected two months ago and never ran a ministry in his life. He doesn’t have a position on a number of things.” Mr. Obama “is not always operating at a level of decision-making and efficiency,”・・・Mr. Obama appeared unprepared on climate change when they met, ・・・who told the legislators, “I told him, ‘I don’t think that you have quite understood what we are doing on carbon dioxide.’ ”・・・
http://www.nytimes.com/2009/04/17/world/europe/17sarkozy.html?ref=world&pagewanted=print
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太田述正コラム#3220(2009.4.17)
<生まれか育ちか>

→非公開