太田述正コラム#3138(2009.3.7)
<琉球新報記者による取材>(2009.4.11公開)

1 始めに

 本日夜、琉球新報の記者の電話取材を受けました。
 前日この電話取材の予告があったのですが、その後で、取材を受ける際に私が教えてもらいたい事項をメールで送っておきました。
 以下が記者とのやりとりの概要です。

2 やりとり

 (1)予備的やりとり

太田:グアムに第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(戦務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部が移転するというが、残る部隊は?
記者:MAG(第1海兵航空団隷下のMarine Air Group=海兵航空集団。うちヘリは辺野古に、空中給油機は岩国に移転する予定)と31MEU(第12海兵連隊隷下のMarine Expeditionary Unit=海兵遠征部隊。要するに実働海兵歩兵部隊であり、UDP=Unit Deploymet Program に基づき、6ヶ月ごとに交替する)。
太田:グアム移転経費の積算の大まかな考え方いかん。また、その日米への割り振りはいかなる考え方に基づいたものなのか。施設の建設等に米日の業者が平等な立場で入札に参加することになっているのか。
記者:いわゆる真水(日本の予算)28億ドルがあてられる隊舎、庁舎、学校等、国際協力銀行による貸し付け(日本政府による出資が原資。無利子で20〜30年償還)があてられる家族住宅25.5億ドル、インフラ7.4億ドルで、総計60.9億ドルだ。米側が経費を出すのは、運用関係施設とか港湾とか高速道路だ。
太田:直接海兵とは関係ないが、嘉手納騒音訴訟はどうなる?(米側は、海兵のヘリの嘉手納米空軍基地への移転を拒否してきたという経緯がある。)
記者:既に旧嘉手納騒音訴訟で国側の敗訴が確定しており、国側は、今次新嘉手納騒音訴訟でも高裁で敗訴し、最高裁でも敗訴するだろう。しかし、旧訴訟で住民に払うことになった補償額のうち、米側が負担すべき25%分の支払いを米側は拒んでいる。
太田:普天間飛行場にいる海兵のヘリは、輸送機で運べないのか。宮中給油は不可能なのか。 ヘリを岩国に持っていけない理由はどのように説明されているのか。
記者:すべて輸送機で運べるし、空中給油もできる。ヘリを岩国に持っていけない理由として米側があげているのは、海兵歩兵部隊のタクシーのようなものだから、訓練演習等に出かける時にすぐそばにいないとダメだ、ということだ。沖縄の伊江島や宮古島の飛行場への移転すら、米側は拒み続けてきた。
太田:海兵の空中給油機KC-135を岩国に持って行くことになっているが、そもそもどうして日本に置いておく必要があると説明されているのか。
記者:特段説明はなされていない。
太田:辺野古移転問題で県や地方自治体はいかなる「抵抗」手段を有しているのか、政府はどのように「抵抗」を突破しようとしているのか。
記者:埋め立て許認可権を県が持っている。このこともあって守屋事務次官(当時)が日米間で協定を締結すると言い出した。これに加えて、政権交替の可能性も出てきたことから、2月17日のクリントン米国務長官訪日の際に、中曽根外相との間で「第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(略称:在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_43.html
が締結された。この協定は条約なので、衆議院で承認されれば、参議院の議決いかんに関わらず、効力を生ずる。条約は、憲法よりは劣るが、法律より強い効力があり、たとえ県が埋め立ての許認可を行わなくても、国は埋め立てを行うことができるようになる。ただし、協定を実施する法律をつくらなくても埋め立てができるかどうかは、学者の間でも意見が一致していない。

 (2)本題

太田:最初に一般論を申し上げておきたい。
 沖縄の基地問題を横目で見ていると、10年一日のごとく問題が解決せずにいて、もどかしい限りだ。
 沖縄の人々は、今のままの状況が一番いいと思っているのではないかと言いたくなる。
 普天間でも借料をもらい、在沖米軍は兵力を削減しないまま、既存基地や辺野古がらみの対策費や借料ももらい、更に騒音補償費ももらい続けることができるからね。
 沖縄が本当に基地問題を解決したいのなら、もっと知恵を絞らなければダメだ。

 私は、日本は米国の保護国、つまりは属国だと指摘している。片務的安保条約は特殊なもののように思われがちだが、史上いくらでもある保護条約に他ならない。史上初めてなのは、日本が自分の意思で保護国になったことだ。
 さて、私はその日本に対して沖縄は属国的な存在であると思っている。本土とはやや異なるアイデンティティを沖縄は持っているということだ。
 米日沖は属国関係の入れ子構造をしている。
 私は日本は米国と合邦するか「独立」するかはっきりさせるべきだと主張してきている。さもなきゃガバナンスを回復できず、構造的腐敗だって解消できないからだ。
 このアナロジーで行けば、沖縄も日本を選ぶか独立を選ぶかを決めなければならない。
 日本を選ぶのなら、沖縄が日本全体の立場に立って在日米軍問題に取り組まなければならない。例えば、不祥事の話が出る直前に小沢が米海軍だけが日本におればよいと言っただろう。あの小沢の主張は正しい。私の主張をそのままとったような話だ。あの小沢の主張を肉付けする作業を沖縄の人がやるべきなのだ。
 独立を選ぶのなら、EU型の独立をお奨めする<(コラム#2122参照)>。これも成案を沖縄の人がつくるべきだ。
 後者の案を用意することは、前者の案を日本政府に突きつける際のテコにもなる。

 それでは各論に入ろう。

 『実名告発 防衛省』で述べたように、司令部と実働部隊を切り離すのはおかしい。
 部隊のレベルが低くなればなるほどよりおかしい。連隊司令部と大隊以下を切り離すなんてナンセンスもいいところだ。歴史を紐解いても前例がないのではないか。
 こんなことを米側がするのは、ホンネでは在沖海兵隊は廃止すべきだし、廃止しないとすれば全面的にグアムに移転すべきところ、日本がグアム移転経費を負担する、実働部隊を日本に残せば思いやり経費も引き続き出し続ける、なんて途方もないことを日本がやっているからだ。
 第一実働部隊に一番若くて血の気の多い連中がいて、不祥事を起こして大問題になってきたというのに、肝心の実働部隊は移転しないというのだから、頭に来る。
 また、グアムで隊舎等の建設経費を100%日本側が負担するというのも問題だ。これまで思いやり経費で100%負担したものがいくつかあるが、全額使われ、しかも恐るべき浪費が生じた。何事によらず、10%でもよいから米側負担分を設定すべきだ。そうすれば、米国の議会会計検査院が目を光らせて無駄遣いをさせない。結果として日本側が負担する90%だって無駄遣いがなくなる。

 以上だが、話しているうちに、沖縄の人々の顧問になってあげたい気になってきた。
 自民党にも外交・安全保障政策はなかったわけだが、民主党に至っては、外交・安全保障については党として何も考えていないに等しい。
 小沢の不祥事にもかかわらず、今年中に民主党中心の政権ができることはほぼ間違いなかろう。
 政治は混沌としてくる。
 だからこそ、沖縄の人々は基地問題、安保問題について検討し、可及的速やかに成案を得ておく必要がある。協定下においていかに「抵抗」するかも考えておかなければならない。
 そうしておけば、民主党を中心とする新政権は沖縄がぶつける成案を採用せざるを得なくなることだろう。

記者:太田さんの写真入りの記事にしたい。またぜひ沖縄にいらして欲しい。