太田述正コラム#3191(2009.4.3)
<皆さんとディスカッション(続x445)>

<太田>

 コラム#3189にあわてて深雪さんへの回答を書いたので、舌足らずであった部分を補足しておきます。

 コラム#3180(未公開)で、

 「<今回、>「日本に飛来する恐れがあるとは認められない」が、事態の急変に備え、あらかじめ防衛相の判断で原則非公表で命じる(<自衛隊法82条の2>第3項)<の規定に拠ることになった理由は次のとおり>。 政府は今回、飛来する恐れは認められないが、「事故が発生したら≪・・ミサイルの1段目は正常に飛行した後、2段目が故障し、失速して・・・落下するなど、偶然が重なる、極めて限られたケース<だが>・・≫<日本の領土・領海に>落下する場合がある」(河村氏)と判断し、3項を選択。河村氏は非公表としてきた3項による破壊命令を公表した理由について(1)北朝鮮の事前通知があった(2)国民の不安を和らげるためできるだけ説明する必要があった――の2点を挙げた。」

という記事をご紹介したところです。

 当初は、自衛隊法82条の2第1項の「日本に飛来する恐れがある」と何が何でも認定してテポドン2を、米海軍と海上自衛隊で連携しつつSM3で打ち落としてしまおうという計画・・平時の敵対的な軍事力行使・・だったのを、米側の方針転換に基づき、日本側もテポドン2が飛行中に事故が起こって残骸が日本の領域内に落下するという、常識的にはありえない事態を想定した上で、3項選択へという形でトーンダウンした、と私は考えているわけです。
 しかし、さんざんプレイアップしてしまっていたため、今更引っ込みがつかないので、本来「非公表」の「3項による破壊命令を」あえて「公表し」てつじつま合わせをした、というわけです。(コラム#3187参照。)

 「あり得ない事態」が起こったとして、残骸を打ち落とすことなどほとんどできないというのにね。
 ま、あり得ないんだから、このことがバレる恐れはないですがね。

<おーつか>

≫PAC3を100カ所に配備しなければならないという国防省の試算≪(コラム#3189)

というのは説明不足でしょう。
 PAC3の対弾道弾射程はわずか20km(15km説もある)。
 CADでお絵描きしてみましたが、100セットで守れるのは重要軍事拠点と各都道府県の行政拠点、主要な交通ハブ、原発施設くらいです。
 (例えば、沖縄本島だけでも全土を守るには最低3セットが必要となる)。
 ここの5頁めに東京周辺の図があります。
http://www6.ocn.ne.jp/~c-kenpou/data/undosiryo.pdf

 まぁ、100セットあれば人口の90%位はフォローできるかもしれませんが、16高射群32セットで5000億、ペア運用を考えると100高射群200セット必要ですから、装備費だけでプラス2.5兆円!
 さらに運用コストは……
 そういやタモガミって空自ではずっと傍流だったミサイル屋でしたよね……。

 面白い試みとして戦闘機にPAC3を搭載するというものがありますが、
http://www.gamenews.ne.jp/archives/2007/01/f15pac3.html
これとてもスクランブルで離陸したらもうノドンは落ちてくる頃ですから、B-52の核パトロール並に飛ばしておかなければあまり意味はなさそうです。

<太田>

 計算の典拠も示していただければなおよかったのですが・・。
 なお、田母神閣下らの奮闘のおかげで、PAC3の将来は隆々たるものがあるようですよ。
 「・・・「迎撃ミサイルPAC3を常備してほしい」。加藤紘一氏(山形3区)、玉沢徳一郎氏(比例東北)ら東北選出の自民党国会議員は一日、河村建夫官房長官を首相官邸に訪ね、こう要望した。・・・」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2009040302000092.html

<おーつか>

  日本政府が本気なら、3日前に就役した最新鋭の潜水艦 「そうりゅう」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%9D%E3%81%86%E3%82%8A%E3%82%85%E3%81%86_(%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6)

を半島東岸に浮かべるくらいの砲艦外交をやるべき。

 「そうりゅう」のGPS対応ハープーンは、100キロ以上手前から発射しても、北のロケットを確実に粉砕できます。
 やったら、戦争になりますけどね。

<太田>

 ハープーンは、対艦ミサイルであり、陸上を叩くことは想定されていないはずだ
http://ja.wikipedia.org/wiki/AGM-84
と思ったら、陸上も叩けるバージョンが出現してるんですね。
http://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_Harpoon

 やっぱし、日本語版ウィキは遅れてる!

 だけど、そうりゅう搭載のハープーンは対艦専用では?

<深雪@邦人返せ北朝鮮>

  裏芸参加です。
 <有料読者にくせに公開されたコラム#2824を読んで>『実名告発 防衛省』の上梓が今年の九月だと思ったお馬鹿です。
 アマゾンで注文しました、もちろん太田さんに礼を尽くした新刊本です。
 程なく届くはず。いつか、サイン入れてくださいな。(ぉぃ

→ヘタなサインでよろしければ、いつでも喜んで。(太田)

 今回のテポドン2プラスに対する迎撃関連のTVニュースをNHK総合を中心に見ていますが、あれらのニュースに不安を煽られる方々はどの程度存在するんでしょうね。私は丸腰戦法こそが不安です。防具をつけるから叩きにくる輩が出るんでしょうか。その意見が真実なら、防具をつけなければ誰も叩きに来ないという論理になりますよね。でもそれって、違いますよね。

 東西冷戦構造の中で、負戦後体制の一環として必然のように米国の庇護のもと、米国と片務的条約を結んだ事による他力本願の省エネ的属国防衛戦術が、日本の繁栄と平和をもたらしたんじゃないでしょうか。

→それじゃ、吉田トクトリン礼賛になっちゃいます!(太田)

 その東西冷戦構造がソ連崩壊で氷解し、世界は多角的に同盟を再構築することによって、個々の戦略下のもと、我が日本国も自主防衛が必須の時代に突入したと認識しています。国家防衛のためにも外交戦略の面でも、私も核保有は非常に安価で確実な策だと思います。それを是とするかは別問題ですが。

 個別メッセージも公開される危険(!?)をも孕むスリリングな知的ゲーム、ゲームと言ってはその真摯なテーマ故にシニカルで不謹慎ですが、それに近いものを堪能しています。昨日、エライと太田さんに頭をなでられた感想でした。

→愉快な愉快な深雪さんでした。
 読者の皆さん、「個別メッセージ」の全部または一部を公開されたくない場合は、その都度断ってくださいね。(太田)

<通りすがりですが>

 <コラム#3102>「英仏原潜衝突事件」<を読み>ました。

 パーッと参照されているソースを確認させていただいたのですが、いくつか気になることがあります。
1)タイムズ紙、ニューヨークタイムズ紙は(このほかテレグラフ紙)衝突が起こったのはほぼ2月3ないし4日と特定しており、6日説をとっているのはガーディアンだけのようですね。6日にフランス側から発表があったとのことですが、各国からの情報収集をした上での公表だったということで、6日以前の衝突というのが信憑性が高い気がします。それとも別のソースがあるのでしょうか。
2)ヴァンガードは曳航されて母基地に戻ったとのことですが、参照されているソースではいずれも自力航行で帰港したとされているようです。
3)最近ではアメリカ海軍の潜水艦と揚陸艦同士が衝突したというニュースもあります。情報共有の有無がどこまで衝突の要因たり得るんでしょうか。

 それにしても、あるていど存在が分かっていて探知できないというのは、お互い静粛性に優れていると言うことですよね。その意味では両国共にとても優秀なだなぁという印象を受けます。

<太田>

 丁寧に読んでいただき、ありがとうございます。

 1)についてですが、「3日ないし4日」というのでは、日にちを「特定」しているとは言えません。唯一「特定」していたガーディアンの記事をこの点に関しては典拠とした、ということです。
 なお、この事故に米国はからんでいないので米国の媒体より英国の媒体の方が信頼性が高いと考え、かつ、英国の媒体の中では、私はガーディアンが最も信頼性が高いと考えた、ということを付言しておきます。

 2)についてです。
 ワシントンポストが、AP電をキャリーし、The Vanguard _ which is capable of carrying up to 16 nuclear-armed Trident missiles _ was towed back to a submarine base in Scotland with visible dents and scrapes, the BBC reported. と報じています。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/02/16/AR2009021600626_pf.html

 他の媒体は、ヴァンガードは自力航行して母基地に戻ったとしていたのですが、1)の「なお書き」の方針に反して、この点に関してだけ魔が差して(?)この記事に拠ってしまったようです。
 今改めてこの記事を読み返して見たところ、AP電そのままで、しかも、件の部分については、APもBBCの放送をそのまま「横流し」していただけなので、こんな記事を(他の典拠と矛盾していたのに)典拠にしたのはまずかったですね。

 ちなみに、当時のBBCの電子版には、
HMS Vanguard returned to its home base Faslane on the Firth of Clyde under her own power on 14 February.
"Very visible dents and scrapes" could be seen as tugs towed her in to the port on the final stage of the journey, our correspondent said.
http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/7892294.stm

とあったので、APは、不適切な、いや少なくとも誤解を生みそうな「横流し」方をしたと言うべきでしょう。
 なお、軍艦は基本的にタグボートなしでの自力接岸はできません。
 また、通常の軍艦であれば、タグボートが押す形で接岸しますが、潜水艦は、その形状から押すことができないため、タグボートで曳航するか、岸壁からとも綱をたぐり寄せて接岸します。(典拠省略)

 3)については、潜水艦の位置情報については、友軍内においても、共有する範囲は極めて限定されるのが普通です。ですから、同じ米海軍とは言っても、潜水艦の位置情報は揚陸艦になど伝えられてはいなかったはずです。
 潜水艦が浮上する時には、(潜水艦には音の情報しか基本的に入ってこないこともあって、)どうしてもたまには水上艦船との衝突事故が起こるわけであり、その不幸な一例だったということでしょう。

<後からすみません>

≫匿名でやるのなら、氏素性の分かっている人、できればそれなりの『権威』のある人、の言説を典拠にひきつつ意見を開陳していただきたい、ということですよ。≪(コラム#3189。太田)

 主に論理に頼ってコメントしております。もし、<私が>論理的なやりとりが知的能力上耐えられないと<思われたと>いうことでしたら、御遠慮なくおっしゃってください。
≫一番最後のご『意見』は、小沢の展開した自民党との大連立の必要性を代弁されたもののように聞こえますね。ねっからの小沢心酔者とお見受けしました。≪(同上)

 最後の部分は、社会常識と思われることを申し上げたまでです(そもそも、小沢氏の考えはよく知りません)。
 また、大連立をはなから否定するわけではありませんが、昨年(一昨年?)の提案は政権ローテーションの確立に有用とも思えないので、反対ですね。

≫ひょっとして小沢事務所の方? 小沢の落剥ぶりに、さぞかしご無念なのでしょうね。お気持ち、よっく分かります。≪(同上)

 政界とは何の関係もありませんが、たしかに今回の事件は残念です。
 とはいえ、今後の展開(例えば、汚職等の新たな犯罪事実がはっきりする等)によっては、小沢氏が退陣すべきだと思います。前にも申し上げたように、イメージやプロパガンダに惑わされずに、事態の推移を冷静に見極めたいと考えているだけですので。
 ところで、北朝鮮のミサイルをめぐる安全保障についての御高説、なるほどと納得いたしました(もっとも、こちらについても、深い知見は持っておりませんが)。
 「寸善」どころか、大善を学ばせていただきました。

<コバ>

 東京裁判批判など、田母神閣下のような憂国の士の雄叫びが、日本とアジア諸国との溝を拡げ、さらなる世界からの孤立化を招かないことを祈るしかない今日この頃です。
http://www.atimes.com/atimes/Japan/KD02Dh01.html

 中国や韓国による謝罪、反省の要求は異常すぎる気もしますが、国際発信、論拠なき居直りは小沢のようにみっともない。
 自分は蝦夷の食いっぱぐれですが、どうも小沢(東京かも?<東京生まれだが水沢で育った>)やら<郡山出身の>田母神閣下やら蝦夷の地はアングロサクソン的、弥生的な感覚からかけ離れてる野蛮人なのか…orz 
 明治維新も弥生的な薩長?から始まったし、やはり西日本の人たちの頑張りに期待するしかないのかもしれません。この前の山形県女性知事誕生はうれしいニュースだったのですが…。

<太田>

 記事の紹介です。

 「・・・北朝鮮が「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイル「テポドン2号」改良型ミサイルの発射準備が最終段階に入った問題で、「人工衛星」が軌道から外れた際に軌道修正するための受信・制御施設が、北朝鮮の地上に確認されていないことが2日、日米軍事筋の話で分かった。
 これは「仮に人工衛星だとしても発射後は制御できない<し、事故が起こった場合自爆させることもままならない>」(政府関係者)ことを意味し<ている。>・・・」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090403/plc0904030203004-n1.htm

 高木ブー(76)と天川由記子(50)(コラム#1877)、結婚へ。
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/090402/tnr0904021133006-n1.htm

 何度か大昔、勉強会でご一緒した天川さん、おめでとう!

 中共で日中関係史の親日的スタンスでの見直しが推進されていることを伺わせる記事が人民網に出ました。
http://j.peopledaily.com.cn/94473/6627953.html
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太田述正コラム#3192(2009.4.3)
<タックスヘイヴン物語(その1)>

→非公開