太田述正コラム#3062(2009.1.28)
<パレスティナ問題の今後(その1)>(2009.3.15公開)

1 始めに

 「ガザのすぐ外で27日、<爆弾が爆発してイスラエルの兵士1人が殺されたが、イスラエルはその報復として、ガザに侵攻し、パレスティナ人一人を殺しもう一人を負傷させた。・・・
 ハマスは、・・・誰がこの爆弾を・・・仕掛けたのか分からないと述べた。しかし、イスラエルの官憲は、この、ほかに3人の兵士を負傷させたところのこの攻撃について、ハマスが、3週間戦争が終わったばかりの現在、イスラエルを試している不吉な徴であると解釈している。・・・
 その後、ガザ南部・・・でオートバイを運転していたハマス軍事要員がイスラエルの無人機から発射されたミサイルに撃たれたが、死は免れた。・・・
 28日の夜明け前、イスラエル軍機は、・・・ガザとエジプトの境界を越える商品と兵器の密輸に使われているトンネルを爆撃した・・・。・・・
 イスラエルは更に、27日、ガザに通じる関門を閉鎖した。・・・
 再建を促進する目的の下に行われたと考えられる声明において、ハマス政府は、世界中から寄付されると見込まれるカネを受け取ることに固執するつもりはないと述べた。
 イスラエルは、多くの欧米諸国といくつかのアラブ諸国同様、ハマスを孤立させようと努めており、西岸のパレスティナ当局及び国際援助諸団体が援助を統制することを望んでいる。これはハマスが再建してくれているようにガザ住民に思わせないためだ。・・・
 <ただし、>イランとカタール<だけは>ハマスに直接カネを渡そうとしている。
 ハマスは、それが自分達の責任であるとして、<せめて>援助活動を管理しようと思っているが、<イスラエル等は>これに反対する可能性が高い・・・。
 ・・・イスラエルは、<当分の間、>関門を人道的援助のためにしか開けるつもりはない。・・・
 米国、及び米国と・・・ともにいわゆるカルテットを構成しているところのEU、ロシアと国連は、ハマスにイスラエルとパレスティナ当局との間で結んだ諸合意の尊重、暴力の放棄、イスラエルの承認するよう求めてきた。
 ・・・最初の二つについては、ハマスが、エジプトを通じてイスラエルと交渉しようとしているところの延伸された停戦合意の中で成就されることも不可能ではない。
 ・・・ハマスはイスラエルを承認する用意は今のところないが、三つの条件のうち二つが成就した暁には、ハマスの姿勢も変わるかもしれない。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/28/world/middleeast/28mideast.html?ref=world&pagewanted=print
(1月28日アクセス)

 「・・・イスラエルの戦車とブルドーザーは境界を越えて侵入した。・・・
 ハマスは、・・・<路傍爆弾の爆発>は、「占領者の犯した数々の犯罪に対する自然な反応だ」と説明した。
 イスラエルの外相ティピ・リヴニは、「私は誰が下手人かには関心がない。ハマスはガザを統制しており、ハマスはそこで起きるあらゆることについて責任がある。連中がガザから我々に向かって銃撃したり、爆弾を仕掛けたり、ロケットを撃ったり密輸したりしたら、イスラエルは対抗措置をとる」と述べた。」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/27/gaza-israeli-soldier-palestinian
(1月28日アクセス)

2 パレスティナ問題の今後

 (1)The Two-State Option

 西岸とガザからなるパレスティナ国家を成立させ、この国家とイスラエルとを隣接併存させるという、いわゆる2カ国オプションの実現可能性はなくなったとイスラエルは判断している、とコラム#3044で申し上げたところです。

 (2)小競り合い付き現状維持

 コラム#3044で、「イスラエルは、パレスティナ問題を解決しようとも解決できるとももはや思っていません。 イスラエル領域内での自爆テロや、イスラエル領域内へのロケット等の打ち込みさえなくなればそれでよいと思っているのです」と申し上げたところであり、こういう小競り合いがハマス等との間で続くことについては、イスラエルは織り込み済みであり、これでもって停戦が破られたとは思っていません。
 停戦が破られたとイスラエルが判断すれば、今回のような均衡がとれた対抗措置ではなく、ガザ・ミニ戦争で行ったような、不均衡に大規模な対抗措置をとることになるでしょう。
 このような状況が対ヒズボラ、対ハマス等で続くことを受忍するというのが、見通しうる将来にかけてのイスラエルの方針です。
 では、これ以外にオプションはもはや考えられないのでしょうか。

 (3)The Three-State Option

 最近、登場したのが、3カ国オプションです。
 これは、ブッシュ政権下で国務省高官を務めた、ネオコンのジョン・ボルトン(John R. Bolton)の提起したオプションです。

 「・・・我々は「3カ国」アプローチに目を向けるべきだ。これは、ガザはエジプトの統制の下へと戻し、西岸は一定の取極を行った上でヨルダンの主権の下に委譲する、というものだ。<要するに、基本的に1967年の中東戦争以前の状態に戻すということだ。>
 何でもありの状況下で、今日パレスティナ紛争は表見的には平和である<イスラエル、ヨルダン、エジプト>3カ国の領域の内部で続いている。
 二つのアラブ国家が以前保有していた領土に政治権力を再拡大することは、平和圏を拡大することであり、より重要なことなのだが、それぞれの国の中で平和と安定を確保しているところの政府が責任を負うことでもある。・・・
 この考えは間違いなくエジプトとヨルダンのお気にはめさないだろう。というのも、この2カ国は、ずっとパレスティナ問題から足を洗おう洗おうとしてきたからだ。
 だから、この2カ国だけに責任を負わせるべきではなかろう。
 この2カ国は、これまで長年にわたって米国から受けてきたような財政的・政治的支援をアラブ連盟と欧米から受けなければならない。
 イスラエルも、ヨルダンとエジプトがこのような政治的・行政的役割を担うことを受け入れなければならない。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2009/01/04/AR2009010401434_pf.html
(1月6日アクセス)