太田述正コラム#3044(2009.1.19)
<イスラエルのガザ攻撃(続x14)>(2009.3.3公開)

1 始めに

 イスラエルの一方的停戦発表に続いてハマスも一方的停戦発表を行いました。
 
2 ハマスの一方的停戦発表

 「・・・<イスラエルが18日午前2時に停戦に入った>約12時間後に、ハマスとガザの他の過激派は即時、一週間の停戦に入る旨発表した。・・・
 これらの停戦発表の間をぬって、パレスティナの過激派によって、18日中に少なくとも19のロケットがイスラエル南部に向けて発射された。・・・
 他方、イスラエルは、18日中に3回航空攻撃を敢行したと言っている。うち1回はイスラエル軍に発砲した射手達に対してであり、2回はロケット発射隊に対してだったという。<これにより、パレスティナ人1人が死亡したようだ。>・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/19/world/middleeast/19mideast.html?_r=1&hp=&pagewanted=print
(1月19日アクセス。以下同じ。)

3 停戦の意味

 「・・・この22日間にわたった戦争は地域の諸要素を変更した。
 すなわち、サウディアラビアとエジプトの、公的アラブ政治権力構造における地位に、空前の公然たる挑戦がなされたということだ。
 16日に<カタールの>ドーハで<ハマスの指導者達を交えて>行われた<サウディアラビア、エジプト、ヨルダン抜きの>非公式首脳会談は、<ハマスという>パレスティナ抵抗運動体に正統性を与えただけでなく、イスラエルを孤立させるための直接的行動を訴えるとともに、1967年にイスラエルによって占領された領域からイスラエルが撤退する見返りにイスラエルとの国交を正常化するとのアラブ・イニシアティブの「死」を宣言した。・・・
 これは、この地域の将来のコントロールを巡る、カタール・シリア枢軸とサウディ・エジプト同盟との間の厳しい闘争の始まりを告げるものだった。
 <エジプト大統領の>ムバラクは反撃に出た。
 18日にエジプトで開かれた首脳会談には、国連事務総長、<英仏等の>欧州の指導者達、そしてムバラクが出席した。イスラエルと米国はお呼びでなかった。イスラエルを怒らせるのがムバラクの思惑だったと言ってよかろう・・・。
 しかし、イスラエル・米国のイニシアティブも、このエジプトのイニシアティブも、一方の主役であるハマスが合意からのけ者にされていることがそれぞれの最大の眼目なのだ。これはいかにも不吉な話であり、将来の紛争の火種をあえてつくったと言うべきか。・・・
 <もう一つ特記すべきは、一般住民とインフラに夥しい被害を生ぜしめることを頓着することなく行われたところの、>イスラエル軍による容赦ない火力の使用だ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2009/jan/19/gaza-ceasefire-plan

 「・・・<そもそも、>想像に難くないことだが、イスラエルの一方的停戦の中身だって、ある意味、<イスラエルとハマスの>両者が10日間の停戦を行ってその間に境界通行メカニズムについて合意し、次いでイスラエル軍の撤退、更には人道的・経済的援助のための境界の開放と進む、というエジプト・トルコ・ハマス間の交渉の中身と整合性がとれていない。・・・」
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/cifamerica/2009/jan/18/gaza-ceasefire-israel-hamas

4 今後の展望

 「・・・イスラエルの官僚達は<内々>、20日のオバマの米大統領就任前にイスラエル軍部隊は完全に撤退すると語った。・・・
 <イスラエルの>国内保安相・・は、ガザ地峡へのいかなる新たな武器の流入についても、イスラエルはこの密輸をイスラエルの領域への攻撃とみなして、軍事的対応を行うと脅した。
 「つまり、<ロケットの>密輸が再度行われたら、イスラエルはそれが発射されたとみなすということだ」と・・・。・・・
 今次・・・<ガザ>攻勢は<イスラエル国民の間で>人気を博しており、2月10日の総選挙でのティピ・リヴニ外相とエフード・バラク国防相の展望は大いに開けたと言える。
 しかし、世論調査によれば、それでもなお、2005年のイスラエルのガザからの38年目の撤退に、そんなことをしたらパレスティナのイスラム過激派を増長させるだけだと反対したところの、右派野党のベンヤミン・ネタニヤフが<総選挙で>勝利すると予想されている。・・・」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1056757.html

 「・・<パレスティナ当局の>首相は、ガザの再建支援・・15億米ドル必要だと推計されている・・はパレスティナ当局を経由して行われなければならないと警告している。
 しかし、EUの諸政府と国連は、ハマスと交渉する用意がある旨をほのめかしている。
 これは、このイスラム過激派の国際的隔離を旨としてきた体制の浸食であり、事実上のハマスの認知につながる。
 イスラエルはかねてより、いかなる外国の援助や再建のための財政支援もハマスに対してなされてはならないと主張してきているところだ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/19/gaza-conflict-israel

 「・・・<イランは、1980年代からヒズボラ、そして2001年からはハマス、という両腕を使ってきたが、>「ガザ地峡におけるハマスの戦争哲学は、レバノンのヒズボラのそれの純粋な物まねだった」とイスラエルの国内保安相・・・は語った。
 しかし、イスラエルの治安関係者達は、ガザはレバノンではなく、ハマスはヒズボラではないと言う。ハマスは、2006年の戦争をイスラエルに対する勝利と形容することができ、その結果イスラエルの国防首脳達を更迭に追いやったところの、ヒズボラのような戦闘能力を発揮することができなかった。
 しかも、パレスティナの民族的悲願を抱えるところの、スンニ派集団であるハマス、とシーア派のイランとの同盟は、シーア派の民兵<であるヒズボラとイランとの同盟>に比較すると、限界があるし微妙な違いがある。
 実際、ハマスの主たる財政的支援者達はペルシャ湾岸諸国であると・・・いう。
 この数週間にわたってハマスから要請されていたにもかかわらず、ヒズボラはガザへの軍事的圧力を減殺することができたはずのイスラエルに対する攻撃を行わなかったのだともいう。・・・
 イラン自身、ハマスが自分達の手先であるという観念を拒絶している。
 近年に至るまで、イランとハマスは、ハマスが1980〜88年のイラン・イラク戦争でサダム・フセインを支持したことで冷たい関係にあったところだ。・・・
 <そうは言うものの、>今月の戦闘で、イスラエル軍部隊は欺騙爆弾を仕掛けた家や・・・何マイルにも及ぶトンネルに出っくわした。
 これらは、2006年に「ヒズボラが使った戦術と生き写しであり、ヒズボラがハマスの軍事部隊をみっちり訓練したことを示唆している」とレバノン・・の政治学者・・は語っている。・・・」
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-gaza-assess18-2009jan18,0,7105646,print.story

 「ハマスは19日、イスラエルと国際社会が、ガザでの戦争の後、ハマスがロケットその他の武器を再びため込まないように努力しようとしているにもかかわず、再びため込むと言明した。
 「諸君が何を願おうとも、聖なる諸兵器を製造することは我々の使命であり、我々は兵器をどのようにして調達するかを知っている」とハマスの軍事部門のスポークスマン・・は記者会見で語った。・・・」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1056783.html

5 コメント

 今後ともガザをハマスが支配し続ける可能性が高いでしょうが、その一方で、恐らく間違いなく、ハマス(等)がロケット等をガザから発射することはほとんどなくなるでしょう。また、ハマスがガザを支配している限り、人道的支援や再建支援を超える物資のガザへの流入をイスラエルが認めることもないでしょう。
 イスラエルは、パレスティナ問題を解決しようとも解決できるとももはや思っていません。
 イスラエル領域内での自爆テロや、イスラエル領域内へのロケット等の打ち込みさえなくなればそれでよいと思っているのです。
 対シリア、対ヨルダン川西岸、対レバノンに引き続き、対ガザにおいて、イスラエルは上記目標を達成したことになります。
 残されたのは、イランの核の潜在的脅威だけです。
 イスラエルが、オバマ新米政権と調整しつつ、この潜在的、かつ最大の脅威について、どのように無力化を図るかが今後の焦点です。