太田述正コラム#3026(2009.1.10)
<イスラエルのガザ攻撃(続x8)>(2009.2.24公開)

1 始めに

 表記についての8日時点の人的被害は、パレスティナ側が760人の死者で、このうち女性と子供が半分近くを占めています。子供の死者は257人に達しています。
 2年前のレバノン南部での戦争の時よりも死者の発生ペースははるかに高いものです。
 イスラエル側は13人の死者で、このうち一般住民は3人です。
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/10/gaza-zeitoun-attack-deaths
(1月10日アクセス)

 今回は、イスラエル国防相のエフードバラクとバラク・オバマ米次期大統領について、それぞれ再度とりあげたいと思います。

2 再びエフード・バラクについて

 「・・・バラクは今次の戦争によって得をしたが、<実際のところ、>彼はイスラエルの最高指導者達の間では一番最後までこの戦争に反対した人物だし、戦争が始まってからは、停戦の実現に最も熱心な人物なのだ。・・・
 7日の安全保障閣議の際、彼は同僚の閣僚達を、地上戦闘を拡大することを控えることに同意させることを助けた。・・・
 彼は、<元参謀総長であり、元首相だが、>明敏な頭脳で知られた、ピアノの名手だ。・・・
 ・・・彼は、ハマスを他の人々ほど深刻視していない。相対的に小さな戦略的挑戦であるところのロケット攻撃や武器の蓄積など、より大きな問題に対処する間は放置しておいてかまわないと考えている。
 「彼の目はイランを凝視している」・・・
 この点からしても、バラクがこの戦争によって人気を博しているのは皮肉であると言うべきか。というのは、彼が平均的イスラエル人がロケット攻撃にいかに怒っているかを把握することに失敗したことは、彼が政治家として致命的欠陥を有することを意味しているからだ。要するに、彼は大衆と気楽に接<して大衆の欲するところを肌で感じ>ることができないのだ。これでは、政治指導者として大成することは容易ではない。・・・
 彼がそれができない理由の一つは、彼が政治に関してブリキの耳を持っているからだ。
 10年前に政治の世界を退いた時、彼は実業の世界に入り金持ちになった。そして、テルアビブの高級なアキロヴ(Akirov)高層ビルの31階のマンションを購入した。
 この数ヶ月間、彼はこのマンションを1,100万米ドルで売ろうとしてきた。
 彼は、イスラエルの社会民主党<(労働党)>の指導者として勤労者の代弁者ではなければならないというのに、こんなことをやっちゃいけなかったのだ。・・・
 大部分の評論家は、今度の議会選挙での勝利者が<右派の>リクードであれ、<現在労働党が連立を組んでいる中道右派の>カディマであれ、バラクは国防相にとどまる可能性があると見ている。大衆がそれを欲しているからだ。
 <リクードの党首の>ネタニヤフは、もし自分が首相になったら、バラクを国防相にとどめて労働党を連立に引き入れる、と語ったところだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2009/01/08/world/middleeast/08barak.html?hp=&pagewanted=print
(1月8日アクセス)

 米国のバラク(・オバマ)に加えて、イスラエルの(エフード・)バラクについても、ファンになっちゃいました。

3 再びオバマと今次ミニ戦争について

 「・・・国務省は、ハマスをテロ組織に指定しており、2006年には、米下院は、この集団への米国の財政的援助を禁止する法律を成立させた。・・・
 <しかし、>オバマ次期政権は、ジョージ・ブッシュの、ハマスを孤立させるドクトリンを放棄し、このイスラム組織と対話のチャンネルを確立する用意がある、と政権移行チームに近い複数の筋が語った。
 米国の諜報諸機関を通して着手されるであろうところの、ハマスとの接触の開始への動きは、ブッシュ大統領の、このグループを貝片追放してきた政策の明確な変更を意味する。・・・
 これは、1970年代の、米国がPLOと関わりを持った秘密プロセスを思い起こさせる。
 当時イスラエルは、米国がそんなことをやってることに、ずっと後になるまで気付かなかった。・・・
 しかし、政権以降チームに近いある中東専門家は、「オバマがこの話を明らかにする可能性はまずないだろう」と語った。
 ジョージタウン大学の外交官スクール(school of foreign -service)のテロ対策専門家のブルース・ホフマン(Bruce Hoffman)は、ダマスカスにいるハマスの過激派がガザの現紛争によって力を失うことがない限り、オバマがハマスとの接触に着手する動きをとることはな考えにくいと語る。
 「ハマスの軍事組織がひどい、ほとんど決定的な大敗北を喫するかどうかにかかっている」と。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/08/barack-obama-gaza-hamas
(1月9日アクセス)

 どうして、こんな話を、「複数の筋」が外国のメディアであるガーディアンにリークしたのか、やっかみ半分でニューヨークタイムスがあれこれ取り沙汰しています。
 なお、政権移行チームは、予想通り、上記ガーディアンの報道を否定しました。
http://opinionator.blogs.nytimes.com/2009/01/09/who-leaked-to-the-guardian-and-why/?ref=opinion
(1月10日アクセス)

 要するに、ブッシュ政権はムチをふるい、オバマ次期政権はアメをちらつかせつつ、イスラエルがハマスを最大限痛めつけるのを見守っている、という図式ですね。
 ハマスの上層部の苦悩がいかほどのものか、察するに余りあるものがあります。