太田述正コラム#3024(2009.1.9)
<日進月歩の人間科学(続々)>(2009.2.21公開)

1 始めに

 今回は、「永遠の恋は存在する」、及び「頭の良い人は健康でもある」、の2点についてご報告しましょう。

2 永遠の恋は存在する。

 「・・・20年間一緒だったカップルと新たな愛人になったばかりのカップルの大脳を、それぞれスキャンしたところ、長期間のカップルの約10組に1組は初期段階の関係にあるカップルと共通の化学的諸反応を示すことが分かった。
 これまでの研究では、男女間の愛の初期段階の、心理学者達がリマレンス(limerence)と呼ぶところの、気分の揺れ動きと執着は、15ヶ月経過すると薄れ始め、10年経過するとこの化学的潮流はすっかり引いてしまうと考えられていた。・・・
 <しかし、>成熟したリマレンス(limerence mature)<とでも呼ぶべきものが存在し、長期間のカップルも>「濃密な連帯感と性的活発さ(intensive companionship and sexual liveliness)」を享受することが可能である<ことが分かったわけだ。>
 研究者達は、このようなカップルに「白鳥達(swans)」という渾名を付けた。<白鳥、ハタネズミ(vole)(コラム#2798、2799)、ギンギツネ(grey fox)は、生涯つがう相手を変えないことで知られている。>
 「白鳥達」に愛する人の写真を見せると、最初の欲望の奔流にからめとられているカップルに一般に見られるのと同様の、快楽を生み出すところのドーパミン(dopamine)の噴出を、MRIスキャンによって確認することができる。・・・
 <12〜15ヶ月、3年、そして有名な7年目の浮気心、といったカップルの分岐点に関する従来の研究結果は必ずしも正しくない、というわけだ。>」
http://women.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/women/relationships/article5439805.ece
(1月5日アクセス)

 「<成熟した>リマレンスは、<初期段階のリマレンスと違って、>不安や<鬱や>緊張を伴わない。・・・
 「白鳥達」は、経験をできるだけ共有しようとし、かつストレスを避けようとする。これは恐らく原因ではなく症候なのだろう。・・・」
http://www.timesonline.co.uk/tol/comment/leading_article/article5439242.ece
(1月6日アクセス。以下同じ)

 「・・・一般に報酬と動機付けに関わるとされている大脳の部位・・これはコカインを用いた時に活発化する部位と同じだ・・が、被験者が愛する人の写真を見せられた時に活発化する。
 この部位は、・・・性的興奮に関わるとされている部位とは異なる。・・・
 情熱的、かつ長期にわたる<男女>関係に関しては、いくつかのこと(下掲)を共通に見出すことができる。・・・

・カップルはひどい「外部からのストレス原因」、例えば戦争とか子供の死、に直面していない。
・少なくともカップルの片方は強度の鬱または不安に陥っていない。
・カップルのどちらも互いにどうやって意思疎通を図ったらよいかを知っている。
・カップルは新たな挑戦的な事柄を一緒にやっている。
・カップルの片方が何かに成功すると、もう片方もこの成功を喜ぶ。
http://www.newsday.com/news/printedition/longisland/ny-liston065988336jan06,0,1041858,print.story

 愛のみならず、恋についても、ここまで科学のメスが入ったわけです。
 永遠の愛は困難であり、永遠の恋はもっと困難だけど、世の中には愛のエリートが存在し、その中に恋のエリートが存在するってわけです。
 しかし、カップルの片方だけがエリートでも永遠の愛、いわんや永遠の恋は成就しないのですから、永遠の愛、就中永遠の恋が成就した人は、宝くじにあたったようなものですね。

3 頭の良い人は健康でもある

 「・・・知力が高い者ほど精子の量が多く質(motility)も高いことが分かった。・・・ 人間の遺伝子の半分は脳の中でつくられることから、頭の良い人間が良い遺伝子を持っていても不思議はない。
 ・・・知力は過去200万年の進化を通じて女性が男性を評価するたくさんの属性のうちの一つである可能性があるところ、最近のある研究では、女性は結婚相手だろうが一晩だけの関係相手だろうが、頭の良い男性を選ぶ傾向があることが判明した。・・・」
http://english.chosun.com/w21data/html/news/200901/200901070001.html
(1月7日アクセス。以下同じ)

 「<まず一番目に指摘すべきは、>知力・・・は遺伝子によってコントロールされているということだ。・・・
 二番目に指摘すべきは、頭の良い人間は、より知力において恵まれていない人間に比べて本来的に健康だということだ。
 そして三番目に指摘すべきは、これは2番目に指摘したことの帰結でもあるのだが、知力には性的魅力があるということだ。・・・
 一般的知力・・・が寿命を含め、個人の健康の様々な側面と高い正の相関関係にあることが分かった。
 この事実についての考え得る一つの説明は、知力の高い人間は、自分の生活をいかに律するかについて、より適切な選択をするということだ。このような人々は、喫煙を余りしないだろうし、健康的な食品を摂取するだろうし、運動もするだろう、等々。
 またこうも説明することができるかもしれない。知力は、全般的な遺伝子によって規定されたところの健康性の一つの現れであると。・・・
 芸術的能力や音楽的能力の形で顕現した知力は、全般的な遺伝的適者生存性(fitness)の信頼すべき指標として、1000年以上にわたって異性陣営のメンバー達から選択されてきた。
 同じつがいの相手を狙う競争相手を退散させ、つがいを獲得する軍拡競争において、知力は、孔雀の尾っぽがそうであるように、誇張されて見せびらかされてきた。
 <逆に言えば、>このような性的淘汰の過程があったからこそ、・・・人間は、より知力に秀でるようになったのだ。・・・
 精子の濃さ(1立米中の精子数)、精子数(射精時の全精子数)、そして精子の質<において秀でていればいるほど、>・・・その人間は、少なくともダーウィン的な意味における適者生存性という意味で、全般的に健康な身体を持ち、つがいの相手をより惹き付け、より子孫を残すことができるのだ。・・・」
http://www.economist.com/science/PrinterFriendly.cfm?story_id=12719355

 日本人の平均IQは世界有数の高さであることからすれば、日本人の寿命もまた世界有数の高さであることに何の不思議もないわけです。
 ということは、日本人と結婚したい外国人は山といるはずなのに、遺憾ながら日本人は据え膳を食わずして日本国内だけでつがいの相手を捜し、更には一夫一妻制を墨守し、婚外子のタブー視を続けているため、日本人の婚姻率も出生率も低迷しています。
 なんとまあもったいないことでしょうか