太田述正コラム#3018(2009.1.6)
<イスラエルのガザ攻撃(続x5)>(2009.2.18公開)

1 始めに

 今回は、以上侵攻におけるイスラエルの巧みな作戦、及びそのこともあって、ガザ住民の民心がハマスから離れつつあることについてご説明しましょう。

2 イスラエルの巧みな作戦

 「2006年の対レバノン攻撃の時とは丸で違って、イスラエル軍は事前に十分準備をしていた。それに彼らはガザを知っている。彼らはガザを2005年まで占領していたのだし、その後も空中から念入りに監視してきたからだ。・・・
 空爆は、ハマスの軍事的行政的中枢を破壊するとともに、衝撃と恐怖(shock and awe)の空気を醸成することがねらいだ。・・・
 <地上侵攻のねらいは空爆で完全には除去できなかったロケットの脅威を完全に除去することだが、>そのもう一つのねらいは、ガザを南北に分断し、南部ガザ、とりわけラファの町を、その唯一の後背地であるエジプトから切り離すことにある。・・・
 このために、アパッチ・ヘリが塹壕破壊爆弾で<密輸>トンネルへの攻撃を続けている。・・・
 イスラエル軍はアラブの都市を模した施設で2年以上訓練を積んできた。これは、ガザで遭遇するであろう都市戦闘の類に備えるためだ。・・・
 しかし、イスラエル軍は都市戦闘に引きずり込まれることを欲してはいないと大部分の軍事アナリスト達は口をそろえる。そんなことになればなるほど、<兵士の>死傷者が出るだけでなく、<兵士が>誘拐される危険性が高くなるからだ。・・・
 イスラエルは、爆撃とそれに続く装甲力の前進は敢行しても、ゲリラ戦闘や都市戦闘は回避しつつ、ロケット攻撃を止めさせること、いやそれが不可能でも、少なくともロケット攻撃を「ほとんど」止めさせることが可能だと思っている。」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/06/gaza-israel-palestine-military-tactics
(1月6日アクセス。以下同じ)

 「<そうは言っても、都市戦闘的なものを全く避けるわけにはいかない。>イスラエル軍は、バリケード封鎖され、要塞化され、かつ罠爆弾(booby-trap)が仕掛けられた地域を、多大の危険を冒しつつ前進している。・・・
 イスラエル軍は、危険に直面した場合、・・・大量の砲弾をバリケード封鎖地域に撃ち込んで撤退する。別の場面では、数次にわたって遠隔地から爆発を起こさせ、ハマスの罠爆弾を誘爆させて除去する。
 こういったやり方は、街全体を破壊することにつながり、軍事標的と一般住民の家とを区別することはできない<が致し方ない>。・・・」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1053121.html

 要するに、イスラエルは、まずもって自分達の兵士の死傷者が出ることを回避しつつ、、次いでパレスティナの一般住民の死傷者が出ることも回避しつつ、地上侵攻を行っているということです。

3 民心が離れつつあるハマス

 「・・・イスラエルの対内諜報機関であるシン・ベト(Shin Bet)の長のユヴァル・ディスキン(Yuval Diskin)は、イスラエルの内閣に対し、イスラエルのロケットから逃げ隠れし、彼らのインフラが破壊されている状況下において、ハマスは<ガザを>支配することが次第に困難になりつつあると語った。
 彼は、参謀総長のガビ・アシュケナージ(Gabi Ashkenazi)中将と軍諜報機関の長のアモス・ヤドリン(Amos Yadlin)少将の援護射撃を受けた。中将は、ハマスの政府で残っているものは「ほとんどない」と語ったし、少将は、「ハマスは深刻な打撃を被った」と語った。そして少将は、「ハマスの支配能力は被害を受け、その指導者達は一般住民を完全に放置し、自分達自身のことしか心配していない」と内閣に告げた。更に少将は、ハマスは国際的にも、また、パレスティナの人々からも次第に孤立しつつある、と付け加えた。・・・
 ダイアナ・ブッツ(前出)・・・は、イスラエルによる攻撃はハマスとの連帯感を一時的には強化したかもしれないけれど、このグループを政治的には弱体化した可能性が高いと語った。
 「ガザの人々は現在攻撃下にあるので、ハマスを支持するだろう。しかし、事態が収まった暁には、我々は随分違った光景を目にすることになろう。果たしてハマスの戦略は正しかったのかという疑問が噴出するはずだ。多大な被害が出たことでハマスを非難するというよりは、果たしてハマスが正しい方向に自分達を導いたのか、という疑問が・・・」と彼女は語った。
 「2002年に(ヤセル・)アラファトが(パレスティナ当局議長公邸たる)ムカタ(mukata)で<イスラエル軍に>包囲された時に起こったことと同じことが起きると私は思う。あの時人々は、「我々は彼を110%支持する」と言った後でアラファトに対して非常に批判的になったものだ。すなわち、数週間後、彼らは、「一体本当にこれが我々が必要としていたことなのか、本当にこれが我々の欲していたことなのか」と回顧しつつアラファトに怒りを向け始めたのだった」と。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2009/jan/06/gaza-israel-hamas

 それぞれ、希望的観測入りではあるでしょうが、ガザ内に濃密な諜報網を持っているイスラエルとPLO関係者の言であるだけに、私は彼らの言を傾聴すべきだと思います。
 以上を踏まえると、次のことは、あきらかにハマスの尻に火が付いてきた現れであると見るべきでしょう。

 「ダマスカスにいるハマスの長がカイロに赴いて状況について議論をすることになった。これは、ハマスがエジプトに大して頭を下げつつあることを示す動きだ。・・・
 トルコ、カタール、サウディアラビアとは違ってエジプト、とりわけ同国の諜報機関の長のオマール・スレイマン(Omar Suleiman)は、ハマスの首脳達の緊密な関係を構築しているからだ。・・・」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1052890.html