太田述正コラム#3000(2008.12.28)
<イスラエルのガザ攻撃(その1)>(2009.2.9公開)

1 始めに

 イスラエルが、ガザを空爆して200名以上の死者を含む、1,000名くらいの死傷者が出ました。
 これは1967年の戦争時以来、ガザに対する最大の空爆です。
 そこで、(現在のイスラエル、ガザ、及びヨルダン川西岸を含む)パレスティナの旧宗主国である英国のガーディアン紙、及びイスラエルのハーレツ紙に拠って、少し詳しくご説明しましょう。

2 欺騙工作

 「・・・ガザ地峡におけるハマス標的に対する「鉛投げ(Cast Lead)」作戦は27日朝から始まった。
 <イスラエル>国防関係者達によれば、欺騙工作(disinformation effort)を行ったおかげで、ハマスに不意打ちを食らわせ、爆撃による死傷者数を顕著に増大させることができたという。
 複数の国防当局筋によれば、<元参謀総長で前々首相の>エフード・バラク国防相は、イスラエル軍にこの作戦の準備に着手するよう、既に6ヶ月前に指示していたという。当時は、イスラエルはハマスと停戦協定の交渉を始めようとしてた頃だ。これらの筋によれば、バラクは、小康状態の間にハマスはイスラエルとの対決に備えるだろうが、イスラエル軍だって作戦を準備するには時間が必要だと主張したという。
 バラクは、ハマスの軍事インフラを、この地峡で活動している他の過激派組織のそれとともに調べ上げるべく、徹底的に情報収集努力を傾注するよう命じた。
 この情報収集努力の結果、恒久基地、兵器庫、訓練場、及び上級幹部や他施設との連絡調整担当者の自宅の場所が明らかになった。・・・
 12月18日、エフード・オルメルト首相とバラクがテルアビブの軍本部で会って作戦の実施を決めた。
 ただし、その時点では、休戦期間があけた後、ハマスが攻撃を控えるかどうかを見極めることとした。よって彼らは、この作戦の計画を閣議にかけるのを延期し、<最大与党カディマの党首であり次の首相候補である、女性の>ティピ・リヴニ外相にだけ情報を伝えた。・・・
 結局閣議は24日に開催された。しかし、首相府はメディアに対し、この閣議は世界の<イスラム>聖戦運動に関するものであるとウソの発表を行った。
 閣僚達が、閣議の目的はガザでの作戦であることを聞かされたのは、その日の朝だった。・・・
 閣議の最後に、閣僚達は全会一致で攻撃に賛成票を投じたが、同時に、首相、国防相及び外相に攻撃開始の具体的時期の決定を委ねることにした。
 バラクがこの作戦の担当者達と最終的に細部をつめている間に、リヴニはカイロに赴き、エジプト大統領のホスニ・ムバラクにイスラエルがハマスを攻撃することに決したことを伝えた。
 これと平行して、イスラエルは、欺騙工作を続け、ガザ地峡への関門を開けることと、オルメルトが27日・・実際に攻撃開始を命令した日の翌日・・に三回閣議を開いて攻撃を行うかどうかを決める、との声明を発出した。
 「ハマスは、24日の閣議の後、本部の要員を全員避難させたが、27日までは何も決まらないと聞いてこれら要員を復帰させた」とイスラエルの国防関係者は語った。・・・
 26日の夜と27日の朝、野党の指導者達と著名な政治家達・・野党第一党たるリクード党の党首の<元首相の>ベンヤミン・ネタニヤフ・・・<らと>大統領のシモン・ペレス、国会議長のダリア・イツジク・・にこの攻撃が間近であることが知らされた。」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050426.html
(12月28日アクセス。以下同じ)

3 作戦目的

 「・・・<今回の作戦の担当者は、>ガザ地峡のハマス体制を攻撃することで、イスラエル軍は、「自軍の死傷者数を最小限に抑えつつ、敵に最大限の死傷者数をもたら」しつつ、武器能力の点で「ガザを何十年も過去に戻」そうとしている<と語った。>・・・。
 ハマスの戦闘員は数千人にのぼる・・・。「イスラエルが待てば待つほど、ハマスは能力を集積し発展させ、イスラエルがハマスに対して有する相対的優位を減少させてしまう」<というのだ。>・・・」
http://www.haaretz.com/hasen/spages/1050434.html

 「・・・2005年にイスラエル軍の兵舎と集落が<ガザから>撤去された後、7,000発<のロケット>が近傍のイスラエルの町々に向けて<ガザから>発射された。2001年にガザの過激派がロケットを発射し始めてから、この27日までの間に、イスラエル南部の町々の一般イスラエル人が16人殺された。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/28/israel-and-the-palestinians-middle-east2

 「・・・<開戦までの>この3日間で、ハマスは近傍のイスラエル南部の町々に36発のロケットを撃ち込んだ。うち30発は24日に発射され、貯水場、家、工場にそれぞれ一発ずつあたった。しかし、大きな負傷者は出ていない。残りは野原に落ちた。70発の迫撃砲弾も発射された。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/27/israel-nationalism-beiteinu-likud-gaza

 「この攻撃は、・・・エフード・オルメルト首相が、一週間ちょっと前までかろうじて続いてきた<ハマスとの>停戦期間が終わってから再開されたところの、<ハマスによるガザからの>イスラエルへの越境ロケット攻撃に対する報復を拡大するために決断したものだ。・・・
 イスラエルのティピ・リヴニ外相は、25日にカイロで、イスラエルは、<ハマスによる>攻撃が継続することを「看過することはできない」と警告を発した。・・・
 26日にイスラエルはガザへの関門を開け、燃料、食料、及び人道援助物資の搬入を認めた。・・・
 イスラエルの軍事アナリストのロン・ベンイシャイ(Ron Ben-Yishai)は、この空襲を「イスラエルにとって有利な条件でハマスとイスラエルとの間の長期的停戦を確保するという限定的なねらいを持った動きである」と説明した。
 近々総選挙が行われるので、イスラエルとしては、自軍の死傷者が出るのを極力避けたいがゆえに、絶対的な優位がある空軍力を用いたということだ。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/28/israel-and-the-palestinians-middle-east1

4 イスラエル世論

 「・・・<イスラエルでの世論調査によれば、>20%がガザの再占領を支持し、27%が<ハマス要員の>暗殺を再開すべきだとし、18%が短期間の軍事攻撃を欲している。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/27/israelandthepalestinians1

 「<また、別の>世論調査では、右派のベンヤミン・ネタニヤフが中間派のリヴニのカディマ党に2月の総選挙で勝利する可能性が高いことを示している。・・・」
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/28/israel-and-the-palestinians-middle-east1上掲

(続く)