太田述正コラム#2995(2008.12.25)
<日進月歩の人間科学(続)>(2009.2.5公開)

1 始めに

 今回は、人間科学の、既に学会の常識になっているけれど、我々が(、少なくとも私は、)余り耳にしていない話と、最新の話とを一つずつしましょう。

2 「人種」とスポーツ能力

 「・・・ACTN3は筋力の発揮速度を司る遺伝子だ。・・・
 ACTN3は、二種類の変体(variant)を持つ。RとXだ。
 <組み合わせには、XX、XR、RRがあるわけだ。>
 大まかに言うと、X変体に比べてR変体を沢山持つと力と速度を必要とするスポーツに秀でる可能性が高くなる。・・・
 7年前に・・・出版されたデータによれば、X対立遺伝子(allele)の相対的出現率が、アジア人は0.52、欧州白人は0.42、アフリカ系米国人は0.27、アフリカ人は0.16だ。
 更に細かいデータを見ると、XX遺伝子型(genotype)の出現率が、アジア人は0.25、欧州白人は0.20、アフリカ系米国人は0.13、アフリカのバンツー人は0.01だ。逆にRR(速度と力の遺伝子型)の出現率が、アジア人は0.25、欧州白人は0.36、アフリカ系米国人は0.60、アフリカのバンツー人は0.81だ。
 アジア人の間では、XX対RRは1対1、白人の間ではほぼ1対2、アフリカ系米国人の間では1対4以上だ。
 従って、他の条件が一定ならば、この遺伝子が、アフリカ人とアフリカ系米国人が速度と力のスポーツの最も高いレベルにおいて、非常に多く見いだされる結果をもたらすであろうことが分かる。・・・
 結論的に言えば、ACTN3単独で予見できることからして、NBAでは黒人が約2倍の割合で多数を占めることが予想できるわけだ。もとより、その他の要素、すなわち文化、資源、異なった扱い、ほかの遺伝子等々だって無視するわけにはいかないが・・。
 だから、世界人口の50%を占めるというのに、・・・アジアからは著名な短距離走者は出ていない。100メートル走で白人の走者を見いだすことはない。白人の最高記録は10秒だが、これはこれまでの全記録で200番にも入らない。…過去4回のオリンピックでの男子100メートル走のファイナリスト32名は、すべて西アフリカ系だ。
 こんな結果になる確率は、西アフリカ系の黒人で世界中に住んでいる人々を全部合わせても世界人口の8%にしかならないことからすると、0.0000000000000000000000000000000001%だ。
 ・・・ちなみに、西アフリカ系が短距離走の世界を支配しているが、東アフリカ系が遠距離走ではそれ以上に活躍している。・・・」
http://www.slate.com/id/2206088/
(12月5日アクセス)

3 ウソと人類

 「・・・類人猿(primates)の比較調査の結果、・・・大脳の大きさと陰険さ(sneakiness)は直接的な関係があることが分かった。特定の類人猿の大脳新皮質・・大脳の最も「高度」な部位・・の平均的大きさが大きければ大きいほど、その類人猿は・・・次のようなことをよくしでかす。
 怒った母親が罰するべく追いかけている若いヒヒが、突然立ち止まり、わざと地平線を眺め回す。これは、ヒヒの群れ全体を、実際には存在しない侵入者に対して警戒させることで、母親の自分への注意をそらす行為なのだ。・・・
 <別の研究によれば、>大学の学生達は一日平均2回ウソをつくのに対し、大学の周辺住民は1回ウソをつくことが分かった。もっともウソとは言っても、大部分はたわいのないものだが・・。・・・
 <ところで、>これまで行われた100以上の研究で、研究者達は、例えば、ビデオを見せてある人物がウソをついているかどうかをあてさせたところ、実験対象者達の正答率は54%程度であり、硬貨を投げて答えを決めるのと大差ないことが分かっている。
 このように人間は、ウソを見抜くことができないことから、研究者の中には、人間にはだまされることへの欲求がある、つまり、赤裸々な真実より、かっこよく装ったおとぎ話の方を好む欲求があると考える者がいる。・・・
 <人間を除く>霊長類(Great Apes)は、偉大なるウソつき(faker)だ。・・・捕らえられたチンパンジーやオランウータンは、見知らぬ人間を自分達が囲われている場所へおびき寄せることがある。藁を差し出し最も親しげな顔つきをして・・。
 ・・・「人間は、おや、奴はオレが好きだから、ああいう仕草をしてるんだなと思う」というわけだ。「<こうして近づいた人間の>膝をつかみ、噛みかかる。実に危険な状況になる。」
 類人猿は、こんなことを同類に対しては決して試みない。・・・「奴らはお互いによく知っていてそんなことにはひっかからないのだ」というわけだ。「藁を差し出し最も親しげな顔つきをするなんて単純な手にひっかかるのは、根っから純真である(naive)ところの人間だけだ。」
 <類人猿は、お互いには、もっと複雑なだましのテクニックを使いあう。>
 恐らく、人間は根っからのとんま(sucker)な生物である、と言ってもよかろう。・・・」
http://www.nytimes.com/2008/12/23/science/23angi.html?pagewanted=print
(12月24日アクセス)

4 終わりに

 前の方の話は、遺伝子の違いによるわけではあっても、要するに、平均的人種の間には身体能力において大きな違いがあること、だから、それ以外の能力においても大きな違いがあっても不思議ではないこと、を示していると言えるでしょう。
 これは、我々の常識に合致する話です。
 後の方の話は、ある意味ショッキングです。
 平均的知的能力が一定レベルを超えた高い種と種同士では、知的能力が高い種ほどより純真でだまされやすい、ということが、同じ人間同士でも言えそうだからです。
 高度な文明が蛮族によって滅ぼされる、という歴史を人類が繰り返してきた理由はここにあるのかもしれませんね。
 また、知的エリートばかりの組織や社会は脆弱である、ということも言えるのかもしれません。
 更に、知的レベルがそれほど高いとは思われない麻原彰晃が、高学歴のオウム真理教の幹部達をだまして意のままに操ったり、同じく知的レベルがそれほど高いとは思われないヒットラーが、知的レベルの高いドイツ人官僚達や軍人達をだまして意のままに操ったりした事例も思い出しますね。