太田述正コラム#2965(2008.12.10)
<ムンバイでのテロ(続々)(その2)/お知らせ>(2009.1.22公開)

 (2)ムンバイのテロとは何か・・再確認

 米アトランティック誌の記者兼新米安全保障センター上級研究員(senior fellow at the Center for a New American Security)は、ニューヨークタイムスに次のようなコラムを寄せています。

 「我々が冷戦時代に行っていた地域区分は、ムンバイのテロ攻撃のおかげで崩壊した。
 我々は、今後は南アジアを中東と異なった地域とは見ないことになるだろう。地中海からミャンマーのジャングルまでを連続した一つながりとして、そしてそこで西におけるイスラエル--パレスティナ紛争から東におけるヒンズー--イスラム紛争までを隣通しの相互にからみあったものとして、見ることだろう。
 しかし、この引き延ばされた拡大近東は、新しい何物かというよりも古い何物かを思い起こさせる。・・・
 民族的宗教的分断について、民主主義が長らく蓋をしてきたが、その根は何世紀も昔に遡るところ、近年新しい憎しみという形でそれが再発明されたと言ってよいからだ。
 犯人はグローバル化だ。
 ジャワハルラル・ネールの国民会議派の、欧米の植民地主義の拒否を軸に構築された世俗的ナショナリズムは、次第に過去のものとなった。躍動的なインド経済がより広い世界と融合するとともに、ヒンズー教徒とイスラム教は、それぞれ別個に、味気ないグローバルな文明の中に居場所を見つけるために、根っこ探しを始めたというわけだ。
 すなわち、マスコミの発達は、無数の地域的差異を乗り越えて画一的かつ極端なヒンズー主義を生み出した。他方、経済的に差別されてきた<インドの>イスラム教とはイスラムの世界共同体の一部に次第になりつつある、というわけだ。・・・
 聖戦主義者達は、パキスタンを破壊したいだけではない。彼らはインドもまた破壊したいのだ。彼らの目から見たインドは、彼らが憎むところのすべてなのだ。ヒンズー教で、この上もなく自由で民主主義的で、本当のところは、そしてこのところ益々、親米的であって、イスラエルと軍事的に親密だからだ。
 米国政府にとって、イラクからアフガニスタンへと兵力を移動することでパキスタンを混沌から守るといった単純な話ではない。我々が関わりを持っているのは地域の全体なのだ。だからこそ、聖戦主義者達にとってインドに対する9.11級の攻撃という発想は素晴らしいと言っておこう。
 2007年の初めの頃のイラクの混沌が、レバノンからイランにかけてのオスマントルコ・システムの脅威となったように、パキスタンに忍び寄りつつある無政府状態は、アフガニスタンを突き崩すだけでなく、インド亜大陸全体を突き崩しかねない。・・・
 ・・・<ムンバイの>テロリスト達がハイジャックした漁船でたどった経路、すなわちインドのグジャラート(Gujarat)州ポルバンダル(Porbandar)から北方へパキスタンのカラチへ、それから南方へ<再びインドの>ムンバイへ、という経路は、何世紀も前からのインド洋の商業経路をなぞったものだ。・・・
 パキスタンの諜報諸機関は、インドに対する戦略的後方基地として、急進的イスラム化したアフガニスタンを欲している。それに対し、インドは、パキスタンに対する武器として、穏健で世俗的なアフガニスタンを欲しているのだ。・・・」
http://www.nytimes.com/2008/12/08/opinion/08kaplan.html?_r=1&ref=opinion&pagewanted=print
(12月9日アクセス)

3 パキスタン政府の決断?

 「<パキスタンの治安部隊は、12月7日、パキスタン側のカシミールの首都であるムザファラバードの郊外にある、ラスカレタイバの基地を急襲した(コラム#2961)ところ、そこで>22名を逮捕した。
 その中には、インド当局から血生臭いムンバイのテロの主犯達であると名指しされた5名のラスカレタイバ構成員のうちの一人、ザキ・ウルラーマン・ラクフィ(Zaki ur-Rehman Lakhwi)が含まれている。・・・
 ホンネでは、パキスタンの上層部の何人かの役人達は、インドが示唆しているように、今回のテロがパキスタン内で計画された可能性が高いことを認めている。・・・
 <急襲された>基地は、現在ジャマート・ウド・ダワによって運営されている。この団体の構成員達は、自分達の活動は厳格に慈善目的であり、武装テロリスト団体とは関わり合いがないと主張している。しかし、米財務省は、2006年にジャマート・ウド・ダワの資産を凍結し、この団体を世界的テロリスト組織に指定した。・・・」
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/08/AR2008120800331_pf.html
(12月9日アクセス)

 この急襲は、パキスタン政府が、イスラム過激派との本格的な戦いを開始した証と考えていいのでしょうか。

 「ラスカレタイバの主要基地はラホールのムリドケ(前出)だが、そこは急襲されなかった」とニューデリーの・・・分析者は語った。「私は、これが<パキスタンの>大きな動きだとは思わない。急襲した目的は、インドの行動に先手を打ったということに過ぎないのではないか」と。 
 他方、パキスタン内では、宗教右派<の諸政党>がムザファラバードでの急襲を激しく非難している。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/dec/09/pakistan-raid-mumbai-terror-attacks(12月9日アクセス)

(続く)
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≪お知らせ≫

 本日夕刻、「太田総理・・」への出演が本決まりになったのですが、夜、次のようなやりとりが日テレ側とありました。

<日テレ>

 ・・・15日(月)よろしくお願いいたします。
 今回は、年末スペシャルバージョンで、「証人喚問」と称して、今年1年の事件や出来事を振り返り、その内、いくつかの出来事の関係者にスタジオに来ていただき、太田光総理率いる「太田内閣」の面々がお話を伺ってまいります。
 太田様には「官僚たちの居酒屋タクシー問題」を中心に、官僚たちの度重なる不祥事について、お話していただきたく思います。
・・・
 当日の出演者ですが、

<中略>

・居酒屋タクシー問題〜太田述正様の他に 岸博幸(元経産省) 中野雅至(元厚労省)

<中略>

・懸賞論文問題〜田母神俊雄

<中略>

 以上の予定です。
 放送日は12月26日(金)19時より20時54分の予定です。

太田様への考えられる質問としては
・「居酒屋タクシー」官僚時代にすでに有ったのか?
・わざとその時間まで残って、タクシーを使うことはあった?
・ぶっちゃけ、官僚当時、最大どれくらいタクシーを使っていた?
・「居酒屋タクシー」以外で接待を受けたこと(または、実際にあった話)は有る?
・今回のことで、現在省庁に残っている「元仲間たち」は変わった?
などを想定していますが、これ以外のことも質問が出るかもしれません。
・・・

<太田>(以下、電話)

 「居酒屋タクシー」のところに出ることも、むろんやぶさかではありませんが、田母神さんが出るのなら、私はそちらに出してもらった方が、視聴者にとっては絶対面白くなると思いますがね。

<日テレ>

 実は企画段階でそういう話もありました。
 太田さんは、当然田母神論文はお読みになっているのでしょうね。

<太田>

 もちろんです。
 ミニTV局で田母神問題で出演したこともあります。
 私は田母神さんと学年的には同じだけど、彼との接点は防衛省時代にありませんでした。
 しかし、防衛大の総務部長や内局の教育課長もやっており、私は田母神問題では、日本で一番の権威じゃないかな。

<日テレ>

 あの論文についてはどう思われますか。

<太田>

 全く評価していません。

<日テレ>

 政府の方針に反するものを書いたのがけしからんということですか。

<太田>

 いや、それ以前の問題です。
 ただ、そんな私と「証人」席で並ぶというのでは、田母神さん、かわいそうかもしれませんがね。

<日テレ>

 一応、明日スタッフと相談した上でご返事さしあげます。