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太田述正コラム#2909(2008.11.12)
<「桜」TVでの田母神問題収録記>(2008.12.20公開)

1 始めに

 コラム#2908に書いたような次第で、表記の収録にあたって、私としては、言いたいことはおおむね言えたものの、議論がかみあわず、途中、げんなりとした顔をしてしばらく沈黙を守った時がありました。

2 収録のおおまかな様子

 読者のご協力を得てつくったフリップ(プリントアウトとパネル板への装着は「桜」のスタッフが実施)6枚を用意して収録に臨み、最後の1枚をを除いて全部使って話をしました。
 他にフリップを用意したパネリストはいなかったこともあり、効果は大いにあったのではないかと思います。
 予想したとおり、私以外のパネリスト5人と司会者の水島氏は、私と違って田母神氏寄りのスタンスでした。
 しかも、潮氏を除いて、全員、田母神氏の「論文」の内容については、少なくとも基本的に問題なし、とする見解をお持ちでした。
 ただし、潮氏が「論文」内容に批判的であったと言っても、典拠の付け方の恣意性と付けた典拠の非妥当性、そして内容に独創性なし、という指摘に過ぎず、内容そのものには異存なし、というものでした。
 私は反論として、既にこれまでのコラムで述べたことを繰り返したほか、次のような趣旨のことを話しました。

 「村山談話はあくまでも政治的文書であるところ、その後も政府が踏襲してるわけだが、一方、田母神氏が「論文」を発表したのも政治的行為。
 田母神氏が、「論文」内容が村山談話に抵触しないとか、馘首されるのは不満だとか、こんな大騒ぎになるとは思わなかったとか言っていることには呆れるほかない。また、ご本人はそこまでは言っていないが、今回の騒動の結果、自衛官の教育が政府方針に忠実な硬直化したものにされかねないことだってもちろん予想していなかったと思われる。
 現在の、しかもご本人の一身にもかかわることで、こうもご自分の行う政治的行為の結果が予測できなかった人物、つまりは全く情勢判断ができない人物、究極のKYの何乗みたいな人物、の提示した過去についての歴史認識など、まともなものであると思う方がおかしい。」

 私が、この点より更に違和感を覚えたのは、皆さんうちそろって、自民党にがっかりした、中でも「タカ派」だったはずの麻生首相と浜田防衛相にはがっかりした、結果、全政党が自衛隊の「敵」に回った的な言い方をされたことです。
 私からは、「吉田ドクトリンの下、1955年以来はいわゆる55年体制の下、自民党と社会党はどちらも吉田ドクトリン墨守勢力として役割分担をしていたに過ぎず、その体制が、村山氏を首相にいただいての自民党と社会党(社民党)との公式の野合を経て、現在に至っているということであり、今更自民党にがっかりしたでもなかろう」と申し上げました。
 これにも関連し、これまた皆さんうちそろって、主要マスコミ批判をされる。
 産経までもが批判的な論調をとっているとか、田母神招致の国会でのやりとりの際の某TVの田母神氏を撮るカメラアングルがけしからんといった話が出たわけです。
 これに対しても私から、「主要マスコミも政官業の癒着構造の片割れを担いでいるのであり、今更何を愚痴っているのだ」と反論しておきました。

 今後どうすべきかについては、とにかく、どうして皆さんが願い続けて来たことがいつまで経っても実現しないのかに思いを致すべきだ。それは、戦略が間違っていたからだと自覚しなければならない。自分の本が9月には光人社から、10月には金曜日から出たけれど、「左」だって「右」と同じ穴の狢なのだから、私のように「左」にウィングを伸ばそうと心がけるべきだ、この番組のパネリスト中私が一番「左」だというのはいかがなものか、といった趣旨のことを話しました。
 そして、

 「最大の敵は、憲法改正とか口先だけで唱えながら、ただただ権力を維持せんがため、自民党内の「ハト」派と野合してきた「タカ」派、そして、一時社民党との野合も許容した「タカ」派であるという認識を持たなければならない。
 もう一つ大切なことは、ダメな仲間をかばわないことだ。
 今回のことで言えば、田母神氏をかばってはならない。
 そうしない限り、ほかのまともなことをいくら言っても信用されないだろう。
 更に言えば、田母神氏もそうだが、他人のことばかりあげつらわず、まず、自分のやるべきことをきちんとやるべきだ。
 この中で、ブッシュの日本に係る妄言を批判してきた人はいるのか。」

といった趣旨のことを話しました。
 これに対し、佐藤氏が、軍隊というものは、就中航空自衛隊というところは、指揮官以下が一致団結するものなのであって、そこが民間の普通の組織とは違うところだ、だから仲間を庇うのは当たり前だ、と言ったのには唖然としました。

 私からは、
 「OBになったら、もっと自由にモノを言ってもらわなければ困る。
 自衛官OBも内局のOBも言うべきことを言わなさすぎる。
 だから、私は天下りを廃止しなければならない、と力説しているのだ」と言葉を返しました。
 その際、「佐藤氏らは天下りをされていないが」
と付け加えました。

 (収録終了後、佐藤氏は、退官後、最初は天下りを辞退していたが、その後、ある会社の仕事を空自から斡旋されてしている、と正直に打ち明けられました。)

 収録終了後、私から司会でかつ「桜」TVトップの水島氏に、『属国の防衛革命』と『実名告発防衛省』を贈呈しておきました。

3 終わりに

 何とも「右」の人々との話は疲れます。
 「左」の人々と話をした方が、はるかに話がはずむってのは悲しいことですね

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