太田述正コラム#2976(2008.12.16)
<皆さんとディスカッション(続x337)>

<やいち>

 実名告発防衛省を読みました。
 印象に残りましたのは、86ページ87ページ240ページ241ページです。

 また、1連の田母神報道と合わせて、
1. 自衛隊は、ボトムアップ
2. 制服組(自衛官)は、右翼
3. 背広組(文官)は、左翼(内局と自衛官は、仲が悪いから)
と言う認識を持ちました。

 新聞に「防衛省組織改革の基本的考え方」が出ていました。
 「文官と自衛官はそれぞれ専門的知識や経験があり、内局、統合幕僚監部、各幕僚監部で両者が混在し、協働することが全体最適のために必要。」
と書いてあります。
 ボトムアップですから、このレベルが、大体のことを決めるのでしょうから、違う意見が明確に、存在するためにも文官と自衛官は、混在しないほうがいいと思いました。
 田母神氏が太田氏と一緒になって、現実の政治および外国との交渉をやっていけば視野も広がり考え方も変わってくるとは思えませんでした。
 今は、内局が幕僚の上になっているので、並列でいいと思いました。

 1.2.3.の認識について書いてみます。 
 自衛隊がボトムアップというのは、びっくりですね。
 先の日本軍もボトムアップで、その結果またボトムアップの組織ができたということは、ボトムアップを最適にすることを考えるしかないように思います。
 わが社もボトムアップですから、根回し調整で、決まるのに、時間かかります。
 ボトムアップですから、時間かかるのはしょうがないです。

 Youtubeの桜を見た感じですと、田母神氏の考えは、個人的な考えではなく、幹部自衛官だった方に共通していました。自衛官の大勢なのでしょう。
 NHKのクローズアップ現代では、防衛大学校長とタイに留学した防衛大の学生とが懇談していました。学生は、現地の学生に何を守るのかと聞いて「まず、国王を守る」と誇りを持って答えたことに共感していました。校長は、広い視野を持つ必要性を忠告していました。校長は、その忠告が学生に届くと思っているんだろうかと、届きそうにないなと言う感想です。基本的に、武力集団に入っていこうとしているわけなので、元々勇ましい考えを持って入ってきて不思議はないのです。さらに、防衛大学に入るわけですから目的意識、思想信条も普通の大学よりは明確になって入るのではと思います。その内容は、右翼が多いという印象です。勇ましい左翼の自衛官というのも考えられると思っていたのですが、一連のTVでは、左翼の自衛官は居そうにないという感じを持ちました。左翼は政権転覆を考えるから排除するような思想検査でもあるのでしょうか。
 田母神氏の話しでは、村山談話では、自衛隊員の士気が上がらないというような内容のところが印象に残りました。これにに対し小林節慶応大学教授は「わが国がかつて重大な失敗をしたという事実を直視することは大切で、それをしたからといって、その故に自衛隊が戦えなくなることなどあるまい。つまり、この自由で民主的で平和な日本を守る崇高な任務のために隊員の力が出ないはずはない。」と書いてます。
 しかし、これが田母神氏に届くように思えませんでした。中国の反日教育の成功を見ると、やはり恨みや被害者意識の方が、力が出るのだということを田母神氏は言っているのだと思います。武力集団ですから、力が出ないと困りますし、精神的なものですが、右翼の心情には、特に大切なことのように言われます。
 田母神氏は内局が嫌いと言っていました。OB自衛官も同様に内局が嫌いそうでした。太田氏がいなくても、嫌いなのですから、内局は左翼であると思う次第です。

<太田>

 ボトムアップじゃまともな軍隊たりえません。
 まともな軍隊を持とうと思ったら、トップダウンの組織にしなければならないのです。
 なお、ボトムアップというのは、日本型経済体制における意思決定システムであり、つい最近まで、日本の大組織がことごとくボトムアップであったのは不思議ではありません。
 また、自衛隊がボトムアップだと言っても、濃淡があります。
 内局、陸上自衛隊はボトムアップですが、海上自衛隊はトップダウンです。
 狭い艦内に多人数が押し込まれ、長期間にわたって航海し、訓練するわけですから、トップダウンじゃないと秩序が保てないからです。
 航空自衛隊は、以上の中間だと思えばよろしい。

 また、自衛官は右翼、内局は左翼だという印象を持たれたとすれば、それは間違いです。
 そもそも、軍事に関心を持ったり、軍事に携わろうとするから右翼、国王を守ると言うから右翼、という発想はおかしい。
 そんなこと言ったら、イギリス人は全員右翼だ、ということになってしまいますよ(注)。 

 (注)ただし、米国に関する以下を参照。
・・・I noticed that posts on right-leaning <internet> sites often employed military lingo -- habits of developing monikers and jingles and of using the vocabulary of military tactics and strategy. Left-leaning sites, in contrast, mostly lacked any easily recognizable features of military language.・・・
・・・the map of military service since 1973<(end of the draft)> aligns closely with electoral maps distinguishing red from blue states.・・・
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/14/AR2008121401815_pf.html
(12月16日アクセス)

 ついでに言うと、日本国憲法の政府解釈の遵守を唱えれば左翼、憲法改正ないし解釈変更を唱えれば右翼、というわけでもありません。
 そんなこと言ってたら、自民党の「ハト」派閥(山崎派、宏池会系、平成政策研究会(旧経世会)等)所属議員は全員左翼だ、ということになってしまいますよ。
 私は、日本、とりわけ戦後日本では、左翼と右翼という言葉自体が意味を失っていると考えています。だからこそ、私は「左」、「右」というカギ括弧つきの言葉を用いているのです。
 (「ポリティカルコンパス」(下出)は読んでおりません。スミマセン。)

 なお、TVに出てくる自衛官OBはみんな田母神氏擁護論をぶっている、というわけでもありません。
 例えば、航空自衛官OBである森本敏氏は、批判論を展開しています。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/081205/stt0812050323000-n1.htm
(12月6日アクセス)
 いずれにせよ、これは不思議でも何でもありません。
 皆さん、多かれ少なかれ出身組織のヒモつきなのであり、それぞれの出身組織の考え方に忠実なだけなのです。
 皆さん、まことに義理堅いですねえ。
 自衛官OBは、内局にルサンチマンを抱いている陸海空自衛隊の考え方を代弁し、森本氏は、航空自衛隊よりも外務省により多くお世話になったので、防衛省をバカにしつつ潜在的競争相手として警戒しているところの、外務省の考え方を代弁しているってことです。

 蛇足ながら、森本氏の論調を批判しておきましょう。

 「我々が心得べきことは、大戦に至る数十年、日清・ 日露戦争で勝利した奢(おご)りから軍の独善が進み、国家は「軍の使用」を誤ってアジア諸国に軍を進め、多くの尊い人命を失い、国益を損なったことであ る。これは日本が近代国家を建設する過程での重大な過誤であり、責任は軍人はもとより国家・国民が等しく負うべきである。この過誤を決して繰り返してはならない。」

→この限りにおいてはその通りだが、当時の北東アジアで、より重大な過誤を犯した米国、中国国民党、ロシア(及び中国共産党)をどうしてくれる?(太田)

 「戦後半世紀、文民統制に大きな疑惑が起きなかったのは、この間の先人の自己抑制努力によるものである。今回の論文によって文民統制への信頼性を失ったとすればその責任は大きい。」

→空疎な「文民統制」なる言葉を用いるのは止めよう!(太田)

 「立法府こそ堂々と歴史認識を論議すべきである。」

→立法府は、歴史認識を論議する場ではない!(太田)

 ああ、忘れるところでした。
 どういうわけか、私は役所時代に海上自衛隊とのご縁が陸上自衛隊や、特に航空自衛隊に比べて深く、内局防衛課(当時)時代の仕事相手の、海幕防衛班の佐久間1海佐と岡部1海佐は後に、それぞれ統合幕僚会議議長と海上幕僚長になりましたし、私は二度防衛白書の編纂に携わったところ、二度とも自衛官スタッフのトップが海上自衛官であり、最初の防衛白書の時の石川2海佐は後に、統合幕僚会議議長になりました。(全員が防衛大卒です。)
 こういう人々・・皆さんリベラリストでしたよ・・との対話を通じて、私の安全保障観が形作られたのです。
 内局を文官と自衛官の混成組織にするのは早ければ早いほどいい、と私は以前から切に思っています。

<天気輪>

 私は普段TVはほとんど視聴しないのですが、コラム#2975(未公開)の太田総理出演記を拝読し、これは是が非でもこの番組<(26日放送)>はチェックしなければなるまいと思いました。

 収録後の他の出演者の反応が実に興味深いですね。
 しかし、太田様の著作やコラムを読んだことが無い方には属国論(「属国」という言葉に先ずカチンと来てしまうのかも知れません)には抵抗があるんでしょうか。

≫日テレが・・・ 少しは、私がまくしたてたところを生かしてくれることを期待したいですね。(コラム#2975。太田)

 本当に見物です。
 私がTV出演の太田様を見るのはリアルタイムではこれが初になるでしょうから。

 「テレビには出るだけの価値がある。ビジネスを促進したり守りを固めたりするうえで、これは最も強力な手段である(しかも、当然ながら当人のためになる)。だが、テレビ出演ははたで見るほど楽ではない。…」
            1989年 マーク・H・マコーマック(IMG社元会長)
SUCCESS SECRETS(邦題:一人前から一流になる秘訣 ダイヤモンド社 1990、226頁)

 まさしく「ショー・ビジネス」。
 私…すべってますね。
 (しかし最後の抵抗としてこれだけは記しておきます。
 上記のマコーマック氏の著書は、邦題がベタではありますがなかなか有意義でした。
 該当ページの小タイトルはずばり「テレビ出演を成功させる法」です)。

<太田>

 何はともあれ、私をたびたび出演させてくれた讀賣系TV局(讀賣テレビと日本テレビ)には敬意を表したいと思います。
 来年は、讀賣系活字媒体にも期待したいところです。

<蜃気楼>

 『防衛庁再生宣言』を読了しました。
 まさに「日本再生宣言」というべき素晴らしい内容でした。
 本著に対して最大限の敬意を表したいと思います。

 私は基本的にオピニオン誌は読みません(たまに図書館で「諸君」の兵頭氏コラムのみまとめ読みする程度です)が、さすがに目次は目を通します。
 いわゆる保守系の雑誌からすれば「防衛庁再生宣言」出版以後は、太田様の持論こそ本流たりうる「大統一理論」ではないかと思うのですが、
 私の知る限り、太田様の連載コーナーが見当たらないどころかコラムや対談でその論考が頻繁に取り上げられないというのはまったく理解不能、謎中の謎です。

 『実名告発 防衛省』も拝読しましたが、「右」からの単著出版の道も見捨てることなくご検討いただきたいと思います。書き下ろし共著もまた。
 既存メディア・言論人はともかく読者の傾向としては「右」の方が「左」の方よりよほど誤解の余地なく太田様の論旨に納得するのではないかと思うからです。

 (ちなみに私の立ち位置はアバウトですが、コラム#2924(2008.11.20)で、海驢様ご紹介のポリティカルコンパス
http://sakidatsumono.ifdef.jp/political-compass.html
によれば「保守右派: 政治的な右・左度2、経済的な右・左度1.3」です。
 太田版ポリティカルコンパスを作って定期的に読者層分析をしたら面白いのではないでしょうか。大変興味があります。)

 私は遺憾なことに『属国の防衛革命』で初めて太田様を知り、遅まきながら10月から会員登録して現在に至っております。
 登録前の過去コラム精読は未だ#129までですが、質量ともに脱帽です。
 有料とは言いますが、これだけの内容に加えて、他の読者の反応と太田様のやりとりまで楽しめるというのは破格です。
 残り全てに目を通した後、太田様への自分の評価がどう変容するかも今から楽しみです。

<太田>
 
 拙著をすべてお読みいただき、まことに恐縮です。

 「大統一理論」とは言い得て妙ですね。
 もっとも、「大統一理論」はまだ完成していなかったですよね。
 私への叱咤激励と受け止めさせていただきます。
 
 「右」の雑誌への登場、「右」の出版社からの単独著出版は望むところです。
 彼らが躊躇しているのは、私の主張によって、「右」が失うものの方が、「左」が失うものよりも大きいからだ、というのが私の認識です。
 勇気を出して一歩足を踏み出して欲しいものです。

<michisuzu>

 コラム#2899「オバマ大統領誕生(続々)」を読みました。

>ヒスパニック・黒人・女性・若者の弱者連合がオバマを大統領に押し上げたってことです。それにしても、中年以上の白人の男性は度し難いですね。そして、キリスト教も。

 まったく同感です。
 キリスト教やイスラム教は人類にとって幸福を与えるよりむしろ争いを招いているとしか思えません。
 仏教が特に優れているとは思えませんが、キリスト教とイスラム教の教義には相当瑕疵があるのは間違いないですね。

<太田>

 コラム#337を読んでご覧なさい。

 本日ご紹介する記事は一つです。
 シンセキ神話を打ち砕くコラムがワシントンポストに載っていました。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/12/14/AR2008121401812_pf.html
(12月16日アクセス)
 真理は中間にあり?
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太田述正コラム#2977(2008.12.16)
<靴を投げつけられたブッシュ>

→非公開