太田述正コラム#2899(2008.11.7)
<オバマ大統領誕生(続々)>(2008.12.16公開)

1 始めに

 一昨日、昨日同様、本日もオバマの大統領誕生に関する英米の報道の紹介を続けます。

2 英米の新聞記事

 ジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson。1941年〜。何度か大統領選に立候補した黒人(太田))は、<大統領選があった>火曜日までオバマを憎んでいた。オバマは奴隷の子孫ではないからだ。また、オバマの回顧録ときたら、白人ばかりの家庭に育った中で自分の黒い肌の色とどう折り合いをつけるかの追求が最大のテーマだったからだ。<そのジャクソンも、当選後のオバマの演説会場にやってきて涙を流し続けた。>
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/nov/07/obama-democrats-cuba-russia-bush
(11月7日アクセス。以下同じ)

 白人は、火曜日に、やはり依然として民主党より共和党にたくさん投票した。最近のすべての大統領選と同じく・・。すなわち、55%対43%とマケインによりたくさん投票した。・・・
 <8年前には>アフリカ系米国人の90%がゴアに、そして4年前には88%がケリーに投票した。オバマはそれを95%に上げた。それに加えて、黒人の投票率も上昇した。<とはいえ、前回に比べて全投票数中黒人が占める割合は11%から13%に増えただけだ。>・・・
 火曜日の投票パターンで一番状況の変化に寄与したのは、白人や黒人ではなかった。それはヒスパニックの票だった。4年前にケリーはヒスパニックの投票者で<ブッシュを>9%上回った。今年は何と、オバマはマケインを34%も上回り、マケインが32%だったのに66%もとった。・・・
 これは、21世紀において今後、ヒスパニックの投票者数が他のすべての投票者数を上回った時に、形となって現れるであろう米国の政治的地図がいかなるものになるかを指し示している。これは共和党にとって大変悪い長期的ニュースであり、その移民受け入れ政策がどんなに同党にとって高く付くかということだ。・・・
 <白人に関しても、>白人の若い投票者達は、白人の年配者とは違っておおむねオバマ支持だ。従って、恐らく将来は希望が持てるだろう。貧しい白人は、いつも民主党寄りだったが、金持ちの白人に比べてオバマにたくさん投票した。大卒者は大学を卒業していない者に比べて民主党にたくさん投票した。ユダヤ人を始めとする非キリスト教徒たる白人投票者達はおおむねオバマ支持だが、白人のキリスト教徒は圧倒的にマケイン支持だ。中でも原理主義的キリスト教徒は3対1もの割合でマケインに投票した。米国では、白人の諸教会は、余りにしばしば人種的分裂の最上の友として機能した。・・・
 例えばバージニア州では、オバマはマケインを51%対47%で破った。しかし、民主党の白人マーク・ワーナー(Mark Warner)は、共和党のジム・ギルモア(Jim Gilmore)を、全く有権者が同じだというのに、64%対34%で破った。白人のバージニア州民に至っては、60%対39%でマケインに投票したところ、同じ連中がワーナーには56%対43%で投票した。ということは、大部分が白人であるところの40万人近くのバージニア州の投票者達が、マケインからワーナーへと党を乗り換えて投票したことを意味する。同じようなことがより小さい規模で北カロライナ州で起こった。そこでは、オバマとマケインは50%対50%の得票率だったけれど、民主党の白人ケイ・ヘーガン(Kay Hagan)が共和党のリディ・ドール(Liddy Dole)を53%対44%の差で上院議員の席から追放したのだ。
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/nov/07/barack-obama-south-west-hispanic

 バラク・オバマは・・・インターネットの叛乱的な力を駆使した最初の大統領候補者だ。・・・
 オバマが集めた6億ドルもの選挙資金の半分はゴールドマン・サックスやハリウッドの類からだが、残りの半分は初めて献金した、そのうちの多くは初めて投票する人々から<インターネットで>集めたものだ。・・・
 彼は、こうしてインターネットを通じて集めたカネを数百人の有給スタッフを雇うのに使い、今度はこれらの「市民資金集め人」のメルアドを使って何千人ものボランティアをリクルートした。・・・
 11月4日派、政治の主要な手段としてインターネットがテレビに勝利した日となった。http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/world_news_america/7712138.stm

 1787年に革命的な「自由によって与えられた権力の章典(charter of power granted by liberty)」<が成立したが、>これが年配の白人による政治的覇権を極めて徐々にしか脅かさない<ことが暗黙の合意となっていた。>
 とりわけ三つのグループが政治過程から排除されていた。黒人、女性、そして若者だ。米国の民主主義の歴史の中心は、この三つがすべて政治過程に完全に包含されるための闘争の歴史であると見てよかろう。2008年の選挙運動は、この三つのグループすべてが協働して建国の父達の不決断な(ambivalent)ビジョンを最終的かつ完全に実現しようとしたという点で注目される。・・・
 黒人の前進は、必ずしも高貴な動機からとは限らないが、いつも女性の前進に先立った。黒人が投票でき、差別からの保護を享受でき、立候補ができるのなら、女性もそうであるべきだ、というわけだ。・・・しかし、女性はいつもこの負債を支払ってきた。・・・1980年代に・・・女性は投票権が与えられてから初めて男性よりたくさん、しかも進歩的な側に投票したのだ。単純に人口的に言えば、オバマの勝利を説明する最も重要な要素は、男性がほとんど半々だったのに、女性がオバマに13%より多く投票したことなのだ。
 最後に・・・ 若者の投票者についてだが、・・・米国の若者達は嘆かわしいほど投票所に足を運んで来なかった。それが、2000年と2004年を比べると、18歳から29歳の投票率が36%から47%へと若干上昇した。火曜日には・・・これにちょっと上積みがなされた程度だが、・・・<インターネット戦略等のおかげもあって、>若者の投票者達は、火曜日に2対1の割合でオバマに投票した。
http://www.nytimes.com/2008/11/07/opinion/07patterson.html?ref=opinion&pagewanted=print

 <当選後の演説で>オバマは、「この勝利そのものはわれわれが求める変化ではない」と述べ、「われわれは単に変化を起こすチャンスを与えられただけのことだ。しかし、今までどおりのことをやっていたのでは変化は起こらない。皆さん自身、そして新しい奉仕の精神、更に新しい犠牲の精神、なくしては変化は起こらないのだ。だから、新しい愛国主義と責任感を呼び起こそう。われわれ一人一人が決意を固めてもっと懸命に働き、自分自身だけでなくお互いの面倒を見合うようにしなければならない」と続けた。
 愛国主義と国家のために犠牲を捧げる意思とを同一視する考え方は、ジョン・F・ケネディの大統領就任演説を彷彿とさせるが、それ以来余り耳にしなかったものだ。
http://www.latimes.com/news/opinion/editorials/la-ed-speeches6-2008nov06,0,2886200,print.story

3 終わりに

 ヒスパニック・黒人・女性・若者の弱者連合がオバマを大統領に押し上げたってことです。
 それにしても、中年以上の白人の男性は度し難いですね。
 そして、キリスト教も。