太田述正コラム#2897(2008.11.6)
<オバマ大統領誕生(続)>(2008.12.15公開)

1 始めに

 表記について、前回に引き続き、英米の論調をご紹介しましょう。

2 英米の論調

 <第一期共和党ブッシュ政権で、米国史上初めて黒人で国務長官になった>コリン・パウエルは、先月19日に、オバマ候補支持を表明して話題になった(コラム#2862、2863)が、米大統領選挙の結果を香港で見て、涙を流しながら、「オバマもまた黒人であることが米国を陶然とさせた(turned on)」と記者達に語り、数秒おいて、「何と心を動かされることだろうか(very emotional)」と付け加えた。
 また、ブッシュ政権の現在の国務長官であるコンドリーザ・ライスも、この選挙結果の持つ歴史的意味に言及しつつ、米国の民主主義は「引き続き驚きを与えている。それは自分自身の装いを新たにし続けている」と述べた。
 そして彼女は、「アフリカ系米国人の一人として、私はとりわけ誇りに思う」と付け加えた。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/nov/06/us-elections-barack-obama-lincoln
(11月6日アクセス。以下同じ)

 要するにこういうことだ。米国人はみんな、子供の時に「誰でも大きくなったら米国の大統領になれる」と聞かされる。われわれが今や黒人の大統領を持つに至ったからには、どんなに短い間かは知らないが、われわれは再びそれが本当だと感じることができている。
http://www.slate.com/id/2203910/

 1930年代において<重量級黒人ボクサーの>ジョー・ルイス(Joe Louis。1914〜81年)が<ドイツ人の>マックス・シュメリング(Max Schmeling)を<1938年に>破った時、・・・マヤ・アンゲロウ(Maya Angelou)は「これで、ある黒人の母親の息子にしてある黒人の父親の息子が、世界で一番強い男たりうることが証明された」と記した。今度は<黒人の>オバマが、世界で最も力のある男となった。(ガーディアンの黒人コラムニスト)
http://www.guardian.co.uk/world/2008/nov/06/uselections2008-usa

 エイブラハム・リンカーンは、米国のリーダー達のうちで最も尊敬されている人物であると言ってよいだろうが、彼は、19世紀における最も偉大な文筆家の一人だった。更に時代を遡れば、ジョン・アダムス、ジェームス・マディソン、そしてとりわけトーマス・ジェファーソンのような<いずれも偉大な>大統領達の文筆能力の高さには衝撃を受けざるをえないほどだ。
 もちろん中には例外もある。一番良い例がユリシーズ・S・グラントだ。彼の回顧録は、19世紀の米国が生み出した最も優れた文学の一つであると見なされている。しかし、彼は大統領としては、米国史の中で最も腐敗し、最も無能であったうちの一人に通常位置づけられている。
 それでもなお、バラク・オバマの弁舌の巧みさが文章にも現れていることは、私に希望を与える。書くことに巧みであるためには、能力のみならず、知性、知的好奇心、そしてしばしば、人生を同時に多角的視点から眺める能力、が求められるからだ。
http://www.guardian.co.uk/books/booksblog/2008/nov/05/obama-writer-dreams-from-my-father

 <黒人であるオバマが大統領になったことは画期的なことだ。>
 <しかし、>黒人の収入や教育の絶対的水準は、確かに1960年代より高まったけれど、相対的には変わっていない。それどころか、ブッシュ政権時代に、相対的には落ち込んでしまった。・・・
 黒人の中産階級・・・の中位家計収入は2003年から2005年の間に30,945ドルへと白人の中位家計収入の62%に落ち込んでしまった。2002年には白人たる米国人の中位純資産・・・である88,000ドルは、わずか6,000ドルでしかない黒人の中位純資産の実に14.5倍に達している。・・・、
 黒人の貧困率は、2000年の21.2%から昨年の24.5%へと上昇し、黒人全体の下からの5分の1は、白人の貧困層より、過去30年間で一番相対的にみじめな状態にある。
 <以上のようなカネの問題よりはるかに悩ましいのは、公的生活においてこそ、接触があるものの、>私的生活においては、黒人達は白人達とほとんど接触がない状態に陥っていることだ。<昔はその逆だった。>
http://www.newsweek.com/id/166827

3 終わりに

 黒人達が、やがて陶酔感から覚めた時の絶望感が今から想像できるようですが、黒人達の場合ほどではないにせよ、米国のみならず、世界中の人々がオバマの大統領当選に陶酔感を覚えているところ、それが醒めた暁には、一体どうなるのか心配でなりません。
 恐らく、オバマはそんなことは百も承知なのでしょう。
 だからこそ、当選直後のオバマの演説は抑制したトーンで終始したのだと思われます。 オバマの今後が幸あれと祈らざるをえません。