太田述正コラム#2895(2008.11.5)
<オバマ大統領誕生>(2008.12.14公開)

1 始めに

 オバマが米大統領選に勝利しました。
 とりあえず、米英の主要紙の報道ぶりの一部をご紹介しましょう。

2 オバマ当選についての米英の主要紙の報道ぶり

 マーク・マッキノン(Mark McKinnon)はブッシュ現大統領とマケイン上院議員のメディア/広報企画を担当していたことがある人物だが、彼は、今年はオバマ候補を破るために仕事をするつもりはない、とマケイン候補に早くから伝えていた。「この選挙は世界に対して米国がその理想を遵守することを示すものだ。それはわれわれの歴史における誇るべき瞬間だ。オバマ候補とは政治的に意見を同じくしないが、このような信じがたい達成がなされる時に、それに抗った者として記録にとどめられたくはない」と語った。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/11/05/AR2008110500148_pf.html
(11月5日アクセス。以下同じ。)

 勝利者たるオバマの得票率は、リンドン・ジョンソン(Lyndon Johnson)の1964年の地滑り的勝利以来の高さになりそうであり、ジミー・カーター(Jimmy Carter)の1976年の得票率50.1%を上回ることが確実だ(注)。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/11/05/AR2008110500041_pf.html

 (注)5日2400前現在の得票率は、オバマ52%、マケイン46%。
http://www.washingtonpost.com/?reload=true
    私に言わせれば、二人の差が6ポイントでしかないことの方が信じられない。

 今年2月、<オバマ夫人の>ミシェル・オバマは、「私が大人になってから、初めてこの国のことが本当に誇りに思えた・・」と語って問題になった。・・・しかし今夜は、私はこれまでで一番米国のことを誇りに思える。(ある黒人コラムニスト(太田))
http://voices.washingtonpost.com/postpartisan/2008/11/proud_of_america.html

 米国は、地球上の白人が多数を占める民主主義国家として初めて黒人を国家のリーダーに選出した。<今まで1周遅れだった米国がついに先頭に立ったのだ>。・・・
 以下のことを考えても見よ。
 米国は奴隷制を1865年にようやく廃止した。大英帝国は半世紀も先を行っていた。すなわち、1807年に奴隷貿易を禁止し、1834年に奴隷制を禁止した。・・・フランス<が奴隷制を廃止したのは>1794年だ。スペインは1811年、デンマークは1848年・・・ベネズエラ、エクアドル、コロンビアは1821年、メキシコは1829年だったが、<メキシコ領だった>テキサスでは奴隷所有者たる牧場主達は叛乱を起こした。その9年後、米国はテキサス共和国を・・もちろん奴隷所有が認められた州として・・併合し、ために米墨戦争が起こった。
 しかし、米国はそれからも20年間奴隷制を維持し続けた。奴隷制を廃止するためには、もちろん、血生臭い南北戦争・・米国が行った他のすべての戦争の死者を合わせたよりも多数の60万人の死者が出た・・が戦われなければならなかった。
 それからが大事なところだ。米国は世界で最も重苦しい奴隷制まがいのアフリカ系米国人に対する隔離(segregation)システムを構築した。南北戦争後の短い自由の時期を経て、米国は黒人に対し、選挙、抗議、旅行等の基本的人権を享受することを1世紀近くにわたって拒否したのだ。・・・
 南アフリカに対して他の民主主義諸国が数多の制裁を科して後相当時間が経っても、ヘルムズ(Jesse Helms。1921〜2008年。米上院議員(太田))とそのお仲間達は同様の行動を米国がとることを阻止し続けた。ようやく1986年になって、全国的なデモのさなか、米議会はロナルド・レーガン大統領の拒否権行使を覆して、アパルトヘイト体制に対する経済制裁を承認したのだ。
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/11/04/AR2008110403726_pf.html

 すべての子供、すべての市民、そしてすべての新しい移民は今日から米国ではどんなことでも可能になることを知った。・・・
 「危機の時代に大統領に就くことは偉大な大統領になることを保証するわけではないが、そうなる機会を与えられたとは言える。」とハーバード大学の政治哲学者のマイケル・サンデル(Michael Sandel)は指摘した。「リンカーン、F.D.ローズベルト、そしてトルーマンがまさにそうだった」と。
http://www.nytimes.com/2008/11/05/opinion/05friedman.html?_r=1&oref=slogin&ref=opinion&pagewanted=print
 
 彼の勝利演説の中で、バラク・オバマは、彼の勝利によって、この<ブッシュ政権の>8年間の下に線を引き、ほとんど誰も涙を流さないところのこの米国の一時代に幕を下ろした。
http://www.guardian.co.uk/world/2008/nov/05/obama-victory-chicago-new-era

3 終わりに

 ワシントンポストは、実に2年前の2006年11月13日付けの紙面で、世界中のメディアで初めて、実質的なオバマ支持表明を行いました(コラム#1505「米大統領選挙始動(その1)」)。
 というか、私がそう受け止めたわけです。
 私自身、一貫してオバマを支持し、彼の当選を信じ続けました。
 一方、ニューヨークタイムスは、今年になってからヒラリー・クリントン支持を打ち出すという、時期遅れの、しかもおかしな判断をしました。
 これで、ワシントンポストは、少なくとも私にとって、米国一のクオリティペーパーの座を揺るぎないものにしました。
 とまれ、オバマの当選を祝うとともに、彼の大統領としての成功を祈念したいと思います。