太田述正コラム#2936(2008.11.26)
<皆さんとディスカッション(続x318)>

<びり江>

 オースティンは原作も勿論良いですが、イギリス制作のドラマ版「エマ」や「高慢と偏見」も面白かったですよ。
 BBCを初めイギリスのTV局が作るドラマは佳作揃いだと思います。
 それも優秀な原作があってのことなのでしょうが。

<太田>

 シェークスピア以来の演劇の伝統と、以前(コラム#138で)述べたように、イギリス人俳優の演技力が傑出しているからである、というのが私の見解です。
 ところで、びり江さん、男性ですか女性ですか。どうして「びり江」ってハンドルネームをつけたんですか?

<衆愚政治?>

 コラム#2842「ル・クレジオのノーベル文学賞受賞(その1)」を読みました。

 文学賞の数で優劣をつけてみたり、それにかこつけて他の文化を嘲笑うアングロサクソン文明の浅ましさが読んでいて滑稽です。
 小説にせよ、音楽にせよ、為替にせよ、株式市場にせよ、なんでも格付けしなければ(させなければ)気がすまないのでしょうか。

 太田先生の紹介された英米の新聞記事は、「私」によるものである「芸術」さえも利用して、各国の文化を格付けせずにはいられないアングロサクソン世界の精神のさもしさの表れのようにも見えます。
 日本もアングロサクソン化がより一層進み、いずれこうなるのかと思うと悲しい気分になりました。

<太田>

 だけど、日本にだって芥川賞、直木賞を始め、文学賞は多々あり、それらの受賞歴でもって小説家は格付けされ、稿料だって差をつけられている側面がある点で変わりはないでしょう。
 悩ましいのは、○X式のペーパーテストと違って、文学のよしあしの評価に客観的な基準がないことから、小説家の評価に毀誉褒貶がつきものであることです。

<なべやき>

 英国は文学は一流でしょうが、それ以外の芸術分野、建築、絵画、クラシック音楽、映画に関しては一貫して二流な気がしてならなりません。世界を席巻したビートルズを初めとしたポピュラーミュージック、推理小説は元々はアメリカから輸入したものでしょう。英国が開拓したSF小説、推理小説、ファンタジー小説、ロックは未だに芸術的に評価されていません。英国最大の映画祭である英国アカデミー賞なんて、カンヌ・ベルリン・ベネチアと比べたらみすぼらしいものです。
 映画評論家の淀川長治氏は「(スウェーデンやドイツと違って)ハリウッドはイギリスが好きじゃなかった。ビビアン・リーが出てくるまでは英国美人というのはいなかった」(映画千夜一夜672P)と言ってます。
 太田先生は盛んにイギリス優位を主張されますが、アメリカ映画界に限っては、英国に対して劣等感どころかむしろ見下していたってことでしょう。

<太田>

 イギリスは、建築についても、かなりいい線行っていると思いますよ。
http://www.greatbuildings.com/architects/
 ロンドンのイギリス官庁街の一角に建つバンケットハウスを設計したイニゴ・ジョーンズ(Inigo Jones 。1573〜1652年) 、同じくロンドンのセント・ポール寺院を設計したクリストファー・レン(Christopher Wren。1632〜1723年)等々。
 映画については、ハリウッド映画に占めるイギリス人俳優のシェアの高さ(上述)に注目しましょう。
 また、ミュージカルは、19世紀後半のほぼ同時期にニューヨークとロンドンで始まっています。
http://en.wikipedia.org/wiki/Musical_theater
 ポピュラー音楽については、定義がむつかしいので、議論の対象にするのは控えた方がよさそうです。
 なお、ロック(ロックンロール)の起源は1950年代の米国でしょう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB
 私見では、イギリスの芸術の特徴は、芸術のための芸術ではなく、現実に即しているところにあります。つまりは、経験論的芸術なのです。
 (これに対し、欧州の芸術の特徴は、芸術の世界で自己完結している、芸術のための芸術であるところにあります。つまりは、演繹論的芸術なのです。)
 イギリスが、小説、演劇において傑出するとともに、建築もかなりいい線を行っている、という点にそれが現れています。
 なお、イギリスが「開拓」したとおっしゃるSF小説も推理小説もファンタンジー小説も、あくまでも小説であって、小説の中でエンターテインメント性が強いものに他なりません(コラム#508)。
 ファンタジー小説のどこが現実に即しているのかですって?
 いや、ファンタジー小説というのは、現実への風刺という趣がある(コラム#2)のですよ。
 ちなみに、推理小説は、その発祥の地はイギリスであると言ってよさそうです。
 「1830年代にイギリスにおいて警察制度が整ったことにより、・・・後の近代推理小説が生まれる基盤を作ったといえるだろう。」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%A8%E7%90%86%E5%B0%8F%E8%AA%AC
 SF小説と近代ファンタジー小説の発祥の地は、どちらも間違いなくイギリスです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Science_fiction
http://en.wikipedia.org/wiki/Fantasy_literature

 さて、記事の紹介です。

 コラム#2926で、「インドのフリゲート艦が同海域で海賊の母船を1隻撃沈した」と記したところですが、タイのトロール船が海賊に乗っ取られつつあったところにインドの艦艇が接近したところ、既に乗り移っていた海賊から発砲されたので、応戦し、このトロール船を撃沈してしまったということのようです。
 このせいで、トロール船の乗組員15名中14名が死亡し、1名(カンボディア人)が6日間漂流して救出されました。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/south_asia/7749245.stm
(11月26日アクセス)

 この報道が事実だとすると、インド海軍のそそかしっさと好戦性は犯罪的ですね。

 最後に、11月20日にみずほ銀行の太田名義の口座に5,000円振り込まれたHNさん。有料読者にお名前が一致する方がおられません。ご連絡をください。
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太田述正コラム#2937(2008.11.26)
<自省する米国(その2)>

→非公開