太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/

太田述正コラム#2804(2008.9.21)
<多すぎる大学生>(2008.11.8公開)

1 始めに

 1994年に、ハーバード大学教授との共著で'The Bell Curve: Intelligence and Class Structure in American Life' というベストセラーを上梓して大論争を引き起こした、アメリカン・エンタープライズ・インスティテュートのチャールス・マレー(Charles Murray)が、またもや論争を引き起こしそうな本を上梓しました。
 ちなみに前の本は、知能は、両親の社会的経済的地位や本人の教育程度よりも、金銭収入、仕事のパーフォーマンス、婚姻外妊娠、そして犯罪を予想するのに適した指標である、と指摘したものです。
 一番論争を引き起こしたのは、人種ごとに知能に長期にわたって差異が見られることと、これがいかなることを意味するか、とについて論じた箇所です。
 ただし、この本では同時に、民族的な違いにどれだけ遺伝子と環境がそれぞれかかわっているかの議論にはまだ決着がついていない、とも記されていました。

 (以上、
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Murray_
(9月21日アクセス。以下同じ)による。)

 今度新たに上梓された本は'Real Education' です。

2 マレーの主張
 
 マレーが、この本の中で、及びこの本に関連してどういうことを言っているか、簡単にご紹介しましょう。
 
 同一年齢の80%の人間は大学の通常の教材を理解する力はない。要するに、大学には20%が行けばいいのだ。

 マケインは学年で899人中894位で米海軍兵学校を卒業したが、これは彼が学習能力が劣っていたということではなく、ビールばかり飲んでいたせいだ。
 ただ、マケインの取り巻き連中がマケインの反知性主義を売り物にしているのは分からないでもない。
 これまでで最もIQが高かった米大統領は、多分ジミー・カーター(Jimmy Carter)だろうが、彼はこの50年間で最悪の大統領だったからだ。

 (以上、
http://www.nytimes.com/2008/09/21/magazine/21wwln-Q4-t.html?ref=magazine&pagewanted=print
による。)

 高校生は、職業が二つの入れ物に仕分けされているという有害な観念を注入されている。大学の学位が求められる良い仕事と、求められない悪い仕事に・・。その結果、学生達はカウンセラー達によって、その能力いかんにかかわらず大学へ行くことを勧められる。技術的ないし匠的な仕事が無数にあってそれらがチャレンジングで面白くて収入もいいことなどは教えられないのだ。

 学術向きであると私が他の人々よりずっておおまかに定義しているのは、学業成績でトップの10%だが、その大部分は大学へ進学する。彼らについては、足に火の洗礼を受けさせなければならないのだ。彼らは各期末の論文を教授達によって文法的誤りがあれば自動的に減点されなければならず、また、教授達によって正確な論理と首尾一貫した論述が求められなければならないのだ。彼らは正確な判断をするための道具を身につけなければならない。そのためには、何よりも歴史を豊富に身につけなければならないし、・・・確率論の基礎を徹底的に身につけなければならない。・・・そして彼らは倫理と良い人生を生きるということがいかなることか、に関する基礎を徹底的に学ぶ必要がある。つまり、・・・哲学、文学、そして芸術に関して人類がこれまで生み出した最上のものを扱う幾多の科目をとらなければならないということだ。そして最後に、最も上澄みの学生は、・・・容易なことではないが、知的謙虚さをを学ばなければならない。

 ・・・史上初めて、一人の子供も取り残されてはならない(No Child Left Behind)法を米国政府が成立させた。この法律は、・・・2014年までに数学と読解の試験点数が現在のトップ30%相当に70%が入らなければならないというのだ。これはばかげた目標だ。こんなに沢山の子供達が読解と数学がこんなにできるようになるだけの能力を持っていないという事実を受け入れようとしないのだから・・。

 (以上、
http://www.rightwingnews.com/mt331/2008/09/katie_favazza_it_seems_your.php
による。)

3 反論

 この本に対する批判は、揚げ足取りに類するもののほかは、まるでかみ合っていない以下のような議論しか出てきていないように思われます。

 「米国は、教育達成度において世界のリーダーたる羨むべき地位を長く占めてきた。 わずか10年前には米国は他の先進諸国を教育の分野においてリードしていた。しかし、もはやそうではない。今では高等教育を終了した青年の比率において米国は10位になってしまった。高等教育管理システム・国家センター(The National Center for Higher Education Management Systems)は、米国が2025年までに6,310万人の学士号取得者を生み出さなければ、カナダ、日本、そして韓国の学士号取得者の対成人比相当に達することができないことを指摘した。今のままのペースで行けば、われわれはこの目標より1,600万人もの学士号取得者が不足してしまうというのだ。」

 だから、マレーの主張は間違っている、というのですが、いかがですか。おかしいでしょう。

 (以上、
http://www.insidehighered.com/views/2008/08/21/perry
による。)

太田述正ブログは移転しました 。
www.ohtan.net
www.ohtan.net/blog/