太田述正コラム#2891(2008.11.4)
<皆さんとディスカッション(続x296)>

<moshika>

≫歴史家でもない、つまりは専門家でも何でもない田母神氏が、歴史認識で問題提起することにいかなる意味があるのか。いわんや、職を賭して問題提起するなど愚の骨頂ではないか・・・結論的に言えば、田母神氏は、自衛官幹部全体に対する信頼を失墜せしめ、内局を制服・背広混成組織にすることに対する疑念を生ぜしめ、防衛省の組織改革の最大の眼目の実現を阻害しかねない愚行を犯した、究極のKYである、ということだ。≪(コラム#2888。太田)

 太田さんの御主張はもっともだと思います。
 ただ、民主党の鳩山由紀夫幹事長は、田母神氏の歴史認識(戦後だけではなく)について批判されていますね。
 「政府の一人ひとりが、本当にかつて犯したことに対する痛烈な反省の気持ちを持っているか、確かめなければいけない。」
http://www.asahi.com/politics/update/1101/TKY200811010194.html

 私は、日本の構造を根本的に変革するには政権交代しかないと考えますが、上記の発言を見ると、一度の政権交代だけでは安全保障面における大きな変革は望めないように感じました。

<太田>

 最後の点については、MSさんの投稿(後掲)もご覧いただきたいですが、旧日本軍が日中戦争から先の大戦にかけて、支那やシンガポールで国際法に違反する形で一般住民の殺傷をかなり広範に行ったことは否定できない事実であり、少なくともこのことについては、現在の日本人も「痛烈な反省の気持ちを持って」しかるべきでしょう。
 また、そうすることで初めて、われわれは、米国による東京大空襲や原爆投下等やソ連による在満日本人一般住民への蛮行やシベリア抑留等を批判し、米国民やロシア国民に対して反省の気持ちを持つように求めることができるのではないでしょうか。
 更に戦後に、毛沢東が数千万人にも及ぶ支那人を不慮の死に追いやったこと等についても、今度は中共国民に対してね。

 ところで、田母神氏の歴史認識について言い忘れたことを補足しておきます。
 「アメリカもコミンテルンに動かされていた。」
http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf
というのは言い過ぎです。
 スーザン・ジャコビー(Susan Jacoby)著'The Age of American Unreason'の書評の一節をご紹介します。
 この本は、ガーディアンのコラムで詳しく言及され、また、ニューヨークタイムスとロサンゼルスタイムスの書評でも高く評価されており(コラム#2890(未公開)、2892(未執筆。未公開扱いとなろう)、信頼性は高いと考えられます。

 「彼女<(ジャコビー)>は、1930年代と40年代においてソ連の共産主義を弁護したところの米国の謀られていた左翼人士達が、スターリンとその後継者達が残忍なまでに抑圧的な体制を取り仕切っていたことが明らかになり始めてからもなお弁護し続けたことに対し、彼らを叱責する。(彼女は同時に、これら人士達が米国の文化一般に及ぼした影響を、彼らの友人達と敵達が双方とも途方もなく誇張してきたことについても指摘している。)・・・」(
http://www.salon.com/books/review/2008/02/15/susan_jacoby/
。11月3日アクセス)
 この()内の「米国の文化一般」を「ローズベルト政権」に読み替えても、ジャコビーの指摘は成り立つ、というのが私の見解です。

 昨日申し上げたこととだぶりますが、再度田母神氏批判を行っておきます。
 2001年に拙著『防衛庁再生宣言』が上梓され、私のファンの手でこの本が自衛隊の広範な部隊に配布され、また、同年秋に私がコラムをインターネット上に書き始め、そして私が昨年マスコミに登場するようになり、と色々なことがありましたが、この間、私の防衛庁時代に面識がなかった自衛隊の現役、OB中、私の主張に関してメールないし手紙でコンタクトしてきた人は、全部ひっくるめて片手の指で数えられるくらいです。
 私が一貫して防衛省/自衛隊に密接に関わる発信を続けてきたことからすれば、一般の方々は不思議に思われるかもしれません。
 私にはさほど不思議ではありませんが、さすがに、面識がなかった航空自衛隊関係者から私に対し、これまでコンタクトが皆無であることはちょっと気になっています。

 少ないサンプルから結論へと飛躍するのはいかがなものかとお叱りを受けることは重々承知の上で申し上げますが、私はかねてより、これは陸上自衛隊や海上自衛隊と比べての航空自衛隊の知的荒廃とモラルの低さを示している、と思っているのです。
 田母神氏のような行動に出る陸幕長や海幕長がいないのはそのためなのです。
 田母神氏は、自分が所属している航空自衛隊、ひいては防衛省が山のように問題を抱えているというのに、これらの問題については、自分が当事者にして専門家であるにもかかわらず、目を反らして何もせず、その一方で、自分が直接どうすることもできない立場であるにもかかわらず、自分にとって不愉快な世間の動向については、受け売りの知識を並べ立てて公の場で批判し、その結果として防衛省が抱える諸問題の解決が一層困難になる虞れがあっても恬として恥じない、というのですから、彼の知的荒廃とモラルの低さは相当なものだ、とお思いになりませんか?

 田母神氏を見ていると、(歴史の見直しならぬ)憲法改正を口にしながら、(自民党ならぬ)公明党/創価学会と野合し、(防衛省内の構造的腐敗・退廃ならぬ)政官業の癒着構造には手をつけない、自民党の「タカ」派の政治屋の何人かの顔が彷彿としてきます。

<michisuzu>

  政治に係るvisionにせよillusionにせよ

 私たちが政治に求めているのはきっとIllusionなのでしょうか?
 求めても求められないって感じがしますね。
 せめて年内の解散総選挙くらいはIllusionで無いことを願います。

<太田>

 illusionとIllusionをひょっとして意識的に書き分けてます?
 仮にそうだとして、ビスマルクの発言より、読み解きにくいよー。

<大阪の川にゃ>

 MS様、

≫なぜ素直に怒りを投票行動にぶつけないのでしょうか?≪(MS様書き込み:太田述正コラム#2795)
≫あなたはどうか知りませんが、これだけ自民党に馬鹿にされていながら、自民党に権益を保護してもらっているわけでもないのに、依然自民党に票をいれようと考えているような人がいらっしゃるようですね。≪(同上)

 そりゃ、日本の民主党の代表が小沢一郎なんですから。
 太田氏:「米国があんた(小沢一郎)の数々の超弩級醜聞を独自に調べ上げ、あんたを脅迫した可能性が大だと思っている。これに加えて山田洋行の話もあったということだろう。これはたまらんと恐惶を来したあんたは自民党に泣きついて大連立話を持ちかけ、給油反対を取り下げる名分を得た上で、民主党代表の地位にとどまる、という一縷の可能性にかけた、と私はふんでいるんだ。どこまで行っても、小汚い野郎だ。」(小沢辞任:コラム#2159(2007.11.4) )
 こんな小汚い男を首相にせよ、とは、ああもうびっくらこいたなあ、もう。
 多くの有権者は自民党が好きで投票しているのではなくて、仕方なく投票しているのではないですか?もちろん党首以外にも問題があるでしょう。
 愛国者である中学の同級生が、地元から民主党公認で衆院選挙に出て当選・落選を繰り返していますので、いつも衆院選では悩みます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E6%B2%BB

≫オバマの演説を聞いて涙を流している「人間」と(自民党に投票する人と)は、「えらい違い」とは思いませんか?≪(MS様書き込み:太田述正コラム#2795)

ということで米国の民主党と日本の民主党では、各トップに極めて著しい「えらい違い」があることは確かです。ここまで書いて、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきました。

<MS>

 大阪の川にゃ様、コメントありがとうございます。

 個別の議員、政策を比較するより、おおざっぱな視点で考えられたらどうでしょうか? 私は次のような基準で投票行動を決めようと思っています。

1. 日本が保護国の地位から脱却できる可能性がより高い政党に投票する。
2. 世襲議員がより少ない政党に投票する。
3. ある政党が政権を維持して8年(衆議院の2期)に達したら、別の政党に投票する。
4. 公明党と組んでない政党に投票する。
(優先度順位順)

以上を踏まえて、川にゃさんの意見を批判させてください。

>そりゃ、日本の民主党の代表が小沢一郎なんですから。(中略) こんな小汚い男を首相にせよ、とは、ああもうびっくらこいたなあ、もう。

 政権交代後、脛に傷のある男が、そのやり口を知り抜いている野党自民党から狙われる首相の座に就くとは私は思えません。wikipediaの民主党ネクスト・キャビネットの項目によると、小沢氏はネクスト首相候補のようですが、いざ政権奪取した段になったら、ひよって辞退するんじゃないでしょうか? そんな根性があったら、とっくに政権とれてますよ。

 一方、公自政権を影で操っている可能性のある人物は、小沢氏なんかと比較にならないくらいの根性と生命力をもっていると思います。そういう妖怪のような特定の人物に力をもたせるような環境を許してはなりません。(基準4)

>多くの有権者は自民党が好きで投票しているのではなくて、仕方なく投票しているのではないですか?もちろん党首以外にも問題があるでしょう。

 私の周りにもそういう意見の人はいます。しかし、この期に及んで自民党に投票するということは、これまでの自公政治にOKサインをだすことを意味します(基準3、ただし自民政権は2期8年どころではなく約50年ほとんど途切れずつづいてきたことに注意!)。

 そんなことを続けてきたから、無能な世襲議員(自民党議員の半分)がいまだに生き残っているのです。(世襲議員の数: http://www.notnet.jp/data01index.htm
(基準2)

 それに民主党政権がどれだけ無能であろうと、日本が安全保障・外交の基本を米国にまるなげしている(保護国である)以上、少なくとも日本の安全が急激に悪化することはありません。その上、今まで「吉田ドクトリン」というお題目で国民の目をごまかしつつ、自分たちの権益をむさぼることに終始してきた自民党が下野することで、日本が「吉田ドクトリン」とおさらばできる可能性が出てきます(基準1)。

(参考:太田コラム#1819 「吉田ドクトリンいまだ健在」
 http://blog.ohtan.net/archives/50954049.html

 以上のように、現在の自公政権は私の4つの投票基準すべての点で、投票の対象ではありません。

 一般にこの種の問題は、個別には似たような状況認識をしていても、どのような優先順位でもの事を考えるかで、全体像の認識が違い、選択結果が異なってきます。もし、差し支えなければどのような基準と優先順位で投票行動を考えられているか、お教えください。

>愛国者である中学の同級生が、地元から民主党公認で衆院選挙に出て当選・落選を繰り返していますので、いつも衆院選では悩みます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E6%B2%BB

 せっかくそんないい人が出ているのに、どうして悩む必要があるのか、まったくわかりません。私だったら、自民党の対抗馬に共産党員しかでていなくても、(共産党が政権をとれる議員数を確保できる可能性はないので)そちらに投票しますよ! とにかく、自民党議員に国民の怒りの恐ろしさをすりこんでおかないといけません。今までそれがないから、国民はなめられっぱなしです。

>≫オバマの演説を聞いて涙を流している「人間」と(自民党に投票する人と)は、「えらい違い」とは思いませんか?≪(MS様書き込み:太田述正コラム#2795)
ということで米国の民主党と日本の民主党では、各トップに極めて著しい「えらい違い」があることは確かです。ここまで書いて、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきました。

 かたや保護国の統治代理人候補と保護国住民、かたや世界一の超大国のトップ候補とその国家の主権者だから、「えらい違い」があるのは当然ですよね。しかし、保護住民といえども少なくとも人間ならば、怒ることぐらいはできますよね。とりあえず、もっと怒りましょう! 投票行動によって自公政権に制裁を加えるのです。

<太田>

 お見事!
 私が付け加える必要はなさそうです。

 最後に面白かった記事をちょっとだけ。

 まず、コラム#2876、2878のシリーズ(未公開)で取り上げたクレヴェルド(Martin van Creveld)の本、『戦争の文化』の中の引用の追加的紹介です。

 「<イスラエルの元国防相>モシェ・ダヤン(Moshe Dayan。1915〜81年)いわく、「戦争ほど血湧き肉躍る(exciting)ものはない」。そしてロバート・E・リー(Robert E. Lee。1807〜70年。南北戦争の時の南側の猛将(太田))は、「戦争がこれほどもひどい(terrible)ものであることはよかった。さもなければわれわれは戦争を好きになりすぎるからだ」と言った。」(
http://www.nytimes.com/2008/10/31/books/31book.html?_r=1&oref=slogin&pagewanted=print
。11月2日アクセス)

 田母神氏、航空自衛隊の幹部学校あたりでこの本を翻訳させ、どこかから出版させるといったことでもやった方が、まだ生産的だったと思いますね。

 次に、慶応義塾幼稚舎(小学校)長・加藤三明氏の発言です。

 「幼稚舎の英語の授業は1年生から始まります。1〜2年生は1クラス36人を2グループに分けて、「英語」と「情報」の授業を隔週で1回ずつ。ゲームなどで英語に「親しむ」ことから始めます。3年生になると、週1回の授業をネーティブ・スピーカーの先生と日本人の先生の2人で担当。4〜6年生は1クラスを3分割し、週2回になります。・・・英語は正規の成績評価の対象としていません。代わりに英語科の先生たちが、個々の児童の勉強ぶりを評したコメントを渡しています。英語にアレルギーを起こさせない工夫の一つです。・・・」(
http://sankei.jp.msn.com/life/education/081101/edc0811010827002-n1.htm
。11月1日アクセス)

 そんな及び腰のやり方なら、英語「教育」なんて止めちまえっての。