太田述正コラム#2778-1(2008.9.8)
<仏ダティ法相の妊娠>(2008.10.29公開)

1 始めに

 フランスのダティ(Rachida Dati。1965年〜。42歳)法相の妊娠が、英国のメディアで大きく取り上げられています。
 ダティは、レンガ積み職人たるモロッコ人の父親とアルジェリア人の母親との間にフランスのブルゴーニュ地方で12人兄弟の2番目として生まれ、働きながら苦学して経営学と法律学の学位を取得し、サルコジ大統領候補の広報担当を務め、大統領となったサルコジによって、本年6月に法相に任命され、現在に至っています(
http://en.wikipedia.org/wiki/Rachida_Dati
。9月7日アクセス)。

 (以下、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/sep/07/france
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/sep/07/france.usa
http://www.dailymail.co.uk/news/worldnews/article-1052178/Sarkozys-girlfriend-justice-minister-Rachida-Dati-prompts-sperm-donor-rumours-refusing-father.html
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/europe/article4674060.ece
(いずれも9月7日アクセス)による。)

 フランスの少数民族出身の女性として、そしてアラブ人として、ダティは初めてフランスの大臣になった人物ということになります。
 彼女はモデルが勤まるようなエレガントな美人であり、彼女の姿を拝みたい方は、ウィキペディア上掲や英デイリーメール紙上掲でどうぞ。
 ただし後者には、大きなお腹の彼女の写真も載っています。

2 ダティ法相の妊娠

 先月は、法相たるダティにとっていささか不名誉なことに、彼女の下の兄弟二人が前科のある麻薬取引で再び懲役刑を科せられるという出来事があったところ、バカンス開けの閣議が開かれた折、ダティの大きなお腹が注目されました。
 これまでずっと独身を通してきたダティは、9月3日、長年子供が欲しいと思っていたところ、妊娠を認めました。
 現在フランスでは、婚外子が50%を超えており、このこと自体はさしてめずらしくもありません(注)。

 (注)婚外子に対する見方は、英国人はフランス人ほどおおらかではないが、米国人の目は更に厳しい。米大統領選で共和党の副大統領候補となったペイリン(Sarah Palin)・アラスカ州知事の10代の未婚の娘が妊娠して大騒ぎになっていることを想起せよ。現在のフランスでは、妻の不貞が離婚原因になることもまずない。米国は女性に選挙権を1920年に与えたのに対し、フランスは1944年と遅れたけれど、女性の開放度において、フランスは米国をいつしか大きく「抜き去った」ことになる。(ちなみに、英国の10代の女性の妊娠率はEU諸国の中で最高であることを覚えておこう。)

 しかし、彼女が誰が胎児の父親であるかについて沈黙を守ったため、様々な憶測がインターネット等でなされ、英国やドイツのメディアがこのニュースを大々的に報じています。
 フランスのメディアは、政治家のプライバシーには立ち入らないという伝統から、父親をダティが明らかにしていないことについては全く報じていませんが、消息通は、フランスのメディアのほとんどは、何週間も前から父親が誰かを知っているとしています。
 父親の可能性があるとされている一人が、サルコジの友人でもあるところの、前スペイン首相のアズナール(Jose Maria Aznar)であり、彼はわざわざこの噂を根も葉もないことと打ち消す発表まで行いました。
 もう一人、ひょっとして父親の可能性があるとされているのがサルコジ大統領です。
 ダティは、何年も前からサルコジとの関係を噂されてきたところ、サルコジの前妻のセシリアとは良い関係を維持し続けたという説と、最終的にダティとセシリアの関係は険悪化したとする説があります。
 とまれ、サルコジは、セシリアと別れて以降、米ホワイトハウスでの晩餐会等の公式行事にダティを伴った時期があり、現在のサルコジの妻であるカーラはダティとの間でサルコジの奪い合いを演じたとされています。
 当時、サルコジはダティのことを「ma beurette=僕のかわいいアラブ娘ちゃん」と呼んでいたとか。
 また、カーラはダティに激しく嫉妬し、昨年の大晦日のパーティの際には、エリゼ宮(大統領公邸)のダブルベッドを指さしてダティの方を振り向き、「あなた、ここに寝たいんでしょ」と言ったとか。
 この二人の勝負は、2月にカーラがサルコジと結婚することで決着がついたというわけです。

3 終わりに

 この話を米国の主要メディアが全く報じていないのに、英国では、大衆紙はもとより、お固いガーディアンまでが、1度ならず2度までも報じているのは実に興味深いところです。
 私に言わせれば、米国のメディアは、果たしてこれが報ずるに価するニュースなのかどうか、仮に報ずるに価するとしても、いかなるスタンスで報じたらよいか分からないのに対し、英国のメディアは例によって、韜晦しつつも、フランスのお偉方の野蛮人ぶりを高みに立って笑い飛ばしているのです。