太田述正コラム#2431(2008.3.18)
<共和党善玉・民主党悪玉論(その2)>(2008.10.12公開)

3 コメント

 皆さんもお感じになられたでしょうが、深田氏は、私の先の大戦観に近い史観を持っておられます。
 しかし、惜しむらくは、その共和党善玉・民主党悪玉論は眉唾物です。

 深田氏もさるもの、「日露戦争後から共和党セオドア・ルーズベルト政権は世界各国との戦争を想定したプランを立案し、その中には 対日戦争計画オレンジプランもふくまれていた。しかしこれは英国までふくめた主要国全てを対象(各国ごとに別のカラー名)にして立案された安保上のもので あり、日本だけを特定して狙ったものではなかった。このオレンジプランを指して「アメリカは半世紀も前から対日戦争を計画していた」と評す る意見もあるが、私はその説には賛同できない。」と予防線を張っておられます。
 しかし、遺憾ながら、この共和党のセオドア・ローズベルトこそ、オレンジ計画の策定等を通じ、半世紀弱後の日米戦争に至る布石を打った大統領であったことは、既に以前(コラム#1614、1621、1628、1629)詳しくご説明したところであり、これだけで共和党善玉・民主党悪玉論は成り立たなくなってしまうのです。
 
 もう少し付け加えましょう。
 コラム#30で「80年11月23日に、ホルブルック東アジア・太平洋担当国務次官補(当時)は、ニューヨークのジャパン・ソサエティーで行った講演で、「80年代における我々の基本的課題は、NATO、日本、ANZUS諸国と我々との主要同盟関係を強化、統合することだ。・・・今後数年間にわたって、我々は日本を米国、西欧と次第に積極的なパートナーシップに引き入れる歴史的機会に直面するだろう」と述べ、彼の上司であるマスキー国務長官(当時)は、同じ年の12月19日に、時事通信のワシントン支局長のインタビューにおいて、「日本は既に公式なNATOのメンバーだ。NATOではいつも日本のことを考えながら議論する。・・・NATOは時代遅れの地域的な機構に他ならない。もっとグローバルなものにしなければならない・・・NATOと日本だけでなく、オーストラリア、ニュージーランド、ASEANなども考えに入れていきたい」と語り、支局長の「日本が軍事的に強くなるのは周辺諸国に色々な懸念を起こしてまずいのではないか」との質問を、「そんな話は大昔の話だ・・一世代前の話だ。今日の若い人々の世代はもう忘れている」と一笑に付している。」と記したところです。
 私がこれらの発言の情報に接した時の胸の鼓動の高まりを今でもはっきり覚えています。
 言うまでもなく、この時の大統領は民主党のカーターです。

 そういうわけで、先般、「<クリントン候補>の「日本軽視」ぶりが日本側の不評を買ったため、ヒラリー候補の外交顧問を務めるホルブルック元国連大使は今年1月、同候補の声明を発表し、「日米同盟は米国のアジア・太平洋地域の基礎」と強調してみせた。「ホルブルック氏は、日本の反応を随分気にして釈明に汗をかいた」(関係者)ようだ。ヒラリー政権誕生なら、そのホルブルック氏が国務長官に就任する可能性が高いという。同氏について、越智道雄・明治大学名誉教授は、こう解説する。「クリントン政権下の1995年、国務次官補としてボスニア問題でデイトン和平合意に導き、外交手腕は高く評価されている。正真正銘、本物の外交官。アジアより欧州重視のイメージが強いが、カーター政権でも東アジア担当の国務次官補として日米関係に関与している」」(
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/yw/yw08031601.htm
。3月14日アクセス)と久方ぶりのホルブルックの登場(コラム#2333)に何とも懐かしい思いがしました。
 しかし、引用記事中に登場する越智道雄氏も、東アジア担当国務次官補当時の上記80年11月23日のホルブルック発言には言及していませんね。
 それも無理からぬものがあります。
 というのは、ホルブルック発言もマスキー発言も、当時ほとんど日本では報道されなかったからです。思うに、吉田ドクトリンと背馳する発言等は意識的無意識的に当時の日本のメディアは排除していたのです。

 惜しむらくは、この時点でカーターは共和党のレーガンに大統領選挙で敗れており、翌1981年1月に大統領を辞任することが決まっていたことです。
 ですから、これはカーター政権からレーガン政権への申し継ぎのような話であったわけですが、レーガン政権は、カーター政権の日本に対する防衛努力要請は引き継いだものの、「NATO、日本、ANZUS諸国と我々との主要同盟関係を強化、統合する」政策・・当然日本による集団的自衛権の行使が前提となる・・を追求しようとはしませんでした。
 換言すれば、レーガンは日本を米国の属国のままにとどめようと考えた、ということです。
 期待していただけに、私はがっかりしたものです。

 これだけ言えばお分かりいただけたでしょう。
 例えば、共和党のフーバー大統領(コラム#597〜599)とその後を襲った民主党のローズベルト大統領(コラム#省略)に関しては、前者は日本にとって善玉であり、後者は悪玉であったと言えるものの、全体として見れば、共和党善玉・民主党悪玉論は到底成り立ちえないということが・・。、
 
(完)