太田述正コラム#2741(2008.8.20)
<グルジアで戦争勃発(その7)>(2008.9.30公開)

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<最新状況>

1 ポーランドへの弾道弾迎撃ミサイル配備

 10日、ポーランドは米国の弾道弾迎撃ミサイル10基を2011〜2013年の間に配備するという覚書に調印しました。既に隣国のチェコは、そのためのレーダー施設の受け入れを決めており、これで米国は、米本土、グリーンランド、英国に設けられる弾道弾迎撃ミサイルシステムと同様のシステムを欧州において確保することに成功したわけです(注)。

 (注)ここで、この弾道弾迎撃ミサイルシステムそのものについて論じることはしないが、ほとんど無価値であるというコラムがガーディアンに出ている(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/aug/19/usforeignpolicy.russia
。8月19日アクセス(以下同じ))。これは私の見解でもある。ロシアは、イラン用というふれこみにいなっている上、ほとんど無価値なシステムに過剰な反応をしているわけだ。

 グルジアでの「戦争」が、長引いていたポーランドと米国との本件での交渉を一挙に妥結に導いたのです。
 ポーランドは、ロシアがいやがっていることをやるというリスクを冒すのだから、ポーランドの防空能力を高めるために、経済援助を寄越せ、パトリオット・ミサイルも配備せよ、と求めてきたところ、このたび、米国が、当面、米軍の指揮の下でポーランド陸軍が運用する形でパトリオットを配備し、将来はポーランド陸軍にもパトリオット・ミサイルを提供する、また、ポーランド陸軍の近代化に協力する、という提案を行ったこともあり、妥結に至ったというのです。
 実は障害がもう一つありました。
 ポーランド世論の多数が弾道弾迎撃ミサイルの配備に反対していたことです。
 ところが、グルジアでの「戦争」が始まってからの8月16日に行われた世論調査によれば、約半数のポーランド国民が数年以内にロシアがポーランドを攻撃するかもしれないという懸念を抱くに至っており、上記覚書調印直後に行われたもう一つの世論調査によれば、調印賛成が58%、反対は38%と、世論が大きく変化したのです。

 ロシア軍の副総参謀長のノゴヴィティン(Colonel-General Anatoly Nogovitsyn)は、このシステムを配備することにより、ポーランドは「100%、核攻撃される立場に身を置いた。」なんとなれば、ロシアの軍事ドクトリンでは、ポーランドが今回調印したように「核保有国の同盟国が<核に関してこの核保有国に>何らかの形で協力すれば」この国大して核兵器を使用することを認めているからだ、と述べたのですが、この発言にポーランドのメディアは激しく反発しています。

 (以上、特に断っていない限り
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1833678,00.html  
による。)

2 撤退しないグルジア本体内のロシア軍

 17日にロシアのメドヴェージェフ大統領がロシア軍のグルジアから撤退させると約束したというのに、19日に至ってようやく、ロシアは若干の部隊をグルジアから撤退させる動きを見せたものの、引き続き大部分の部隊をグルジアにとどめる模様です。
 ロシア軍は、グルジアの黒海に面したポチで、略奪行為防止のために同市にとどまっていた21人のグルジア兵を縛り、目隠しした上で市内を引き回しました。また、先般行われたグルジアと米国の共同訓練で使用され、米国に送り返されるべくポチの港に置いてあった米国の装甲走輪車(Humvee)5台を押収し、ロシアに持ち帰ろうとしています。ロシア軍は、グルジア軍のあらゆる武器弾薬を破壊するか押収しようとしていると上述のノゴヴィティン副総参謀長ははっきり言明しています。
 グルジア中央部のゴリの付近では、ロシア軍とグルジア軍が捕虜を交換しましたが、ロシア軍はチェックポイント用の塹壕を強化しつつあり、当分の間、グルジア本体内にとどまろうとしていることは明白です。

 (以上、
http://www.nytimes.com/2008/08/20/world/europe/20georgia.html?ref=world&pagewanted=print 
による。)

 まるでロシアは、憎まれっ子になることを自ら望んでいるかのようですね。
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