太田述正コラム#2729(2008.8.14)
<グルジアで戦争勃発(その6)>(2008.9.24)

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<ロシアがグルジア「戦争」を計画していた傍証>

 ロシアが既に7月20日の段階からグルジアのインターネット・インフラにサイバー戦争(cyberwarfare)戦争を仕掛けていた可能性が取り沙汰されています。
 また、更にその何週間も前から、アブハジアに鉄道兵を入れて線路の補修を行っていました(コラム#2725)し、戦車150両及び装甲車を待機させていましたし、空爆の対象も決定していましたし、黒海のグルジア沖には海軍部隊を待機させていました。
 そして、「戦争」の始まる1週間前からロシアがコントロールしている民兵が南オセチア内のグルジア人の村々への激しい砲撃を開始していたのです。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/13/AR2008081303359_pf.html
(8月14日アクセス。以下同じ)による。)

<ロシアの「巧妙な」プロパガンダ>

 南オセチアに入ったHuman Rights Watch(HRW)は、グルジア軍の攻撃によって南オセチアの「首都」ティンヴァリの一般住民2,000人が死亡したとのロシアの発表は著しく誇張されている可能性が高いと指摘しました。
 そして、このロシアの発表を信じ込み、怒った南オセチア「政府」軍によって、ティンヴァリ北方のグルジア人の4つの村々が焼き討ちされ掠奪の対象となった、とも指摘しました。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/aug/14/georgia.russia1
による。)
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 グルジア「戦争」がプーチンの大勝利に終わったことをもう少し具体的に説明しておきましょう。
 安全保障リスクが大きいことから、今後は新たにグルジアで石油パイプラインに投資する外国企業はいなくなるであろうこと、ロシアがグルジア(の少なくとも南オセチアとアブハジア)に今後ともロシア軍を駐留させ、グルジアににらみをきかせることになったこと、グルジア軍を容易に立ち直れないまでに壊滅させたこと、グルジアがNATOに加盟する可能性をなくしたこと、グルジアのサカシヴィリ大統領の地位を風前の灯火にすることに成功したこと、等が戦果です。
 ウクライナの西側志向に冷水を浴びせかけたこと、ロシア周辺の石油・天然ガスのパイプラインの今後について発言権を確保したこと、グルジアが南オセチアとアブハジアを回復する可能性が殆どゼロになったことも戦果です。
 しかも、停戦に応じ、サカシヴィリに退任勧告をするにとどめたことによって、西側諸国の風圧を当面かわすことにも成功しました。

 しかも、この停戦合意は、グルジアに南オセチア内での軍事力の行使を禁じる一方で、ロシア軍には南オセチアでの「平和維持」任務を今後とも実施することを認める内容ですし、南オセチアとアブハジアの今後について国際的議論を行うとの合意内容は、コソボの例にならって、それぞれの地区で住民投票を実施してグルジアからの分離を実現する道筋を付けたものです。
 (以上、
http://www.csmonitor.com/2008/0814/p01s01-woeu.html
による。)
 更にこの停戦合意は、「国際的メカニズム」についての合意がなされるまでの間南オセチアのロシア「平和維持部隊」、すなわちロシア軍が(南オセチア外のグルジア本体内で)パトロールを行い、「追加的安全保障措置」をとることを認めています(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/aug/13/georgia1)。
 この条項を「援用」して、ロシアがいかにやりたい放題のことをやっているかを列挙してみましょう。
 停戦合意がなってから数時間後に、ロシア軍の戦車大隊がゴリを占領しました。一時は、次にロシア軍はグルジアの首都トビリシに向けて進撃するのではないか、と懸念されたほどです。
 ロシアのラブロフ外相は、グルジア軍がゴリに弾薬や戦車等を放置して行ったので、安全のためにそれらを確保したまでだ、と言い放ちました。
 また、数百のロシア歩兵が燃料輸送トラックと攻撃ヘリを伴いつつ、南オセチアの外へ繰り出しました。
 更に、黒海沿岸の港であるポチ(Poti)にもロシア軍が入っており、グルジアの船を爆破しました。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2008/08/14/world/europe/14georgia.html?hp=&pagewanted=print
による。)

 (2)身から出た錆の米国の敗北

(続く)