太田述正コラム#2803(2008.9.21)
<皆さんとディスカッション(続x252)>

<バグってハニー>

 --人気者は辛いよ--

海驢さんの「日本文明」という言葉使いがちょっと気になりました。後で調べてみます。

≫英語が劣っているとか英国の文明がローマの亜流だなんて思っていませんよ≪(コラム#2801。海驢)

というのを聞いて安心しましたが、この日本、日本人、日本語が何か特別であるかのような書き方がいつも気になるのです。たとえば古英語の場合でも、ラテン文字が入ってくる前にはルーン文字が用いられてましたが、そこには発音に合わせた独自の工夫があるとのことですし
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%B3%E6%96%87%E5%AD%97#.E3.82.A2.E3.83.B3.E3.82.B0.E3.83.AD.E3.82.B5.E3.82.AF.E3.82.BD.E3.83.B3.E3.83.AB.E3.83.BC.E3.83.B 3.E6.96.87.E5.AD.97
これがラテン文字に置き換わったときでも、ラテン語にある23文字にさらに3文字付け加えられた、とのことです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%86%E3%83%B3%E6%96%87%E5%AD%97

 あらゆる言語は程度の差こそあれ、多言語からの借用もあれば、話者による独自の工夫もあるわけで、要するに日本語が中国の文字を改良して使ってるからって何なのさと。

≫「漢字の流入による日本文化の質的低下」≪(同上)

 菅家塩小路第38代ご当主塩小路光孚さんによると、菅原家というのはもともと占いをやっていた家系で、日本独自の秘伝の甲骨文字を受け継いでいるそうな。ホンマカイナ。
http://www.amazon.co.jp/%E5%BF%83%E3%81%A7%E8%A6%B3%E3%82%8B%E5%AD%9760~%E6%96%87%E5%AD%97%E3%82%92%E7%9C%BA%E3%82%81%E3%82%8B%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0~-%E5%B0%8F%E6%9E%97-%E6%83%A0%E6%99%BA/dp/4757301863/ref=sr_1_2?ie=UTF8&s=books&qid=1221890636&sr=1-2
 漢字が入ってこなかったら、と考えるのはロマンがありますが、文字がないと歴史が残らないので、古代よろしくおそらく上代の歴史も不明になってたでしょうね。

≫ずいぶんと「文化」というものを狭い範囲で考えていらっしゃる。≪(同上)

 いやだから、文化そのものの重要性はなんら否定しないですよ。私が言ってるのは「手っ取り早く金儲けしたい移民にとって移民先の文化が偉大かどうかはあまり重要でない(金さえ儲けられたらよい)」ということです。

≫「言葉が通じるからその国に移民が来る」という因果関係でない≪(同上)

 これは太田さんが言うところの上澄み・下積みの二分法で理解しないとだめではないかと。下積みの移民が主に就くのは言葉が通じることがあまり重要でない単純労働であるのに対して、私がターゲットにしているアインシュタインのような「優秀な人材」つまり上澄みにとっては言葉が通じるかどうかは肝ではないかと(言葉が通じない下積みにも将来優秀な人材が出ないとは限らないですよ)。

 実は、東北大学はアインシュタインを招聘しようとしたみたいですね。

―――
1912年(明治45年)、東北帝国大学初代総長・澤柳政太郎が、ドイツ・ミュンヘンに留学中の石原純(東北帝国大学理科大学理論物理学助教授)宛てに手紙を出し、年俸1万5000マルク(約7500円)、3年の任期で、アインシュタイン博士(チューリッヒ工科大学教授)を新設された東北帝国大学理科大学の教授として招聘できないか打診したが、実現しなかった[7]。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%B3#.E3.82.A2.E3.82.A4.E3.83.B3.E3.82.B7.E3.83.A5.E3.82.BF.E3.82.A4.E3.83.B3.E3.81.A8.E6.97.A5.E6.9C.AC

 彼はその後米国に亡命しましたけど、日本でも英語とかドイツ語が通じてたとすればどうなっていたのかなあと。

 ちなみに、このアインシュタインの発言はサイードが言うところのオリエンタリズム(東洋はこうあってほしいと思う西洋人の心のあり方、形を変えた差別意識)そのものに私には聞こえます。

<太田>

 週末で、投稿も少ないようですので、私の方からいくつかお話ししましょう。
 
1 ナチズムを克服していない欧州諸国

 コラム#2796(未公開)で、「私は現在もなお、欧州諸国はナチズムを完全には克服していないと考えています。」と申し上げたところですが、ガーディアンの記事(
http://www.guardian.co.uk/world/2008/sep/18/islam.religion
。9月18日アクセス)をどうぞ。

 「・・・反ユダヤ主義は、過去3年間でスペインで、21%から46%へと2倍以上に増えた。・・・ポーランドとロシアの三人に一人以上がユダヤ人に対して非好意的な意見を持っている。 同じ期間にドイツとフランスの反ユダヤ主義も増えた。ドイツでは21%から25%へ、フランスでは12%から20%へ・・・。これに対し、米国と英国ではユダヤ人に対する非好意的な意見は低い水準で何年も安定しており、7%から9%の間にすぎない。・・・」

2 国籍不明潜水艦事件(コラム#2791)のその後

 東京新聞の畏友半田編集委員の記事(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008091802000101.html
。9月18日アクセス)、申し訳ないけど全文を掲げて批判させてもらいます。

            記事

 海上自衛隊のイージス護衛艦「あたご」が十四日、高知県沖の豊後水道で発見した国籍不明の潜水艦。日本の領海を侵犯したことから三日間、潜水艦を捜索したが、行方はつかめなかった。発見直後に追跡を始めたあたごは、なぜ見失ったのか、潜水艦の目的は何だったのか。 
 「あれ、潜望鏡じゃないか」。朝食後、甲板に出た艦長と砲術長が左舷から約一キロの洋上に突き出た潜望鏡らしいものを発見した。あたごは音波を出すアクティブソナーを繰り返し、打った。

→SOSUS(対潜水艦網)で探知していない潜水艦が突然出現したなんて信じられませんねえ。(太田)

 反射音から潜水艦の可能性が高まり、追跡を開始。だが、追跡から一時間三十九分後、反射音は途絶え、潜水艦は海中に消えた。

 海自幹部は「消えた理由は想像できる」という。音波は異なる水温の層にある物体には反射しないため、潜水艦は水温の低い海底方向へ移動。さらに進路を変えれば追跡を振り切ることができる。

→SOSUSは海底に敷設してあるので、そんな理由で潜水艦を見失うはずがありません。(太田)

 あたごは最新鋭艦だが、海自幹部は「護衛艦だけで追い詰めるのは無理」と話す。対潜水艦戦は、護衛艦で追跡する一方、対潜ヘリコプターが先回りして音を出さないパッシブソナーを海面に投下し、双方で追い詰める連携プレーだ。
 ところが、防空能力に優れたイージスシステムを持つあたごは艦隊防空に特化しており、対潜ヘリを搭載していない。対潜ヘリ一機を搭載する在来型の護衛艦に比べ、対潜戦能力は劣るのだ。

→陸上を基地とする対潜ヘリは出動しなかったのかなあ。確かP-3Cは出動したと聞きましたが・・。(太田)

 分かりにくいのが潜水艦の意図。豊後水道付近を航行する海自や米軍艦艇のスクリュー音などを意味する「音紋」の収集だったと仮定すると、潜望鏡を上げて艦首に書かれた艦番号と音紋を照合していた可能性はある。
 だが、五キロ以上離れても読み取れるとされ、一キロまで近づいたのは不自然だ。
 逆に接近すること自体が目的と考えたらどうか。
 二〇〇六年十月、沖縄付近を航行中の米空母「キティホーク」から八キロのところに中国海軍のディーゼル潜水艦「宋(ソン)級」が浮上した。海自関係者は「中国は静粛性に優れた潜水艦の開発を進めている。秘密裏に接近して、米軍を威圧したのではないか」と分析する。
 中国やロシアの原子力潜水艦が出航すると、米海軍の原潜が必ず追尾するとされる。原潜は一カ月間も潜水航行できる海の最強兵器だからだ。だが、一日程度の潜水で電池切れになるディーゼル潜水艦には、それほど注意を払っていない。

→うーん。ものすごーく苦しい説明が続くと思いませんか。(太田)

 近隣国で四国付近まで進出できる潜水艦を持つのは中国とロシアだが、国籍は不明のまま。日本の領海に立ち入り、護衛艦に接近する威圧的な行動が、軍事的緊張につながる愚行であることだけは間違いない。

→そりゃそうだけど、いくら何でも中共にせよ、ロシアにせよ、そんなことやりますかねえ?(太田)

 実は、国営新華社通信のウェブサイト「新華網」は、日本メディアがこぞって、「今回も中国の潜水艦に違いない」という誤解を与えるような報道をしていると非難し、「これまでも鯨や魚群を潜水艦と誤認したケースは少なくない。今回もその可能性はゼロではない」と強調する記事を掲載していました(
http://www.recordchina.co.jp/group/g24013.html
。9月21日アクセス)。

 そしたら、本日、東京新聞がこの中共の報道を追認するような記事(
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2008092102000087.html
。9月21日アクセス)を掲載しました。

 「・・・防衛省は中国など近隣諸国の潜水艦の事前や事後の動きに関する情報を収集すると同時に、米軍にも協力を要請して調査した。その結果、この海域に「どこかの国の潜水艦がいた可能性はほとんどない」との結論に達した。 足摺岬沖や土佐湾はニタリクジラの生息地として知られており、クジラのヒレなどを誤認したのではないかとの判断に傾いた。・・・」

 これで一件落着?
 事実だとすれば、あのあたごが再度ミソを付けたというカッコ悪い話ですねえ。
 それにしてもこの話、日本のほかの新聞にはどうして出てないのかなあ。
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太田述正コラム#2804(2008.9.21)
<多すぎる大学生>

→非公開