太田述正コラム#2799(2008.9.19)
<皆さんとディスカッション(続x250)>

<バグってハニー> ]

 海驢さん、前回は私も工藤記者も印象論ばっかりだったので...

≫「移民増加で英語以外の話者が増加」ということであって、これは事実ですよね?≪(コラム#2797。海驢)

私もそういうふうに思い込んでましたけど、調べてみるとそんな大げさに言うほどのことではないですね。米国国勢調査局のデータです。

http://factfinder.census.gov/servlet/QTTable?_bm=y&-qr_name=DEC_1990_STF3_DP2&-geo_id=01000US&-ds_name=DEC_1990_STF3_&-_lang=en&-redoLog=true&-format=&-CONTEXT=qt
http://factfinder.census.gov/servlet/QTTable?_bm=y&-qr_name=DEC_2000_SF3_U_QTP16&-qr_name=DEC_2000_SF3_U_QTP17&-geo_id=01000US&-ds_name=DEC_2000_SF3_U&-_lang=en&-format=&-CONTEXT=qt
http://factfinder.census.gov/servlet/GRTTable?_bm=y&-geo_id=01000US&-_box_head_nbr=R1601&-ds_name=ACS_2006_EST_G00_&-_lang=en&-redoLog=false&-format=US-30&-mt_name=ACS_2006_EST_G00_R1603_US30&-CONTEXT=grt

英語以外を話す人の割合(対象は5歳以上)
13.8%(1990年)→17.9%(2000年)→19.7%(2006年)

 それで、この質問よりもっと重要なのは記事のタイトルにある「英語を喋れない『アメリカ人』が増えている」かどうかですよね。

 英語があまりしゃべれない(Less than "very well")人の割合(対象は5歳以上、自己申告)
6.1%(1990年)→8.1%(2000年)→8.7%(2006年)

 数値自体は大きくなっているので「英語を喋れない『アメリカ人』が増えている」と言い張ることもできますが、それよりも「今も20年ほど前も英語がしゃべれない米国人はそこそこいる」と書いたほうが良心的ではないかと。あと、米国はとにかく地域差が大きいので私や工藤記者が住んでいたところは平均以上の伸びを示した、というのは十分にありえます。

 英語もろくに話せないようなヒスパニックのような移民を受け入れても仕方ない、というような考え方は止めたほうがよろしいかと。たとえば、 Wikipediaでは著名なヒスパニック系米国人たちが紹介されていて、ヒスパニックがあらゆる分野で米国という国家に貢献していることがよくわかります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Hispanics_in_the_United_States
 その中には、マニー・ラミレス、アレックス・ロドリゲス、デビッド・オルティーズといったプロ野球選手も含まれますが、MLBには英語もろくに話せないヒスパニック選手がたくさんいるのではないかと。英語が話せない移民は役に立たないとは言えないですよね。

 あと、この項目もおもしろかったです。米国におけるスペイン語
http://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_in_the_United_States

≫つまり、日本において「英語第二公用語化」の必要性は低い、ということですね。≪(同上)

 私が挙げた二つの例は、英語第二公用語化は日本人一般にはほとんど影響を及ぼさない、ということを例示するためでして、日本人にとってはどうでもよいことであっても、外国人にとっては生活が便利になるのは大きな意味があると思います。

 たとえば、群馬県は日系ブラジル人が多い自治体をいくつか抱えているのですが、ググってみると、ポルトガル語・スペイン語によるサービスを既に提供してますね。
http://www.pref.gunma.jp/cts/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23572
 海驢さんが仰っる通り、放っておいても移民が増えれば外国語によるサービスは勝手に増えていきます。

 私が言っているのはどうせ移民を受け入れるのだったら、いかに優秀な人材を日本に惹きつけるかを考えたほうがよい、ということであって、そのためにあらかじめ英語を公用語にすることを提案しているわけです。もしも中国人・台湾人を多数受け入れたいというのであれば中国語を公用語化すればよいし、韓国人を多数受け入れたいというのであれば朝鮮語を公用語化すればよいのです。英語だと地域を選ばず世界中から来てもらえます。

 海驢さんは日本の文化には移民を惹きつける魅力がある、と書いてましたけど、それはそうだとしてもあまり自意識過剰になるのもどうかと。移民獲得の競争はすでに始まっていますから。「世界の人の75%は米国に来たがっている(だから移民を規制する必要がある)」なんて倣岸不遜なことを書いてる米国人の投稿を思い出しました。

<ライサ>

 親衛隊員などと言うハンドルネームを使う(コラム#2797)のは、短絡的に考えると、ナチの親衛隊を真っ先に思い浮かべるのが普通ですが(「普通ジャー無いって」?)。失礼いたしました。

 まー冗談はさておき、「・・・英語とドイツ語は同じゲルマン語派の西ゲルマン語群に属するお仲間ですから、ドイツ人が英語を学ぶというのは、例えていえば九州人が東北弁を勉強するようなものです・・・」は、あまりにも皮相的で受け入れられません。

 私は、外国語学部のドイツ語化を卒業しましたが。貴方のおっしゃるように、初めてドイツ語を習う人には、耳あたりの良い言葉、「英語はドイツ語系の言葉だ」とか、「単語も似ている」とか、「文法的にも似ている」とか(実際はかなり違う)いろいろ簡単なように言われますし、歴史的にもゲルマン語系の言語だ というのは、事実ですが、「・・・九州人が東北弁を勉強するようなものです・・・」、これはまったくおかしいです。貴方の説は いわゆる高地ドイツ語(中 部・南部方言)圏の人が低地ドイツ語(北部方言圏)北部方言圏のドイツ語を学ぶ(学ぶのではなく体験するぐらいの感覚です)という場合には当てはまるかも しれません。ちなみに全く(ちょっとオーバーかな)英語を話せないドイツ人はたくさんいます。オランダ人は違いますが。

 英語とドイツ語の違いは、単なる方言的違いと言うにはあまりにも違いすぎます。

 中国語は確かに文法的には英語(的)です。しかし、「・・・圧倒的なアドバンテージがあるのです・・・」は大げさすぎるし、学習するのには、これはたいした問題ではなく、ようは、学習態度と指導方法の違いにしか過ぎないと思います。日本の英語教育は時間はかける割には、生ぬるいし、一般的学習者もかなりいい加減・・真剣さが無い・・のが一番の原因で、構文的に言語体系が似ているとかは、たいした問題とはならないと思います。

 「・・言語学上の観点が欠落している・・・・」については、何を意味するか分かりません。 第2公用語化の議論について言語学が影響するとは思えません。 公用語化するための推進力となる理由としては、言語的に似ているかどうかが問題となるとは思えませんし、それで決まるわけがありません。私は、好き嫌いは 別として、、、第2公用語が、どうしても必要な状態だとすれば、それだったら、いわゆる朝鮮語とか中国語を第2公用語化したほうが、よほど日本のためになると思います。しかしこれと移民積極導入とは別次元の話ですが。

 第2公用語が不必要だということは、海驢さん等がおっしゃっていることで十分にして全く納得いたします。

<バグってハニー>

 --日本人と英語--

親衛隊員さんへ。

 お察しの通り、私には言語学のバックグラウンドはありません。ですから、親衛隊員さんの「ドイツ語と英語」と「九州弁と東北弁」の類似性の比較にいかほどの妥当性があるのか、見当も付きません。できれば典拠をつけてほしかったです。ヨーロッパの言語は文字が共通しているのでずるいなあと私でも思いますが。

 それで、私が注目してほしかったのは「(ドイツの大学院では)英語でのプレゼンテーションが課せられていて、博士論文も英語で書く」の部分ですね。日本の高等教育でもこれくらいの努力をさせた上でそれでも日本人学生の英語力に問題があるというのであれば、「日本語を母語とする者にとって英語習得は不利なのだから仕方ない」というのも納得できるのですが、努力もしないうちにそれを才能のせいにされてもなあと。

 私の場合、英語教育と呼べるのは大学の教養課程でおしまいでした。その後も英語文献等必要に応じて読みますけど、これでは英語によるコミュニケーション能力はまったく身につかないです。現状では、英語で書く、英語で話すという、研究者にとって不可欠な技能の習得はまったく個人の努力だけにかかっているわけです。このことに不満を持っている研究者は私以外にもたくさんいると思います。

 また、個人的な体験ですけど、米国で高等教育を受けた日本人はおおむね英語が流暢で、他の国から来た人と比べて遜色ないです。ですから、日本人にとって英語を習得することは圧倒的に不利だとは思えません。やり方の問題ではなかろうかと。日本では中・高・大学(最近は小学校も?)と英語をやるわけで、それにもかかわらず英語が使い物にならないというのであればなんとも無駄な話だと思います。

 移民とは関係なかったですね。

<北樹>

 初めてメールを送ります。
 皆さんとディスカッションで英語教育が取り上げられていますが、英語の早期教育が幼児の思考言語を混乱させるとことが場合があり子供が物事の理解をする妨げになる。 
 国際結婚で同時に二つの言語を幼児が曝されるとしっかりとした思考ができなくなりどちらかの言葉を5〜6年ちゃんと覚えるまで一切やめさせることが必要になるそうです。 英語の早期教育を学校で押し付けて、子供の思考機能についてはほったらかしになってはいるのでないかと気になります。
 典拠についてはつけたかったのですがネットではまだ見つけられませんでしたすみません。 
 あと脳科学が法律に反映される時は遠くないのでしょうか。

<太田>

 地中海世界や欧州の大都会では、2カ国語以上を子供の時から身につけた人などざらです。
 このような人々が物事の理解力が劣っているなんてことは私の経験に照らして全くありませんよ。
 ご自身忸怩たる思いがおありのようですが、こういう議論は典拠抜きではだめですよ。
 また、「あと脳科学が法律に反映される時は遠くないのでしょうか。」という問題提起は抽象的すぎます。もう少し例を挙げつつ、具体的な問題提起をしてください。
 
<大阪の川にゃ>

 竹島問題で激昂した退役韓国軍人がバカ騒ぎをした件の追加です。
 今上天皇の肖像を韓国の街中で焼かれた件について、コラムニストの勝谷誠彦氏(読売テレビ『あさパラ!』)が解説していました。それによると、デモ隊を取り囲んでいた警備隊はいつもと違い、消火しようとしなかったのではないか、という見方です。あれだけ多くの警備の人間がいたのに消火できないのはおかしい、ということです。

 天皇陛下の初訪韓はずーっとずーっと先になりそうですね。

<バグってハニー>

 警備隊が消極的に反日の韓国人たちを煽っているという趣旨だと思いますけど、こういう写真だけをわざわざ紹介する(コラム#2793)というのも消極的に日本の反韓感情を煽っていることにはならないでしょうか。

 ネットを見てますと、見ているこっちが恥ずかしくなるようないわゆる嫌韓厨によく出くわすのですが、そういうのが日本を代表していると思われると非常に困るなあと。韓国の中にも理性的な人はいるわけで、こういう明らかに頭がおかしい人たちのことをことさら強調しても仕方ないと思います。

 お怒りになる気持ちはよくわかるのですが。

<読者NT>

 アジアの田舎者です。
 移民について、愚生もあまり賛成したくないのです(特にお隣の人々)が、先日、おや!と思うことがありました。

 いつもマラッカでゴルフをします。パートナーは地元のチャイニーズで、銀行員、元国家公務員、自営業などです。
 いつもキャデイーは使わないのですが、クラブマネージャーが、お願い田舎者さん、使ってやって、誰も使ってくれないの(女性マネージャー)と言います。
 で、一人頼みました。以前このクラブのキャデイーは、インドネシアかフィリッピンの若い女性でした。 
 ところが、中国人のキャデイーです。皆20歳前後で18人、若い女性はどこも同じでしょうか賑やかです。
 どこから来たの?と筆談します。
 「重慶から来ました。」 
 皆同じ?と愚生、「そう四川省です。」愚生少しヤバイカナ、なにせ、この前の戦争のこと、 この前の反日デモ、サッカー試合の際の暴動など、甦ります。
 再び筆談、「地震大変」 と 愚生 「中国嫌日本人、日本鬼子」だろ?
 キャデイー、「NO!Japan Verry Kindry」と書きました。(英語が少し判る)
 これが、おやっ!と思ったことです。彼女達の本心なのか、少し疑問ですが、その表情には嘘は見えません。

 日ごろ、Blog、Net Newsなどで知る中国とは異なるところがあるのかも、と たったこれだけですが、もっと、お隣さんのこと、知る必要があるかと、思った次第です。
 まだ書かなければならないことがありますが、(特に地元チャイニーズのこの時の反応)愚生が書き出すと冗長になります。

<ワイズクラフト>

 いつも貴重なコラムを読ませていただきありがとうございます。
 ところで、ワイドショーをみていたらこの話題が…

民主党都議の報告書「盗用」:他文書を引き写し? 共産党が指摘 /東京
http://mainichi.jp/area/tokyo/news/20080912ddlk13010202000c.html
新たな論文盗用疑惑が浮上 民主都議視察団
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080910/crm0809102255049-n1.htm

 これを見て、昭和3年生まれの父が、「共産党は嫌いだが、不正のチェック機能として必要かも知れない。」と言っていたことを思い出しました。
 すると政権交代が実現した場合、

≫なぜ政権交代が実現すると、政官業の三位一体的癒着構造が打破されるのかについては何度もご説明してきているところですが、一言で言えば、それは野に下った自民党勢力が、論理必然的に鵜の目鷹の目で、民主党を中心とする新しい与党によるこの構造の再構築を許さないであろうからです。≪(コラム#2787。太田)

となり、一般人(昭和3年生まれの父)が考える共産党の存在価値がなくなります。
 政権交代した暁には共産党の未来も消滅していくと考えてよろしいのでしょうか?

<太田>

 政官業の癒着構造が打破されれば、癒着構造がらみの腐敗はなくなります。
 しかし、その場合でも、それ以外の政治や官僚機構や業界の不正、腐敗はなくならないでしょう。
 その限りにおいては、不正チェック政党としての共産党の存在意義は、依然残ります。
 とはいえ、政官業の癒着構造が打破されれば、そのジュニアメンバーであった主要メディアによるチェック機能が高まることもあり、共産党の存在意義は大幅に低下することになるでしょう。
 そんな暁には、共産党は、グローバリズム反対政党ないしグリーン政党へと衣替えせざるをえないのではないでしょうか。

<バグってハニー>

 
 コラム#2798「性科学の最新状況(続)」を読みました。
ventral pallidumの一般的な訳語は腹側淡蒼球です。ハタネズミの研究には、コラム#2429で私も少しだけ言及してます。ご参考までに。

≫仮に人間の男性には上述の遺伝子が備わっていないとすると、彼らが愛を形成して単婚を維持するためには、全員がフロムの主張通り愛の技術を習得する必要があるけれど、将来は、愛の形成薬の助けを借りることによって、愛の技術の習得なしに全員が愛を形成できるようになるかもしれないし、仮に人間の男性には上述の遺伝子が備わっている人と備わっていない人がいる、あるいは上述の遺伝子の働きが十分な人と不十分な人がいるとすると、現在は、愛の技術の習得が必要な男性と不要な男性が存在するけれど、将来は遺伝子が備わっていない男性も遺伝子の働きが不十分な男性も、愛の形成薬の助けを借りることによって、愛の技術の習得なしに愛を形成できるようになるかもしれない、ということになります。≪(コラム#2798(未公開)。太田)

 余計な先回りかもしれませんが、ヒトの男性でもバソプレシン受容体の遺伝子型が結婚生活の維持に大切であるとの研究がつい先日発表されたところです。

http://72.14.235.104/search?q=cache:E3s_xAWRsSYJ:http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080902-OYT1T00527.htm
男性の“離婚遺伝子”発見、「破たん」か「危機」が2倍
 【ワシントン=増満浩志】男性の結婚生活の成否に影響を与える遺伝子が、スウェーデン・カロリンスカ研究所などの研究で見つかった。
 この遺伝子には様々な型があり、うち1種類を持つ男性は、結婚が危機にひんした経験のある人が多かった。この成果は、近く米科学アカデミー紀要に発表される。
 この遺伝子「AVPR1A」は、バソプレッシンというホルモンを脳内で受け止める物質をつくる。
 スウェーデンで成人約2000人について調べた結果、この遺伝子が「334」という型の男性は、妻に不満を持たれている割合が高く、過去1年間に離婚など結婚生活が破たんしたか、その恐れのあった人の割合が、他の型の男性の2倍以上だった。女性は遺伝子型の影響がみられなかった。

(2008年9月2日14時26分 読売新聞)
―――

 太田さんが後でコラムで言及するつもりだったとしたらごめんなさい。ついでにWPの記事も紹介しておきます。

'Bonding Gene' Could Help Men Stay Married
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/09/01/AR2008090101712.html

<太田>

 いやーさすがプロですねえ。助かりました。
 コラム#2429のことを忘れていたことは申し開きできないけれど、言及された讀賣新聞の記事もワシントンポストの記事も、私の夏休み中の記事なので、気付かなかったのもやむをえなかったと思います。
 実は、夏休み中に内外記事のダウンロードだけはやっていた(しかし爾来、一切読む時間はとれていない)のですが、その中にこの二つの記事は入っていませんでした。
 やはり、夏休み中で集中力が十分でなかったのでしょうね。
 ただ、他人を批判しちゃいけないのですが、コラム#2798で私が拠ったNYタイムスの記事の記者
http://judson.blogs.nytimes.com/2008/09/16/a-commitment-pill/index.html?ref=opinion
が、上記2記事で言及されていた人間に関する研究成果に全く言及していなかったのは怠慢ですね。
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太田述正コラム#2800(2008.9.19)
<性科学の最新状況(続々)>

→非公開