太田述正コラム#2709(2008.8.4)
<中共のスポーツ事情>(2008.9.16公開)

1 始めに

 五輪開幕を目前に控える今、中共のスポーツ事情に触れておきましょう。

2 エリートスポーツ

 中共では、かつてのソ連に倣った上海等に国立のスポーツ学校があり、低きは5歳から25万人以上の生徒が厳しい訓練生活を送っています。
 実績をあげることができなかった生徒は、しばしば15歳か16歳でリタイアしますが、スポーツ学校以外の学校は学業成績追求一本槍であるため、適応するのが容易ではないようです。
 欧米の専門家は、これらのスポーツ学校がスポーツの訓練だけを強調し、ほかのすべてのことを無視していることで子供達の知識と倫理観が歪なものになってしまっていると批判しています。
 西側世界に存在するスポーツ・クラブに類するものは中共には存在しません。
 これは、スポーツ・クラブだって民主主義の基盤の一つであることを考えればあたりまえのことかもしれません。
 よって、国立にスポーツ学校なかりせば、現在の中共の高レベルのスポーツは存立しえないと言ってよいでしょう。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/08/02/AR2008080201271_pf.html  
(8月4日アクセス)による。なお、部分的にロサンゼルスタイムス後掲も典拠とした。)

3 大衆スポーツ

 大部分の中共の人々は、運動する場所が全くありません。
 政府がスポーツ・エリート用の施設にしかカネを出さないからです。
 現在、10人に1人しか国民体力基準をクリアしていません。これは2000年に比べて20%の下落です。
 老齢により仕事を退いた中共人々の約47%が毎週スポーツをしています。
 これに対し就労人口の14%しかスポーツをしていません。
 ちなみに、2005年の調査によれば、米国の全女性の47%、全男性の50%が何らかのスポーツをしています。
 6月に発表された調査によれば、中共の都市住民の約60%は、スポーツをする場所がないと答えています。米国の一人当たりスポーツ施設面積は、中共の16倍であることを考えれば、当然でしょう。
 このスポーツ・エリート中心の中共の体制は、かつてのロシアや東欧、そして現在のキューバや北朝鮮の体制と同じであり、政治体制そのものの変革なくして変わることはない、という見方がもっぱらです。
 中共では、中学校の時に誰もが国の体力試験に合格しなければなりません。
 しかし、そのために生徒達は何ヶ月も重量挙げや屈伸運動やランニングをやるけれど、試験が終わると何も体を動かすことはやらなくなってしまっています。
 太りすぎで、ちょっとやそっとのトレーニングでは試験を通りそうもない子供の場合は、親がタバコを15〜30米ドル相当賄賂として先生に送って目こぼしをしてもらっているようです。
 なお、生徒達は全員、毎日10分間徒手体操をやらされますが、これはストレッチに毛が生えた程度に過ぎませんし、その目的は画一性と規律の付与であり、北朝鮮のマスゲームを思い出させる代物です。
 2005年の調査によれば、スポーツ施設の約85%はスポーツ・エリート用であり、仮に一般市民にもこれら施設がタテマエ上は開放されている場合でも、実際には使わせてもらえず、使わせてもらえるとしても、入場料をとられるようです。

 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-fit3-2008aug03,0,5896188,print.story
(8月3日アクセス)による。)

4 終わりに

 経済は相当程度市場経済化したけれど、ことスポーツに関しては、中共は共産主義体制そのままである、ということがお分かりいただけたでしょうか。
 その中共が、今回の五輪で金メダル数において世界一になるかもしれません(
http://diamond.jp/series/sports_opinion/10021/
。8月4日アクセス)。
 これは、決して中共の人口が世界一の経済大国だからではない、ということをわれわれは肝に銘じる必要があります。