太田述正コラム#2635(2008.6.27)
<北朝鮮テロ支援国家指定解除へ>(2008.8.18公開)

1 始めに

 26日、北朝鮮から核開発の申告書が提出され、米国政府はその見返り措置として、テロ支援国家の指定解除を議会に通告するとともに、対敵国通商法の適用除外を布告しました。
 そしてこれを受けて、27日、北朝鮮は、寧辺にある原子炉に通じる冷却塔を爆破しました。
 (以上、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2008062702000143.html
http://www.asahi.com/international/update/0627/TKY200806270292.html
(どちらも6月27日アクセス。以下同じ)による。)

 一体現況をどう認識すればよいのでしょうか。簡単な整理を行ってみました。
 
2 まだほんの少しの変化に過ぎない

 「米国は国内法により、国際機関の米国人理事はテロ支援国に対するあらゆる支援に反対するよう規定してきた<が、>・・・北朝鮮がテロ支援国という足かせから開放されれば、原則として国際通貨基金(IMF)や世界銀行などからの融資を受ける資格が得られる。・・・また、27日には敵<国通商>法の適用対象からも外され、米国の金融機関との取引や貿易も可能となる。さらに現在米国で凍結されている3170万ドル(約33億9400万円)の北朝鮮関連資産の返還も要求することができるようになった。」(
http://www.chosunonline.com/article/20080627000017
 「しかし、・・・当分の間、米国から北朝鮮にカネが流れ始めるとは考えにくい。というのは、北朝鮮は売るものがほとんどなく、使えるカネに至ってはもっとないからだ。」(
http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2008/jun/26/nuclear.korea

 「しか<も>、・・・北朝鮮はこれら二つの措置以外にも、国連や米国からさまざまな制裁を受けている。中でも代表的なものが2006年に北朝鮮が核実験を強行した際、中国も支持して採択された安保理決議文1718号だ。この決議は、国連憲章の中では軍事行動規定に次ぐ強い条項である7章41条を土台として作成されており、すべての加盟国はこれを実行に移す義務がある。北朝鮮に大量破壊兵器関連物資やぜいたく品の輸出を禁じ、必要な場合には金融資産の凍結、船舶の臨検を行うことなども明記されている。
 米国は主に冷戦時代に制定された対北朝鮮制裁措置を、今も二重三重に維持している。米国商務省は輸出管理法により、人道物資を除く北朝鮮への輸出を統制している。武器輸出統制法では北朝鮮との防衛関連物資の取り引きを禁じている。また対外援助法は北朝鮮への援助を制限しており、北朝鮮に対する最恵国待遇を行うことを禁じている。輸出入銀行法は北朝鮮との金融取引を制限している。それ以外にも国務省は国連駐在の北朝鮮外交官の活動範囲を制限しており、ニューヨーク近郊から出る際には許可を受けなければならないのも制裁の一環だ。その結果、実質的に北朝鮮が受ける恵沢は、北朝鮮が期待するほど大きくはないとの分析もある。」(
http://www.chosunonline.com/article/20080627000018

3 しかも、米国の措置は可逆的

 次の米大統領になることがほぼ確定的なオバマ上院議員は、次のような声明を発出しました。

 「<核開発の>申告書はまだ入手できていない。そこで米議会はそれを審査する機会がまだ与えられていない。北朝鮮のテロ支援国家指定を解除するするかどうかを判断する前に、米議会はこの45日間で北朝鮮の申告書の適切性とその検証手順を精査する必要がある。諸制裁措置は北朝鮮を行動させるための圧力の梃子として不可欠だ。これら<諸制裁措置>は北朝鮮の実績に応じてのみ撤廃されるべきだ。もし北朝鮮がその諸義務を果たさないようなことがあれば、われわれは速やかに解除された諸制裁措置を再導入するとともに、新たな諸制裁措置の導入を検討しなければならない。
 われわれは、結果を生み出すところの、北朝鮮との直接的かつ積極的な外交を引き続き追求しなければならない。目標は明確でなければならない。北朝鮮の核兵器計画の完全かつ検証可能な除去だ。・・・われわれが前進する際、北朝鮮がその諸義務をきちんと果たしていることが明確な場合以外に、これら交渉における梃子を引っ込めてはならない。」(
http://thecaucus.blogs.nytimes.com/2008/06/26/mccain-and-obama-on-north-korea/
 つまり、オバマは大統領になってから、必要があればいつでもテロ支援国家の指定や対敵国通商法の適用を復活させると言っているわけです。

4 終わりに

 他方、北朝鮮の方は、2007年の初期から、ゆっくりとではあっても、寧辺の原子炉の解体を続けてきており(
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1818092,00.html
)、これを再組み立てするといっても容易なことではありません。
 勝負の結果は明かですよね。
 金正日の敗北です。
 今後、北朝鮮の核能力の完全撤廃まで、ブッシュ政権、そしてその後に来るオバマ政権は、北朝鮮を締め上げ続けることでしょう。