太田述正コラム#2621(2008.6.20)
<欧州配備米核爆弾>(2008.8.13公開)

1 始めに

 秘密の扉の奥に隠されてきた、欧州配備米核爆弾についての情報が一部明るみに出ました。
 (以下、
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1816035,00.html
http://www.fas.org/blog/ssp/2008/06/usaf-report-%e2%80%9cmost%e2%80%9d-nuclear-weapon-sites-in-europe-do-not-meet-us-security-requirements.php
http://en.wikipedia.org/wiki/B61_nuclear_bomb
(いずれも6月20日アクセス)による。)

2 欧州陸上貯蔵米核爆弾

 米国は現在、NATOに加盟する欧州6カ国(ベルギー、ドイツ、オランダ、イタリア、トルコ、英国)に推定200〜350個の B61 核爆弾(注1)を配備(正確には、兵器貯蔵・保安システム(WS3=Weapon Storage and Security System)なる地下壕に貯蔵)しています。

 (注1)水爆弾(thermonuclear bomb)。弾頭威力は戦術核クラスから戦略核クラス(広島に投下されたものの10倍の威力)のものまである。この核爆弾は、仮に盗まれたとしても、爆発防止措置が施されているので爆発させることはできないが、核物資を取り出すことにより、いわゆるダーティー・ボンブや初歩的核爆弾に転用することが可能。

 大部分の核爆弾は、米空軍基地に配備されているところ、ベルギー、ドイツ、オランダ、イタリアでは、各国の空軍のそれぞれ一箇所の基地にも配備されています。
 ただし、その場合でも、米空軍の兵器支援隊(注2)がそれぞれの核貯蔵庫を管理し警備しています。

 (注2)Munition Support Squadron=MUNSS。これを統括しているのは米第38兵器支援集団(38th Munitions Maintenance Group)だ。

 しかしこれら核爆弾は、有事には、米国大統領の許可の下で、ホスト国の空軍の管理に移され、当該国空軍のF-16等の軍用機に搭載されて使用されます。

 このたび、米空軍の内部監査の結果、これら基地の貯蔵庫の塀や保安システムについて修理が必要であったり、兵器支援隊と協力するホスト国の保安要員が不足していたりその訓練が不十分であること等が分かりました。
 9ヶ月間徴兵された者が保安要員になっていたり、保安要員が組合に入っているケースすらあったというのです。
 このうち一箇所、恐らくドイツのBuchel独空軍基地かイタリアのGhedi Torre伊空軍基地のことであると考えられています、の状況が特に悪いので、米空軍はそこでの貯蔵を中止することになりました。
 望ましいのは、核爆弾をすべて米空軍基地に移すことなのですが、これはNATO創設以来の加盟国同士の負担分担(burden-sharing)精神に反することなので、米国としてもどこまで行うか慎重に検討しています。
 ちなみに、今年1月に初めて自国空軍の基地に米核爆弾が配備されていることをベルギーの国防相が明らかにしたところ、同国の野党議員達からただちに撤去するよう求める声が噴出したところです。ドイツでも同様の声が出ています。
 また、2001年にギリシャ空軍がB-61を搭載できない戦闘機を発注したため、米空軍は、ギリシャの空軍基地に配備していた同核爆弾を撤去した、という経緯があります。
 なお、以上のような、核配備計画は、NATOとして決定されたものではなく、米国とホスト国との二国間で合意されたものであり、その変更も当該二国だけの合意でなされることになります。

 マケイン米共和党大統領候補は、5月27日、大統領に当選した暁には、「同盟諸国との緊密な協議を行いつつ、米国とロシアの欧州における戦術核兵器の配備を削減し、あるいは望むらくは撤廃すべく、その方策を検討したい」と述べたところです。

3 終わりに

 日本に、自ら核武装するオプション(自分で核兵器を開発・生産する方法と核兵器を米国から購入する方法がある)と非核三原則を緩和するオプションのほか、その中間形態であるところの、航空自衛隊基地に米核爆弾を米空軍の管理の下で貯蔵し、有事に当該核爆弾の管理権限の移管を米国から受け、核爆弾を航空自衛隊の戦闘機に搭載して使用する、というオプションもあることが分かりますね。
 いずれにせよ、まずやらなければならないことは、米国との間で日本に係る有事における米国の核使用計画について話し合うことです。