太田述正コラム#2589(2008.6.4)
<日本文化チャンネル桜収録記 2>(2008.7.8公開)

1 始めに

 今度は、私の考えを丁寧に説明すると宣言したにもかかわらず、時間が限られたこともあってそうは問屋が卸しませんでした。お恥ずかしい次第です。

2 収録雑記

 収録が全部終わってから、西部邁(1939年〜)氏に挨拶したところ、私の収録中の「大災害は民主主義独裁体制の体制変革の好機」との発言(下出)の意味を問われて、「積極的に人道支援を行うことで、被災者達に、日本はよくやってくれるが、自分達の国の政府はダメだ、という気持ちを抱いてもらうということですよ」と答えました。
 収録中の私の発言が舌足らずであったため、西部氏のような人にまで私の言いたいことがきちんと伝わっていないことが分かり、汗顔の至りってところです。

 この局での前回の収録の時は、私と残りの全員のパネリストが対峙する感じになったと申し上げたと思いますが、必ずしもそうでなかったらしいことが分かりました。
 というのは、前回も出演された川村純彦氏が、中共の海軍力整備は、(旧ソ連のヴァリャーグ級の)空母建艦計画も含め、対米核抑止力を確保するためであることを強調されていたからです。つまり、中共が空母を持つとしても、それは兵力投入用ではない、つまりは着上陸侵攻用ではない、だから日本向けではない、ということを示唆されていたということです。
 同氏はそのほか、中共の海軍力整備は、インド洋から南シナ海にかけての中共のシーレーン防衛のためでもないことも指摘されていました。いや、そもそも、いかなる国の海軍もシーレーン防衛はできないし、そんなことは考えていない、とまでおっしゃっていました。
 ちなみに、この部分は、経済専門家である田村秀敏氏の発言を糺されたものであるところ、田村氏は、先週に引き続いての同局出演らしいのですが、軍事問題にも言及しつつ、中共を中心とする世界の経済情勢について、傾聴に値する発言をたくさんされました。

 (ちょっと脱線すると、川村氏と田村氏は、写真やグラフのフリップを何枚も使って話をされており、大変効果的だと感じました。
 A-4で私の注文に応じて、TV出演用のフリップをつくっていただける読者を公開コラムで募集しようかと思っています。つくっていただいたデータをインターネットで送ってもらい、私が印刷し、ボードにクリップ等で貼り付けて使用するわけです。当然、名誉有料読者扱いにさせていただくつもりです。)
 
 ちょっと貧乏くじを引いた感じだったのが潮匡人氏です。
 私が改めて持ち出した日本属国論に、西部氏が当たり前だと言わんばかりに同調されたことと、先程も申し上げたように、川村氏が結果的に私の、日本への軍事的脅威ナシ論への援護射撃をされたことから、本日はいささかやりにくそうでした。
 また、コラム#2588で触れた朝日の記事
http://www.asahi.com/politics/update/0603/TKY200806030364.html
等に掲載されている事柄に言及しつつ、潮氏が、さぞかし中共は慌てているだろう、めいた話をされたことに対し、私から、在韓米軍(と在日米軍)は二つ帽子を被っており、(朝鮮)国連軍でもあること、国連軍としては日本も締約国となっている国連軍地位協定で規律されることになるが、こちらの方には事前協議条項も事前協議議事録も存在しないこと、従って、朝鮮有事の際には在日米軍は当然日本との事前協議なしに朝鮮半島に出動できること、そんなことは、以前から中共にせよ北朝鮮にせよ、百も承知のはずであること、を指摘しました。
 ではどうして日米間で「朝鮮有事の際、日本政府との事前協議なしに在日米軍が軍事作戦に着手することを容認する」議事録がつくられた(上記記事)かですが、それは法律主義の米国として、念のため確認を取ったということだろうと付け加えました。
 また、最近米国は、普天間移転問題等での日本のやる気のない対応に大層怒っていると潮氏が言われたので、そんなことは昔からだ、私が防衛庁を飛び出した大きな理由は、米軍が防衛庁や外務省の不真面目な仕事ぶりに怒り狂い、両省庁を軽蔑の念で見ていることに危機意識を持ったからだ、と反論しました。
 
 (またまた脱線ですが、どうして通常のTV番組では出演者にメークをするのでしょうね。顔色が見栄えがするということなのでしょうが、フルハイビジョンで見ると、知っているだけに、むしろ塗りたくったメークが、気になって仕方がありません。「桜」ではメークをしませんが、それでよいのではないでしょうか。)

 パネリスト中の最高齢者であられる西尾幹二(1935年〜)氏は、コラム#2588で触れた日経ビジネスの記事
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20080523/158726/
等に掲載されていることに言及するなど、幅広く、最新の各種動向をフォローされている様子であり、その若々しさに舌を巻きました。
 松村氏(名前はコラム#2588参照)は、私から一番見えにくい場所に座っておられたこともあり、申し訳ないが、何を話されたかほとんど覚えていません。
 私からはこのほか、米アフリカ軍創設の顛末やオバマ論を話しました。
 また、ソ連崩壊によっても自由民主主義の勝利なるフクシマ流の「歴史の終わり」は到来せず、自由民主主義諸国は、政教一致のイスラム原理主義や、民主主義的独裁国家、すなわちビルマのような軍部独裁国家や中共のようなファシスト国家の挑戦を受けて現在に至っていること、を話しました。そして、ナチス等が(軍事的に)外に出て行ったので滅びたことを教訓に、現在の民主主義的独裁国家は、外国と交易はしても、(軍事的には)殻の中に閉じこもることで延命を図ろうとすると思う、と述べました。更に、これらの民主主義的独裁国家を自由民主主義化する契機になる可能性があるのが、大きな自然災害の発生である、という趣旨の話を付け加えました。

 収録が全部終わった直後に、司会の水島氏(「桜」代表)が、「太田さんのように真剣に考えている人が防衛省(庁)に他にもいたか」とお尋ねがあったので、「皆無だ。何のトクにもならないことを考える変人など他にはいなかったということだ。そういう意味では皆さんも変人だということになるが・・。」と答えたところ、「どうすればよいのだろうか」と重ねて尋ねられたので、「だから私は、政官業の癒着はこんなにひどい、自衛隊もこんなにひどい、こんなに役に立たない、といった話をみんなに対してあえて行い、彼らにショックを与え(ることで、何とかしなければいけない、と思わせようとし)ているのだ。」と答えておきました。

3 終わりに

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