太田述正コラム#2580(2008.5.31)
<「朝生」出演記>(2008.7.4公開)

1 始めに

 さあ、書こうと思ってテレ朝に持参したカバンを開けたら、もらったはずの番組台本が入っていません。
 しかし、結局台本を読まずじまいで番組収録が始まり、他のパネリスト達も読んでいる人を見かけなかったので、大したことは書いてないのだと思うことにしましょう。
 
2 「朝生」出演記

 (1)著しく散漫な内容

 事前に大部屋に集合するし、その後の別室での合同打ち合わせもあり、また、番組が始まってからも何度もCM休憩が入るし、番組が終わった後、ビールと軽食の打ち上げもあり、パネリスト同士で何度も懇談する機会があったことは大変結構でしたが、番組内容は著しく散漫なものであったと思います。
 パネリストの一人の中野雅至氏との会話をご披露します。

中野:まだ、始まってからこれだけしか時間が経っていないのですね。大変長く感じます。
太田:私もそう思っていたところです。
 以前、ミニTV局でやはり3時間の討論番組に出演したのですが、その時はあっという間に収録が終わった感じがしました。
 要するに内容が退屈だから長く感じるのでしょう。
中野:その通りだと思います。
太田:後期高齢者医療制度についての細かい話などどうしてする必要があるのか、さっぱり分かりません。
中野:まったくそうですね。

 要するに、議論の中で私が指摘したように、官僚機構というのは、政治・行政システムの下位システムであり、本来政治家によってコントロールされる存在にほかなりません。
 だから、行政システムに焦点をあてて議論をしてもいいのだけれど、その場合、政治との関係において議論をしなければマスターベーションに終わってしまうのです。
 では議論をどのように進行させるべきだったのでしょうか。
 私だったら、こうです。

一、官僚機構が機能していない。(国家公務員制度改革基本法案が成立する見通しになったことは、官僚機構再生に向けての第一歩に過ぎない。)
二、残された最大の問題は、政治家が官僚機構を(人事面でも政策立案面でも)ほとんどコントロールしていないことだ。
三、どうしてそうなってしまったのか(=どうしたらよいのか)。

という進行でしょう。
 個々の政策問題については、この議論をする過程で言及する、という扱いにとどめるべきだったと思います。
 私としては、結論が、日本が(米国から)自立しておらず、しかも(カネの面やヒトの面で)鎖国しているからだ、換言すれば、ガバナンスが確保されておらず、そのこととも相まって、部分最適化思考に陥っているからだ、ということになって欲しいわけですが、それはともかく、少なくともパネリストに、私以外にも外交・安全保障のバックグラウンドを持った人物を何人か入れなければならなかったのです。
 官僚上がりの人間がパネリスト12人中8人(公益法人勤務歴のある若林さんを含めれば9人)というのも多すぎました。
 その結果今回の討論はほぼ、政策問題たる、後期高齢者医療制度とか消費税とか地方分権等のドメスティックな諸問題についての、しかも、数字を交えた細かい制度論の話といった官僚的議論のみに終始してしまったのです。
 つまり、テレ朝の企画とパネリストの人選に問題があったと私は思うのです。
 これに加えて、司会の田原総一朗氏にも大いに物足りなさを覚えたことを付け加えておきましょう。

 (3)若林亜紀『公務員の異常な世界』(幻冬舎新書)

 最大の収穫は、パネリストの一人である若林さんから上梓されたばかりの表記著書を贈呈されたことです。(パネリスト全員が贈呈されていました。)
 15分程度で斜め読みできる本ですが、面白かったところをご紹介しましょう。

 私が知らなかったことが書いてあったのが次の箇所です。

 「トランスペアレンシー・インターナショナル(TI)<によれば、>・・・07年の日本の・・公務員と政治家<の>・・・清廉度<の>・・・07年度の日本の順位は180カ国中・・・17位でした。1位はデンマーク、イギリスは12位でドイツが16位、フランスが19位、アメリカが20位、韓国が43位、ブラジル、中国、インドが72位に並びます。・・・過去1年間に賄賂を支払った経験がある人は、全世界平均で13%ですが、日本は1%にすぎません。アフリカは42%、アジア・太平洋平均で22%、ラテン・アメリカで13%です。」157〜158頁)
 「働いている人といない人をひっくるめた、定年退職者の平均年収は506万円でした。これは、・・・民間企業従業員の平均年収435万円を上回ります。」(95頁)
 「公務員<が>・・・巨額の退職金と厚い年金の両方がもらえるという国は日本だけのようです。」(103頁)
 「名古屋市では、一番利権を握っているのは与党の自民党だけど、民主党も自民党のマネをして役人の言いなり・・・」(199頁)

 また、基本的に特別職国家公務員ばかりの、しかも労組がない防衛庁(省)育ちの私には目新しかったのが次の箇所です。

 「役所に入るには議員か役人幹部のコネが効く・・・小さい市町村ほど露骨で、口利きの相場は、一人につき2、300万円・・」(23頁)
 「国家公務員一般職80万人・・・のうち、46%にあたる37万人が試験なしで採用されていました。」(26頁)
 「公務員労組は首長や議員の選挙の際、組織一丸となって票と金で候補者を応援するので、首長や議員も頭が上がらない・・・。また、民間企業に比べ労組専従員の割合が高く、就業時間中の組合大会開催なども認められる・・・」(47頁)
 「国家公務員には、地方公務員より少ない休みを補うため、休んでも出勤したことにして出勤簿に出勤印を押していいという「トクトク休暇」というヤミ休暇があります。」(75頁)
 「<地方>公務員の場合、たいがい古巣の役所にアルバイトで雇ってもらえます。・・常勤で平均24万円から26万円、週に3日といった短時間でも20万円から22万円もらえます・・・」(98頁)
 「国家公務員法で「勤務評定をする」と決められているのですが、労働組合が激しい反対闘争をくり広げたため、もう数十年行われていないのです。」(173頁)
 「06年度の・・・一般(職国家)公務員・・・の・・・給料・・・の平均は814万円、・・・民間従業員の年収の平均は、06年で435万円、資本金が10億円以上の大企業の平均でも616万円・・・でした。」(188〜189頁)
 「東京都練馬区の「みどりのおばさん」の平均年収は802万円(06年度)です。・・・東京都町田市の休職調理員の平均年収は728万円(06年度)・・・でした。・・・大阪市では、年収1000万円をこえる清掃職員が何人もいます(・・・07年)。・・・神戸市バスは巨額の累積赤字を抱えています<が、>06年度の運転士の平均年収は890万円、3割が1000万円をこえ、最高は1290万円でした・・・。・・・町田市の公用車運転手は、平均年収805万円(06年度)で「1日の平均走行キロは30キロ」・・・だそうです。・・・東京都内のタクシー1車1日あたりの平均走行キロは267キロ、運転手の平均年収は379万円でした(・・・07年度)。総務庁が06年に「都道府県、政令指定都市の技能労務職員等の民間類似職種との給与比較」を行ったところ、月給額だけをとっても、公務員のほうが平均で民間よりも1.5倍から1.9倍も高いことが明らかになりました。」(190〜191頁)