太田述正コラム#2569(2008.5.25)
<中共体制崩壊の始まり?(続)(その1)>(2008.6.29公開)

1 始めに

 チベット騒擾とその弾圧、並びに聖火リレーをめぐる騒動で、堕ちるところまで堕ちた感のあった中共の国際イメージが今回の大震災とこの大震災への対応ぶりで、一見一挙に回復したように見えます。
 しかし、コラム#2568でご紹介したニューヨークタイムス掲載写真一枚を見ただけでも、中共当局の前途は多難だと言わざるをえません。
 今回は、そのあたりのところを掘り下げてみましょう。

2 噴出する被災者からの批判

 英字紙のチャイナ・デイリー(China Daily)は、地震発生直後に「われわれは校舎の構造の質について不快な疑問を投げかけざるをえない」と記し、Economic Observer紙ではコラムニストが、「われわれは瀟洒な庁舎が健在なのに校舎が何棟も砂でできた家のように倒壊したことを目撃した」と記しました(
http://www.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/05/18/china.quake.school/index.html
。5月19日アクセス)。
 また、北京を中心とする経済誌Caijingの電子版は、元人民日報副編集長が、大震災があったにもかかわらず聖火リレーを続ける決定をした当局を批判する15日付の社説を掲載しました。
 「現在、聖火リレーは江西省で行われているが、これからまだ27の省で行われる予定であり、何千人ものリレー走者が待ち構えている。しかし、このような状況下においては、北京五輪の聖火リレーに関する戦略を修正し、聖火リレーは中断されるべきだ。救援活動が一段落してから、地震によって影響を受けた地域から聖火は直接北京に運び込まれるべきだ」と。
 同じ日に、上海証券ニュース紙は社説で、地震にもっと耐えることができる建物を建設することと、手抜き工事で学校が建てられる結果を招いた腐敗をなくすこと、とを求めました。
 すなわち同紙は、死者の95%は建物の倒壊によって生じたとし、「もし建物が厳格に正規の基準に従って建てられておれば、文川(Wenchuan)県で起こった今回の地震でも大部分の建物は倒壊を免れたはずであり、死者の数があんなに多くはならなかったはずだ」と指摘したのです。

 死んだ生徒の父兄の怒りには凄まじいものがあります。
 「悲劇は起こり、私はそれを直視しなければならない。われわれは正義を求める。」
 「あらゆる無辜の命がこの大災害によって奪われた。われわれは学校から説明を求める。子供達は国の将来だ。でも学校は彼らを大事にしなかった。先生はわれわれの所にやってきたが、役人達は弔意すら表明してくれていない。」
 「父兄全員が怒っている。見ろ、コンクリートの中に鉄筋が入っていない。われわれは手を携えて正義のために戦いたいと思う。だからわれわれはここで写真を撮っているのだ。われわれは証拠を集め、サンプルを採取している。瓦礫の大部分は砂だ。コンクリートの欠片ですらない。」
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/world/2008/may/19/chinaearthquake.china2
(5月19日アクセス)による。)

 この話が米国のメディアを賑わしているからでしょう。
 中共の駐米大使館の広報官は16日、自分が聞いている限りでは、地震の強さが地震地域の建物が遵守していたところの、支那南西部における建築基準を超えていたということだとした上で、しかるべき時までに適切な調査が行われるだろうと付け加えました(
http://www.cnn.com/2008/WORLD/asiapcf/05/18/china.quake.school/index.html
。5月19日アクセス)。

 結局、四川省では校舎約7,000棟が倒壊したとされています。
 児童数百人が死亡した中国四川省都江堰(Dujiangyan)市の新建(Xinjian)小学校の犠牲者の父兄数人が中心となり、「役人が賄賂を受け取るために工事費を安く上げた結果だ」と、テントで暮らす数百人の遺族に市長らを相手取った告訴・・刑事告訴の予定・・への参加を呼びかけています(
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080519-OYT1T00872.htm?from=top  
。5月20日アクセス)。
 また、この新建小学校の父母ら約400人が21日、臨時に置かれた市教育局のテントに押しかけ、「周りの建物が無事だったのに、校舎だけが崩れたのはおかしい」、これは校舎の建築に問題があったからだ、と教育局長を取り囲み、建築を許した責任、救援が遅れた理由などについて説明を求め、「時間をください」と小さな声を絞り出して教育局長が応えると、「そう言って、いつもだまされてきた!」と父母らは教育局の備品を壊し始める、という騒ぎが起こりました(
http://www.asahi.com/international/update/0521/TKY200805210283.html  
。5月22日アクセス)。
 綿竹(Mianzhu)県でも同じような状況です。
 127名の生徒が死亡した福信(?)(Fuxin)市の福信第2小学校の犠牲者の父兄は、付近の庁舎群、先生の寮、果てはペットの兎を飼っている古い校舎までが倒壊を免れているのにどうしてなのだ、と怒っています。
 22日、綿竹県は福信市の校舎の特別調査委員会を設置すると発表しました。
 この小学校の校長は父兄達に対し、忍耐強く、専門家がここで何が起こったのか結論を出すまで待つように求めましたが、綿竹県の教育局副局長は、記者会見の場で、この小学校の年次検査の書類を調べたが、校舎は完全に安全であったと信じられると述べました。
 「起こったことは、危険な建物だったからではない。この悲劇は自然災害の結果なのだ」と。
 犠牲者の父兄は団結し、学校を四六時中見張っているのに対し、生存者の父兄は学校に近付かないようにし、中には何も起こらなかったかのようにふるまっている人もいるようで、父兄が二分されてしまっているといいます。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/05/22/AR2008052204306_pf.html  
(5月23日アクセス)による。)

(続く)