太田述正コラム#2634(2008.6.27)
<皆さんとディスカッション(続x177)>

<スワン>

 コラム#2632で、フランスとチベットが話題になっていたのに目を惹かれました。
 田吾作さん、私も「ル・モンド・ディプロマティーク」、読んでます。
 私は「戦後ヨーロッパにおける「悪の問題」」が面白かったです。
 私も、ホロコーストは事あるごとにクローズアップされるのに、他国独裁政権の虐殺の歴史や、現在進行中のジェノサイドがあまり話題にならないことに、疑問を持つことがあります。

 ところで、6月21日読売新聞朝刊で、堤清二氏の回顧録の連載を読みました。
 その中に、
 「僕(堤氏)は、ナショナリズムを国粋主義、排外思想と同一視するのは、伝統尊重を保守反動と同じと見る考えと共に、いわゆる進歩主義の大きな誤りだと思っている。」
という一文があって、その通りだと共感しました。
 その上で、石橋湛山を評価する記述がありました。私は石橋湛山のことはよく知らないのですが、知ったら心酔しそうな気がします。太田さんは個人的に思うところはありますか?

 コラム#2594で、太田さんは堤氏と面識があると読みましたが、実際に話をされて、共感する部分、しない部分があったと思います。
 差し支えない範囲で、そのときのお話をお聞かせ頂けませんか?

<太田>

1 ナショナリズムについて

 米国の電子雑誌Japan Focusのコーディネーターのマコーマック(Gavan McCormack)は、日本では「日本は米国に従属し続けなければならないと執拗に言い張る人々が自分達をナショナリストと呼んでいる」と皮肉を言ってますよ(
http://www.atimes.com/atimes/Japan/JF26Dh01.html  
。6月26日アクセス)。
 確かにそうだとすれば、「ナショナリズム」と「国粋主義、排外思想」とは縁もゆかりもないことになるけれど、まさか堤氏が日本のナショナリズムについてこのような皮肉たっぷりの捉え方をしているとは思われません。
 そもそもナショナリズムとは何か?
 例えば、スタンフォード大学哲学百科事典は、
 
・・・there is a fair amount of agreement about what is historically the most typical, paradigmatic form of nationalism. It is the one which features the supremacy of the nation's claims over other claims to individual allegiance and which features full sovereignty as the persistent aim of its political program. The state as political unit is seen by nationalists as centrally ‘belonging’ to one ethno-cultural group and as charged with protecting and promulgating its traditions. This form is exemplified by the classical, “revivalist” nationalism, that was most prominent in the 19th century in Europe and Latin America. This classical nationalism later spread across the world and in present days still marks many contemporary nationalisms.・・・(
http://www.science.uva.nl/~seop/entries/nationalism/
。6月27日アクセス)

と記しています。
 つまり、最も典型的なナショナリズムは19世紀の欧州生まれであり、それが世界に広がったということです。
 この先は私見ですが、私はナショナリズムは、フランス革命の後、フランスで生まれ、それが全欧州、ひいては(アングロサクソン以外の)全世界に広がった、欧州文明が生み出したところの、民主主義的独裁の第一類型である、と考えているのです(過去コラムは多数あり)。
 ですから、やや露骨に言えば、「ナショナリズム」と「国粋主義、排外思想」はイコールなのであり、堤氏の主張は「大きな誤り」です。

2 石橋湛山について

 私は、戦前日本型経済体制構築推進者の一人となり(拙著『防衛庁再生宣言』234頁)、満州国でその原型の実験を行った岸信介、そして、戦後旧安保条約を新安保条約に改訂することによって、日本を米国の傀儡国家から属国へと「昇格」させた岸信介を高く評価しており、「加工貿易立国論を唱えて満州の放棄を主張」した石橋湛山、そして、「日米安保条約改定に・・・批判的な態度をと」った石橋湛山は全く評価していません。(「」内は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9F%B3%E6%A9%8B%E6%B9%9B%E5%B1%B1
(6月27日アクセス)による。)

3 堤清二氏について

 堤清二(辻井喬)氏にお目にかかった時の話は、申し訳ないけど控えたいと思います。
 今度の大阪でのオフ会の時にでもちょっとだけ小声でご披露しましょう。


<大阪の川にゃ>

1、7月4日に開催されるオフ会において、太田さんの講演が行なわれるのですね。ほとんどドリンク代だけで生で聴ける人がうらやましいです。
 自治体や省庁が行なっている「男女なんちゃらのための講演会」で、ジェンダーが売りの女性タレントが2時間しゃべって50万円ももらっている中、頭が下がります(典拠:雑誌「正論」2005年12月号)。

2、せっかくですから、太田さんの講演の模様を録画して、YOU-TUBEで公開して欲しいものです。今までのテレビ番組では、どうしても細切れで分かりにくい箇所が多々ありますから。
 それに、TV局が自民叩きとして重宝している天下り論を、より強くTV関係者にもアピールできるかもしれません。もっとも、属国論まして核武装論(典拠:コラム1340・1712)は内容の過激さゆえに、東京のTV局には引かれてしまうでしょうね。

<太田>

 実は、オフ会の時の「講演」をアップする予定です。
 ただし、午前中、神戸でやった講演の要約版なので、イラク・ミャンマー・チベット情勢の話になると思います。

<読者NY>

 去年の暮れに有料購読会員になった者です。いつも色々勉強させてもらっています。全てのご意見に賛同できるわけではないのですが、しかしながら新しい別の角度からの視野が開けてきたように思います。
 これからもますますご活躍される事をお祈りしております。
 又、新著書を出版されるとの事、楽しみにしております。
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太田述正コラム#2635(2008.6.27)
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