太田述正コラム#2618(2008.6.19)
<皆さんとディスカッション(続x169)>

<スワン>

 在仏者ですが、先月、病院で受診したところ、現在加入している医療保険のカバーの対象外ということで、保険請求書類が戻ってきました。あきらめずにもう一度書き直して保険請求してみますが、いちいち自分で書類作成して保険請求するのが面倒臭いです。もし、保険が利かずに全額負担になると、高額なので生活に響いてしまいます。
 日本の医療保険は便利で整っていて、患者は保険請求をいちいち自分でしなくてよくて楽だと思います。
 日本では後期高齢者医療保険制度が問題になっているようですが、何が問題なのか制度内容はよく把握していません。でも、通知が届かないとか、小さいことでガタガタ文句を言う人は、外国の医療事情を見てきたほうがいいと思います。日本の医療制度がどんなに整っていて、恵まれていることか!
 保険証さえ持っていけば、保険請求は病院がやってくれて、患者は何もしないでよくて、個人負担の安い医療費で診察を受けられる日本の医療システムは、世界では珍しい(経験に基づいているため、典拠省略です)ということを、日本人は知ったほうがいいです。 日本人は、何でもかんでも行政に甘えすぎではないでしょうか。文句を言う前に、自分でできることは自分でやればいいのに、と思います。
 例えば通知が来ないなら、自分で役所に取りに行けば済むことです。フランスではそういう理屈です。「そちらのミスで、わざわざ役所に出向かせるのか!」なんて文句を言う人は、「だったらサービスを受けられませんよ」と言われて終わりです。
 何でも完璧にやってもらって当たり前、何か落ち度があると騒ぎ立てる日本人の甘えの精神には、イラっとくることがあります。もっと自立した精神を持ちなさいよって私は思いますが、太田さんはアメリカ時代、外から日本を見て、そう感じたことはありませんでしたか?イギリスではいかがでしたか?
 日本って、社会システムが何でも上手く回りすぎていて、あらかじめトラブルを回避するように動いていると思います。個人がトラブルに遭うことが滅多にないせいで、個人の問題解決能力を低下させているように思います。太田さんはどう思われますか?
 ひょっとして、この過保護な日本社会風土が、米国の属国状態を受け入れて、自立する気力を削いでいるのかもしれませんね。太田さんはどのように思われますか?
 ちなみに私は、基本的に日本大好き人間です。外国かぶれではないつもりです。不便なフランス社会より、なんでも物事がスムーズに運ぶ日本社会のほうが好きです。だって、日本のほうがずっと、生きるのが楽ですから。でも、日本社会は便利さと完璧を追求するあまり、かえってそこに問題があると思うこともあります。

<太田>

 結論については同感です。
 フランスや英国と日本の医療保険制度の運用実態については、他の読者のご意見もうかがいたいものです。

<コバ>

カナダ人ジャーナリストが山口組本部に抗議活動をしました(
http://www.zakzak.co.jp/top/2008_06/t2008061837_all.html
)。こんな少人数でタクシーで乗りつけて暴力団本部に抗議活動するなんて彼らは本当にすごいなと思いました。物事を灰色にしておくのが好きな日本人も、少しは見習ったほうがいいかもです。

<太田>

 主要メディアの電子版がこの話を全く報道していないことが気になりますね。
 やっぱし、政官業+主要メディア+暴力団の五位一体的癒着構造か?

<コバ>

前サムスンジャパン社長の鄭氏が中央日報でインタビューを受けています(
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=101431&servcode=300§code=300
)。その中で韓国が日本と中国を見るために必要なのは漢字であると述べられていますが、韓国が漢字教育を行うようになる可能性はあるのでしょうか。
 出来れば日本語教育が盛んになって欲しいなと思いますが…。
 しかし、せっかく米国の属国日本に生まれたのに、英語が全く出来ない自分が恨めしいものです。

<太田>

 韓国では、漢字は消滅すると考えた方がよさそうです(
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%BC%A2%E5%AD%97
。6月19日アクセス)。
 
<まこっちゃん>

すでに多くのメディアで報道されているように先週行われた日朝実務者協議で、北朝鮮側は、拉致問題の解決に向けた具体的行動を今後とるための再調査を実施することを約束したようです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080613/plc0806131705017-n1.htm

 これは太田さんがおっしゃるところの、ブッシュのなぶり倒しの成果なのでしょうか。
 また、拉致問題に関しては今後どうなると分析されているのでしょうか。

 核問題に関し、下記のような記事が出ているので、北朝鮮も弱っているのかなあと思ったりしますが。
http://www.47news.jp/CN/200806/CN2008061801000771.html
 あと、アメリカ大統領選挙の影響はあるのでしょうか。
 マケイン氏は対北強行派みたいですが。
http://www.chosunonline.com/article/20080607000011

 ところで、koreatimesに米朝協議を受けて「北朝鮮は拉致問題に関し驚くような発表をするだろう」というコメントやよど号ハイジャック犯の送還についての見通しが5月末の段階で出ていました。
 先週の日朝協議もアメリカが書いたシナリオなのかなあと、思ってみたりもします。
http://www.koreatimes.co.kr/www/news/nation/2008/06/113_24697.html

<太田>

 とにかく、私がかねてから指摘してるところの、ブッシュの対北朝鮮なぶりもの戦略は、驚くほど一貫しています。

 「ブッシュ米大統領は16日、「われわれは北朝鮮が寧辺の核施設で生産したものを公開し、それを(米国に)引き渡すことを望んでいる」と述べた。・・・ブッシュ大統領の発言は、北朝鮮が最近、「寧辺を除く場所の核物質と核兵器は・・・廃棄対象ではない」という立場を示したことを受けたもので注目される。・・・<これは、>米国が核兵器の引き渡しを受けた上で廃棄する「ウクライナ方式」を北朝鮮にも適用する考えを示したものとして受け取られている。・・・ブッシュ大統領はまた、「米国は北朝鮮が6カ国協議のプロセスで核拡散活動についても明らかにすることを望む」と述べ、シリアに対する核支援を含め、北朝鮮による過去の核拡散活動を究明する必要があるとの立場を示した。」(
http://www.chosunonline.com/article/20080618000015
。6月18日アクセス)

 私と同じことを指摘している人が他に余りいないのが不思議で仕方ありません。
 ブッシュ大統領は、北朝鮮に核に関する情報を全て開示させ、北朝鮮の核能力を根絶やしにすることを目指しているのです。それが実現すれば、北朝鮮は牙を抜かれた虎同然となり、体制変革(少なくとも金王朝の瓦解)がもたらされるだろう、ということです。
 われわれとしては、日本人拉致問題の完全解決(情報の全面公開と生存者全員の日本帰還)はその段階で初めて展望が開ける、と割り切るべきでしょう。

 なお、近々米国が北朝鮮についてテロ支援国指定を解除し、その後24時間以内に米国の技術者の支援を受けて(?!)冷却塔を爆破することで両国が合意していると報じられています(
http://www.chosunonline.com/article/20080619000019
。6月18日アクセス)が、これはあくまでも途中経過に過ぎないと受け止めるべきでしょう。

 「北朝鮮側<が>、拉致問題の解決に向けた具体的行動を今後とるための再調査を実施することを約束した」(産経上掲)のは、核問題解決が先行することが、必ずしも拉致問題の解決を妨げるものではないことを属国日本に納得させるため、宗主国米国が北朝鮮働きかけ、これに北朝鮮が応じた結果でしょうね。
 問題は北朝鮮側です。
 金正日が、どこまでブッシュの敷いた路線・・恐らく次の米大統領もこれを蹈襲すると思われる・・に乗っかって行くのか、北朝鮮の今後の農業生産状況や自然災害状況等とのからみで予断を許さない状況です。
 ちなみに北朝鮮は現時点では、「昨年の・・・実質国内総生産(GDP)は前年より2.3%減少し、06年(−1.1%)に続き2年連続でマイナス成長を記録した・・・。また、昨年の穀物生産量は、洪水などの自然災害のため、前年に比べ9.4%も減少した、と韓国銀行は推定している。特に主食であるコメ(− 19.4%)やトウモロコシ(-9.3%)の生産量が大幅に減っている。」というひどい状況です(
http://www.chosunonline.com/article/20080619000025
。6月19日アクセス)。

<アミダ>

 ミャンマーの問題について、高山正之氏は太田先生とは違った見方をしています。
 たまたま買った5月22日号の「週刊新潮」の変見自在のコラムで高山氏は、スーチー女史は体はビルマ人でも心はイギリス人なのであって、50年近い過去歴史を振り返ると、日本のように一国一民族の国だったもともとのビルマに英国がシナ人やインド人を送り込んでビルマを無茶苦茶にした過去があり、戦後やっとこれらの異民族支配から解放されたビルマ人は、植民地支配の傷を貧しいかもしれないが、誰も傷つけない方法でそれを癒し回復しようとしているにすぎないのだ、ということです。
 どう先生は思われますでしょうか。

<太田>

 アウンサン・スーチーについては、コラム#2585(未公開)で「アウンサン・スーチーは、ミャンマー国民の間で国際スター的人気はあるものの、真にタンシュエらに対抗できる、地に足の着いた指導者と言えるかどうかは甚だ疑問に思う。」と記したところであり、私の考えも高山氏とそう違わないと思います。
 ただし、それから後は高山氏とは見解を異にします。
 現在、ミャンマーの民族構成を見ると、ビルマ族は68%にとどまっており、昔から、到底一国一民族とは言えなかったのではないでしょうか。
 ちなみに現在、漢人は3%、インド人は2%に過ぎず、英植民地時代にはもっといたのかもしれませんが、ミャンマーは英領インド帝国に編入されていたところ(以上、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC
(6月19日アクセス)による)、仮に編入されていなかったとしても、英帝国全体が一つの国のようなものであり、ミヤンマー(当時はビルマ)にマライ半島や香港の華僑(漢人)、インド亜大陸からは印僑(インド人)、がミュンマーに流入したのはごく自然なことです。
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太田述正コラム#2619(2008.6.19)
<仏教雑感(その1)>

→非公開