太田述正コラム#2608(2008.6.14)
<皆さんとディスカッション(続x164)/書評『国連事務総長・島耕作』:消印所沢通信26>

<ueyama>

>やっぱし、1999年当時でも日本の青少年の自殺率は先進国じゃ高い方なんですね。

 その通りですが、やはり私は「他の世代では軒並み先進国中トップの自殺率なのに青少年はそうではないのか」つまり、どうしても青少年を焦点にしたいのであれば「どうして青少年は自殺しないのか」というほうが適当な気がしますけどね。もちろん、もっと適当なのは「どうして中年以上は(経済苦で?)死ぬのか」でしょうけど。
 それに他の(最近の)データを提示されているわけではないですから、「1999年当時でも」ではなく「1999年当時では」が適当でしょう。19年版自殺対策白書をそのまま信じるなら、現在他の先進国は日本より若者の自殺率はあがっているようですし、これではただの印象操作です。

 ニューヨークタイムズの記事、興味深く読ませていただきました。
 特別目新しい話は出てきていないようですけど、世界的にも、今のところこの程度の考察しかできていないということなんでしょうね。私はもっとラディカルに変革してほしいと思っていますけど、そのままほっておけばこうなっていく、という予測としては充分納得できる話でした。
 ところで、電子ブックの話で出てきているlive readingというのはどういうものですか? 朗読会のようなものかな、と思ったんですけど、それで稼ぐという絵がいまいち想像できません。

<太田>

 筆者のポール・クルーグマン(「クラッグマン」とも日本では表記されてます)は米国の有名な経済学者(プリンストン大学教授)であり、ニューヨークタイムスに載った彼のコラムの内容の信頼性は高いはずです。
 なお、このコラムの文脈でのlive reading は、おっしゃるように「朗読会」なのですが、私は著者による有料「朗読会」のことであると受け止めています。
 詩や小説(長編じゃちょっとムリですね)の著者による有料朗読会や(プロモーション目的での冒頭部分等の)無料朗読会は、ロシアや欧米ではよく行われていると承知しています。
 典拠を探したのですが、すぐには出てきませんでした。

<バグってハニー>

米国が英国にサインするなと頼み込むのは共同作戦で英国にクラスター弾を使ってほしいからじゃなくて、禁止条約が発効して自分だけはみ出し者になるのがいやだからですよね。日本が米国の属国だったらサインするなという「指令」が来てもおかしくないかなと思ったのですが。ただまあ、日本政府に外交力があると考えるのは私の願望にすぎないですが...。
しかし、国際政治で英国には常に一定の存在感がありますよね。国力は日本の半分くらいしかないのに、なんでなんだろ。
対人地雷禁止条約の時には太田さんはまだ旧防衛庁にお勤めでしたよね。何かこれにまつわるエピソードとか太田コラムってありますか?

<太田>

 国際政治で英国に存在感があるのは、英国が、日本とは違って独立国であることは言うまでもないとして、かつて世界のほぼすべてが自分の植民地かその隣国であったことから、世界中のことに強い関心を持っており、現在でもこれらの地域で培った諜報人脈を維持していて、世界中の国の中で最も的確な情勢分析ができるからです。 

 対人地雷禁止条約に日本が署名した1997年12月当時、私は担当部局にはいませんでしたが、このことが防衛庁内で話題になった記憶はありません。
 日本列島への着上陸侵攻の可能性などゼロなのですから、対人地雷(そして対戦車地雷)を自衛隊が持つ必要は全くないのです。
 タテマエ論はともかくとして、対人地雷やクラスター爆弾が禁止されたって自衛隊は痛くもかゆくもないからこそ、大して話題にならないのですよ。
 とにかく、日本が集団的自衛権の行使ができるようにしないと話にも何もなりません。
 さもなきゃ自衛隊は現在の10分の1の規模でよいと私が言っている意味をぜひご理解ください。

<アヒル>

 コラム#2604でご紹介頂いた、日経BPの記事、読みました。面白かったです。
 チベット僧が全員、筋肉逞しく美しい容姿とは限らないと思いますが、拝金主義の漢民族よりも、チベット僧に男性としての魅力を感じるという中国人女性の気持ちはよくわかります。
 デート費用を全額女性に払わせて平気な男性なんて、何人だろうが私もお断りです(笑)。
 私の個人的考えですが、経済的豊かさを追求する人と、精神的豊かさを大切にする人とは、価値観が違いすぎて永遠に理解しあえない壁があると思います。
 もちろん、衣食足りて礼節を知ると言うし、ある程度の生活の余裕があることは必要です。でも、生きるのに必要十分以上の経済豊かさが欲しい人と、欲しくない人がいると思います。
 漢民族に前者が多く、チベット人に後者が多いということではないでしょうか。
 主に先進国の人の一部がチベット人に共感して、チベット頑張れ!と応援するのは、チベット人は金銭欲が希薄で、宗教や文化や言葉を心の拠り所にする民族だから、その価値観に共感する人が一定数いるということだと思います。
 漢民族の中に、チベット人の価値観に傾倒する人が多く出ることを期待します。そうなりつつあるのかもしれませんが。
 典拠にふさわしくない記事のアドバイス、ありがとうございました。私も、この記事を典拠にするのはよくないかな、と思いました。
 今後は信頼できるメディアの典拠をつけるように気をつけます。
 ご存知と思いますが、独裁国家や紛争地域では、報道陣を締め出している国や地域がありますよね。
 太田さんは、一流紙で報道されない事実については、どのようにお考えですか?
 最近、日本語ニュース誌で「国境なき記者団」の特集記事(
http://www.newsdigest.fr/newsfr/content/view/1308/38/
)を読みました。
 ネット版では載っていないようですが、キューバで取材をしたために、何十年の懲役刑を課せられて服役中の記者の話などを読んで、考えさせられました。

<太田>

 私は、英国のガーディアンやファイナンシャルタイムス等で報道されない事実は、先程も申し上げたような理由で、重要ではないと割り切っています。

<ミュンヘン>

 ちょっと気になったので、ささいな事ですが。。。
 タイトルはオバマ大頭領ではなく、オバマ大統領誕生へ?ではありませんか?(早く有料購読者になろうとしているのですが、なかなか余裕が。。。)
 
<太田>

 ゲ! 全く気付きませんでした。
 こうなりゃ、記念に訂正しないでおきましょう。
 それにしても、「世界24カ国で行った調査で、米大統領選に最も高い関心を持っているのは日本との結果が出た・・・。本国の米国よりも高かったのは日本だけ・・・」(
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008061401000286.html
。6月14日アクセス)には驚いたね。
 まさか、オバマと小浜市とのひっかけで関心をもっているだけではないでしょうが、 私のような意味でオバマ、ひいては米大統領選に日本人は関心を持って欲しいものです。

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<書評『国連事務総長・島耕作』:消印所沢通信26>

 島耕作シリーズの最新刊.
 社長ネタをやりつくして,あとは背任くらいしかネタが
ないという島耕作が,国連事務総長に華麗な変身を遂げる
というストーリー.

 シリーズを通しての特徴である,信じられないような
運の良さは,この事務総長編でも健在.
 もう一人の総長候補で,本命と見られていたクルト・
メンシェンイエーガーが実は元ナチスSSで元KKKで
現アル・カーイダだったことが判明し,棚ぼた的勝利で
当選するところからして,ラッキー的要素強し.

 就任直後に起きた大事件が,軍事独裁下にある
東南アジアの国,ピカニャー連邦を襲ったサイクロン被害.
 国土が9割水没したというのに,外国からの援助を
受け入れないピカニャー.
 苦悩する島.

 交渉の末,仏陀の物語の1エピソードにならって,
ドル札を敷き詰めた範囲だけでなら救援活動を認めるという
ことになったものの,2次災害でドル札が全て吹き
飛ばされてしまい,ピカニャー軍事政権は,
「再度,ドル札を敷き詰めないと援助活動は認めない」
と言い放つ始末.
 これにはアメリカも激怒して,あわや一触即発の事態に……
 と思われたそのとき,選挙でアメリカに初の女性大統領が
誕生して,その大統領が実は島の隠し子だったので,島の
説得に応じてB-52を引き返させたというオチには,さすが
強運の持ち主と感心させられる.

 おかげでピカニャーはそのドルで中国製兵器を買って
軍事大国になり,しかも被災民にとっては何の根本的解決に
もなっていない,というところを批判する人もいるが,
現実の国連だって何の根本的解決もできないのだし,
マンガとしてはむしろリアリズム志向なのかもしれない
(苦笑)

 また,ンガンガのエピソードも面白い.
「アフリカのンガンガ共和国で部族同士の虐殺が発生.
 国連軍が同地にいたにもかかわらず騒擾発生によって
退避してしまって虐殺を止められなかったということで,
島にも非難殺到.
 苦悩する島.
 ところが実は,虐殺された10万人以上は全員,島の
隠し子だったと分かり,一転,島に同情が集まったばかりか,
「虐殺に用いられた鉈(なた)は悪魔の兵器である」
として,軍隊での鉈の使用を禁止する国際条約を成立させ,
島が拍手喝采を浴びるというオチは感動的.

 他にも,いかにも全共闘世代らしく,国連憲章に
「加盟国は非武装中立であること」を謳う条文を入れようと
島が頑張り,そのかいあって条文はめでたく入ったものの,
国連脱退国が続出.
 最後にたった1国,国連に残った日本が,念願の
常任理事国の地位を手に入れるというエピソードなどなど,
興味深いエピソードが満載.

 次回作,『銀河帝国皇帝・島耕作』にも期待大だ.
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太田述正コラム#2609(2008.6.14)
<イラクの現状をどう見るべきか>

→非公開