太田述正コラム#2529(2008.5.5)
<韓国の親日ぶりチェック(その1)>(2008.6.10公開)

1 始めに

 またか、と思われるかもしれませんが、朝鮮日報を手がかりに、韓国の親日ぶりを色々な角度から見てみましょう。

2 朝鮮日報の親日戦略

 (1)歴史の共有

  ア 古代東アジア史の見直し

 朝鮮日報の論説委員が、書評の中で、「「国史」は近代国家が作り上げられた後、国民の実態を確保する手段だった。国家の起源と発展を関連付けるよう記述した書籍は、国家の構成員を統合し教育するのに大変効果的だった。しかし、世界化が進行し国家の障壁が低くなるにつれ、「国史解体」を主張する声が高まっている。歴史を国家単位で把握するのは史実に合わず、未来志向的でもない」という問題意識に則り、著者が「韓日古代史の争点である「任那日本府」について・・・韓半島の伽耶地域と九州の倭は緊密な紐帯関係を持った一つの複合体であり、当初伽耶にあった主導権が後に倭へと移ったのは、当時の周辺状況から見ればごく自然な現象だった」等と主張している、と記しています(
http://www.chosunonline.com/article/20080427000004  
。4月27日アクセス)。

 私が韓国では任那日本府は存在しなかったと教えていることを知ったのは、1974〜76年のスタンフォード大学留学当時、構内の大学寮マンションの一室をシェアしていた相方の韓国人留学生から議論を吹っかけられた時のことです。
 びっくりしつつも、口からとっさに「当時、朝鮮半島南部の一部が日本に属していたかどうかなど、大した話ではないのではないのか。その頃は朝鮮半島南部と日本列島の北九州地域は同一文化圏に属していたと思われるからだ」と言い返したのですが、どうやらこの太田説は正しかったのかも。
 それにしても、このような歴史家が韓国で市民権を得るに至ったこと、そしてその人物の著書を朝鮮日報が積極的に取り上げたことには、30年以上前のことを思うと感慨深いものがあります。

  イ 日本帝国史の見直し

 日本帝国時代の朝鮮半島史の見直しが活発に行われていますが、朝鮮日報の記者が、駒込武京都大学大学院教育学科準教授の著書の朝鮮語訳の書評において、「<日本帝国の植民地統治>「政策の特徴は、その地域の歴史や文化を全く無視して“日本”を持ち込み、日本化を押し進めることだ。経済的収奪だけでなく、民族抹殺につながる・・・同化政策<ないし>・・・皇民化政策を、“天皇”を戴いて実行したところに、日本の植民地支配の特徴がある」<というのが>韓国でもおなじみの見方だ。」<しかし、>・・・「同化」や「皇民化政策」というものは、1930年代後半以降の台湾や朝鮮でのみ政策的に標榜されたものであ<り、日本帝国の本来の植民地統治政策は、>「内地(日本)と同じ水準の学校体系を整備する」という教育政策<に基づき、>・・・「原住民の「野蛮性」と「文明開化の重要性」を強調することで<日本帝国>の権威を受容し易くすると同時に、「自己犠牲」の理念を注入<する>」<というものであったのだ。>」とこの本を紹介しています(
http://www.chosunonline.com/article/20080413000006、  
http://www.chosunonline.com/article/20080413000007
(4月13日アクセス))。

 実際の書評は相当韜晦して書かれているのですが、そのエッセンスを抜き出すと上記のようになる、ということです。
 これは、私がかねてより力説していること、すなわち、日本帝国は、安全保障上の必要性にかられて、日本に対するのと同じ情熱をもって日本周辺地域に対しても、その文明開化を推進したのであって、これは周辺地域の経済的搾取を目的としたものではなかったし、周辺地域はその伝統的文化が抹殺されるどころか、振興された、という趣旨のことを、書評の形を取ってこの記者が韓国人読者に訴えてかけているのです。

 なお、私は、「1930年代後半以降の」植民地統治政策は、戦時下の総動員的色彩を帯びたというだけであって、質的に変質したとは思っていません。むしろ、これにより、日本帝国臣民意識が朝鮮半島の住民の間に急速に浸透した、と考えています。
 興味深いのは、この頃の日本帝国の姿を日本より韓国の方が多く残していることです。
 韓国の労働者は2006年に年平均2,357時間働きましたが、これはOECD加盟先進国30カ国中一番でした。ちなみに、米国の労働者は1,797時間です。
 この結果、韓国人は文化、スポーツ、バカンス等に費やす時間はビリに近いのが実状です。
 また、韓国は世界中で私立学校や塾・家庭教師等に費やす指摘教育費の対GDP比が2.8%と一番です。ちなみに米国は2.3%です。
 そして韓国は、自殺率の高さも一番です。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/nationworld/world/la-fg-economy19apr19,1,786873,print.story  
(4月19日アクセス)による。)

 戦争直後から高度経済成長期にかけての日本そっくりだと思いませんか。
 韓国人の意識は、いまだに戦時中の総動員体制の頃の日本帝国臣民の意識のままなのであり、彼らにとって戦争はまだ続いている、ということなのだ、と私は思うのです。

 (2)日本の礼讃

  ア 公観念の確立した日本の青年

 現在の日本に対する手放しの礼讃は、朝鮮日報の親日戦略の中で最も韜晦がない部分です。

 同紙は4月11日付の社説で、「財団法人日本青少年研究所が韓国、米国、日本、中国の高校生1000人から1500人を対象にアンケート調査を行ったところ、「金持ちになるのが成功した人生」と回答した学生の割合が、韓国では50.4%で日本の33%、中国の27%、米国の22.1%よりもはるかに多かった。「金を稼ぐためにはどのような手段を使ってもよい」という回答も、韓国は23.3%で、米国の21.2%、日本の13.4%、中国の5.6%よりも多かった。「金で権力を買うことができる」という回答も米国、日本、中国は30%前後だったが、韓国は54.3%にも達した。」と記した上で、韓国の青年の拝金主義を嘆き、更に、「一昨年韓国青少年開発院が韓国、中国、日本の3カ国の若者に対して行ったアンケート調査で、「戦争が起こったらどうするか」と質問したところ、「前線で戦う」という回答が日本は41.1%、中国は14.4%、韓国は10.2%だった。」という、ちょっと信じられないような日本についてのデータを提示し、「閣僚や次官、国会議員の中には、どう考えても納得できない理由で兵役免除を受けたという人間が珍しくないのが韓国だ。先進国では想像もできないことだ。」とまで記しています。(
http://www.chosunonline.com/article/20080411000004 
。4月11日アクセス)。

 いささか日本の贔屓の引き倒しのきらいがありますが、朝鮮日報の親日の熱意だけは買いたいですね。

  イ オタク大国日本

 また、朝鮮日報の経済部長は、5月5日付の第一の論説で、「米国生まれの<数独>パズルが日本で世界標準に<なったのはこういうわけだ。>・・・社員20人の小さな出版社を営んでいる鍛冶真起社長・・・が数独を披露するや、日本のパズルオタクが熱狂的に飛びついた。オタクとは、一つの事を執念深く掘り下げる日本のマニアの通称だ。オタクは新たな解法を考案するなど、自発的に数独を改良していった。今でも鍛冶社長の元には、オタクから創作数独が山と届けられる。代価もないというのに、その数は1カ月に 1000通にも上るという。活発な「オタクの生態系」があった日本は、数独を金を稼げる産業に発展させたが、米国ではそれができなかった。・・・オタクは日本のあちこちにいる。ラーメン1杯に人生を賭けるオタクが、東京を世界最高の美食都市に押し上げた。漫画が世界市場を支配しているのも、オタクの力があったからだ。どんなに怪しい分野であっても、日本には必ず厚いオタク層が存在する。・・・会社を拡張しようという考えはあるのか尋ねたところ、「全くありませんね。このまま今の調子で、“潜水艦”みたいな会社でいたいです。やりたいことをやりながら…」と鍛冶社長。見上げたオタクだ。金のためではなく、好きで働くのだから、競争力が強くなるのも無理はない。このようなオタクがあらゆる分野に布陣し、産業基盤をがっちり固めてくれる。これだから日本経済は、鳥肌が立つほど恐ろしい。」と記しています。(
http://www.chosunonline.com/article/20080505000028
http://www.chosunonline.com/article/20080505000029 
(5月5日アクセス))

  ウ 文化大国日本

 そして引き続き、同日付の第二の論説で同経済部長は、「世界的な権威を誇るフランスのレストラン格付け本『ミシュラン・ガイド』は、東京を世界最高の「美食都市」に挙げた。伝統ある美食強国フランスを退けたのだ。そうかと思えば、ヨーロッパの若者たちの間で日本の伝統的な結婚式がブームだというニュースもあった。日本に対する欧米の熱狂ぶりは、韓国人の想像を超えている。マドンナは東京の路地裏を舞台としてミュージックビデオを撮り、スポーツ選手は意味も分からず日本式の漢字の刺青を入れている。寿司が高級料理として知られているかと思えば、日本式「禅」スタイルは欧米の上流層が好む高級な生活様式として受け入れられている。「日本」と聞くと、韓国人は経済大国を連想する。トヨタ自動車やソニーの電子製品に象徴される製造業強国というイメージが絶対的だ。一方、日本文化に対しては、「倭色」として質の低いB級の扱いをする。韓国人は経済を除いた残りの分野、すなわち日本の文化や生活様式・美意識・価値観などについては、評価を出し惜しみして低く見る傾向がある。しかし経済的な観点だけを見ても、21世紀の日本を正しく理解することはできない。韓国人が意識しない間に、日本は経済大国を脱皮し、「文化大国」に変身した。今、日本は世界で最も魅力的な国として通じている。ただ魅力を発散するのではなく、国家ブランドの魅力を利用し金を稼ぎ富を創出する「ソフトパワー」の経済モデルを作り出したというわけだ。米紙ワシントン・ポストが「クール(Cool)な帝国・日本」という特集記事を掲載したのは、4年前のことだった。記事は日本について、「地球上で最もクールな国だ」という賛辞を贈った。日本の漫画・アニメーション・ファッション・映画が世界市場を席巻し、「文化が(製造業を凌駕する)日本最大の輸出品となった」と記していた。日本製文化商品の躍進には目を見張るばかりだ。世界は宮崎馳のアニメーションを見て、任天堂のゲームに没頭し、村上春樹の小説やケンゾー(KENZO)のファッション、安藤忠雄の建築に熱狂する。日本の漫画は世界の漫画市場の60%を占め、日本製テレビアニメの米国向け輸出は鉄鋼製品の輸出額の3倍にも達している。日本銀行によれば、1997年から2006年までの間に日本の総輸出額はおよそ1.7倍となったが、文化商品の輸出は3倍以上に跳ね上がった。・・・「国民総魅力」(GNC)という指標がある。米国ニューアメリカ財団のダグラス・マッグレイ研究員が、外交雑誌『フォーリン・ポリシー』(2002年5・6月号)に発表した論文で提示した。・・・重要なのは、マッグレイ氏が国民総魅力の概念を提示した理由が、まさに日本にあるということだ。彼は「日本が1980年代の経済大国を凌駕する文化強国となった」と分析し、日本を説明するための道具として国民総魅力を提示した。「経済」より「魅力」という文化的価値が、21世紀の日本を説明するに当たってより有用な指標となり得る、というわけだ。こうした魅力を、日本経済は戦略的に活用し、国富を創出している。日本経済は、もはや製造業だけの経済ではない。無形の国家魅力と文化的価値で金を稼ぐポスト・モダン経済に転換した。・・・」と記しています。(
http://www.chosunonline.com/article/20080505000025
http://www.chosunonline.com/article/20080505000026  
(5月5日アクセス))

 こういう論説を読むと、朝鮮日報をある種高みに立って論評している自分がはずかしくなります。
 実に朝鮮日報の記者の皆さんは優秀だと思いませんか。
 これだけ優秀な彼らが、彼らの目にはっきり見えているはずの現在の日本のふがいなさにあえて目をつぶり、韓国人読者向けの親日戦略をかくも真摯に推進していることに私は頭が下がります。

(続く)