太田述正コラム#2448(2008.3.26)
<台湾総統選挙余話>(2008.5.2公開)

1 初めに

 台湾総統選挙に勝利した馬英九の関係者の中から2人に登場願いましょう。

2 李登輝
 
 本日付の産経新聞の電子版に掲載されたインタビューで、前台湾総統の李登輝が次のように語っています。

 「私は国民党主席を約12年務めたが、一党独裁をもってこの民主化を進めた。今の立法院(国会)と同様、あの時に国民党の議席が4分の3以上なければ、実は台湾の民主化は難しかった。」

→授権された強大な権力を活用せよと馬を激励しているわけです。これが、民進党よりも過激にいわゆる台湾「独立」を推進してきた人物、しかも投票日直前に謝長廷候補支持を表明した台湾の超有力者の口から出たことは、日本でメルマガ「台湾の声」を講読している数多くの台湾「独立」派たる在日台湾人や日本人にとって、大ショックでしょうね。(太田)

 「台湾の独立派は口先だけの人が多すぎる。政権が悪いことをしても批判ひとつせず、政権とぐるになって悪巧みをする。汚職がひどすぎた。これが台湾人と思うと情けない。」

→この第二弾で、またまた日本の台湾「独立」派は大ショックを受けるでしょうね。(太田)

 「実は中共(中国共産党)は馬氏を心の底から支持しているわけではない。・・彼はアメリカの影響を非常に強く受けている。」

→ここは、私の見方(コラム#2440、2442(未公開)、2446(未公開))と全く同じですね。(太田)

 「<ただし、>チベットを応援して台湾のプラスになるか? ならない。」

→ただし、何から何まで米国政府の言うことをマネしちゃダメだよと馬に忠告しているわけです。(太田)

 「<馬>のいいところは、正直なところだ。汚職をやったという人もいるが、僕は信じない。孤立的で独り善がりの面もあるが、近代的でもある。・・ただ、「中国人」(外省系=中国大陸籍)でもあり、公に尽くすかはわからない。」

→馬を誉め、その上で、どうせなら漢人系米国人でなく、純粋な(?)米国人になることを促しているのですな。(太田)

 「台湾経済を伸ばすには日本の技術が必要だ。どう提携するか。日台関係をよくしていく必要がある。私は国民党を除名された立場ではあるが、相手が頼みに来るなら、知恵と経験は大いに生かしたい。駐日代表をやるには年をとりすぎたが、フリーランサーという形なら何かできると思う。・・彼が来たら私の本を読ませよう。「奥の細道」もね。20年後の台湾は新総統の努力次第で大きく変わる。何をすればこの総統の時代に台湾が飛躍できるのか? 私も今、考えているところだ。」

→この第三弾で、上記台湾「独立」派はノックアウト寸前の状態でしょうね。
 李登輝は総統時代、馬を1993年に法相に抜擢しています(〜1996年)(
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080326/chn0803260844001-n1.htm
3月26日アクセス)。いわば李は馬の師(メンター)でもあることを考えれば、このような発言は何の不思議もありません。そもそも、李は日本人として人となったかもしれないけれど、あくまでも台湾の老練な政治家であるということです。

 (以上、李登輝の発言は、
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080326/chn0803260845002-n1.htm
(3月26日アクセス)による。)

 日本の台湾「独立」派は、これまでひたすら李を崇め、馬を罵倒してきたけど、やや単細胞的過ぎたのではないでしょうか。
 日本における台湾独立派の重鎮たる林建良さん、私は台湾「独立」の大義を支持している人間ですが、日本における台湾「独立」運動のやり方は、この際、抜本的に見直されたらいかがでしょうか。
 少なくとも、もっぱら日本の「右」派に支援を仰がれてきたことは賢明だとは思いません。

3 周美青

 周美青(Chow Mei-ching)って誰だって?
 馬英九の奥さんですよ。
 
 「台湾の馬英九次期総統の周美青夫人(56)の「庶民スタイル」が話題を集めている。台湾紙・蘋果日報は「短髪で化粧をせず、宝石や指輪、ブランド製品などと縁がない主婦」と伝えた。夫が総統選で当選後初の出勤日となった24日<(月曜)>午前6時46分、夫人は自宅を出た。顔はすっぴんでジーンズ姿、平凡なカバンを肩にかけていた。普段通りに指輪やネックレスも身に着けていなかった。一般市民と同様に路線バスに乗り込んだ夫人は、車内でMP3プレーヤーを聴きながらしばらく立っていたが、席が空いたのでやっと腰を下ろした。通勤時間は約50分。これまでと違うのは護衛3人が張り付き、記者が同行取材するようになったことだ。周美青夫人は大手金融持ち株会社の兆豊金融控股(Mega International Commercial Bank)に26年間勤めており、名門の台北市立第一女子高級中学(高校)を卒業し、<馬と同じく、>米ニューヨーク大で法学修士号を取得したエリートだ。現在の肩書きは法務室処長。会社に着くと、同僚が渡そうとした花束を拒み、「総統夫人ではなく、ただ『処長』と呼んでほしい」と話した。米国留学中に結婚した馬次期総統の・・ハーバード大での勉学を助けるため、夫人は自身の博士課程進学をあきらめ、倹約が身に染みついたという。」
 「利害の衝突を回避するため、周はこの銀行の取締役と(馬と二人で創設した)Dwen An Social Welfare Foundationの理事を辞任した。・・彼女は馬とともに公的行事に出席したことはほとんどなく、今回の選挙でも最終の数日だけしか馬に同道しなかった。・・<なお、>彼女は二度と公共交通機関は利用しないと語り、月曜と火曜に乗ったバスに記者やカメラマンが大勢乗り込んだことについて他の乗客達に謝罪した。」
 (以上、
http://www.chosunonline.com/article/20080326000024
http://www.taipeitimes.com/News/taiwan/archives/2008/03/26/2003407111
(3月26日アクセス)による。)

 日本で共稼ぎの配偶者を持つ首相が出現するのはいつのことなのでしょうか。
 このような意味でも、台湾の民主主義は日本を追い越した、と言えるのかもしれませんね。