太田述正コラム#2515(2008.4.29)
<皆さんとディスカッション(続x125)>

<MS>

 コラム#2514(未公開)を読みました。
そもそも中華は対外的な広報活動をする気がないのではないでしょうか。
 対外イメージを気にしているのならば、大きな赤い旗を自由主義諸国で振らせたりはしませんよね。自由な報道体制を逆手にとった、在外中国人に対するナショナリズム発揚工作という意味では一定の効果があったのでないでしょうか?
 中共の「広報戦略策定能力が不足している」ことが原因なのかどうか疑問です。

<太田>

 梃子入れすれば、在外中共人があのようなナショナリスティックな言動を行うであろうことは、中共政府には分かっていたはずです。
 第一に、「梃子入れ」とは、示威行動にあたっては、在外公館等から留学生団体や在住者団体に指示をする、工作員を送り込んで現場で組織的行動を指揮させる、必要に応じて国旗等を提供したり現場への旅費を支給する、といったことですが、指示に国費留学生は逆らえないし、私費留学生や在住者も中共国内の家族のことを思うと逆らえないわけです。
 第二に、それに加えて、これら留学生や在住者がかつて受けたナショナリズム教育があります。ですから、反中共政府的な考え方の人も含めて、今回彼らの間では積極的にナショナリスティックな言動を行った者が多かったわけです。
 百歩譲って、中共政府が第二までは予想できなかったとしても、第一は当然予想できたはずであり、問題は、その結果いかなる反発が海外で起こるかまでは考えなかったとしか思えないところにあるのです。

<コバ>

 中国で都市化や農工業の発展により、黄河が著しく汚染され、干上がりそうになっているらしいです(
http://premium.nikkeibp.co.jp/em/ngs/24/index.shtml
)。
 中国製品にお世話になっている自分としても痛ましく感じますが、日本が中国と協力しても、中国の環境問題、水資源問題を解決するのは非常に難しいのではないかと思います。水は本当にタダじゃない・・。

<太田>

 中共の深刻な水不足問題については、コラム#1297で取り上げたことがあります。

<雅>

 抽象的なご質問で失礼しますが、全コラム(#2512)を読ませていただいて疑問がわくのですが、ファシスト国家と自由民主主義国家の間で「住民の生活・経済の発展」においてどのような差があるのですか?教えていただければ幸いです。

<太田>

 これはぜひ皆さんの間で議論して欲しいものですね。
 歴史を振り返ってみると、長期にわたって続いたファシスト国家としてフランコのスペインがありますが、「住民の生活・経済の発展」は妨げられたのに対し、「住民の生活・経済の発展」を実現したナチスドイツは極端な対外・対内政策を展開し、10年ちょっとで終焉を迎えた(迎えさせられた)のはご承知のとおりです。

<桜井順>(2007.6.21)
http://brain-jack.asablo.jp/blog/2007/06/21/1597038

 戦乱の東コンゴの軍事指導者、・・・40才の・・・ローレン・ンクンダ・・・は、大学教育を受けた知的な、カリスマ感じさせる男で、数時間、流暢な英語で活発に<クリストフ等>と話し合った。・・・彼は自ら熱心なペンタコステル派キリスト教徒だと名乗り、手下の兵士たちも殆ど改宗させたと。毎日祈りを捧げる教会と、兵士たちが洗礼受ける写真を見せて呉れた・・・。
 けれど、コンゴ政府は、彼に対し、戦争犯罪者として国際逮捕状を出して居る。さらに、国際人権擁護監視グループも、彼の軍隊が村人をレイプ、殺害し、掠奪を行なった告発しておる・・・。
 ・・・<ンクンダと会ったクリストフ等>が、へェ?とビックリするのは、反乱軍閥リーダーが「クリスチャン」を自称することやねん。まァ、アフリカの内戦・紛争の根底に在るのは、「西欧植民地後遺症」であることはマチガイ無い。しかし、「キリスト教」がリーダーの精神的支えになっているとしたら、それは一種の「原理主義宗教」やんけ。
 ソコントコを、見事に解説したブログを見付けた。防衛庁を足場に、多彩な経歴をお持ちの「太田述正」氏の「原理主義化するキリスト教」なるコラム(#93、95)。ポイントだけ引用させて頂く。

<中略>

 再びウム。キワメテ明快やねん。これで、軍事カリスマ・リーダー、ンクンダ君のキャラもハッキリ分かったやんけ。

<新井信介>(2008.1.9)
http://mediacapsule.ne.jp/purplejade/a/001063.html

 昨年年末に、守屋次官の案件で、防衛庁OBの太田述正さんが、テレビにも出演し、官僚批判をしてきましたが、これがご自身のブログで、トーン・アップです。
 以下は、全面的に賛成です。
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 「自分は安全保障・国際問題専門家と思っていたが、最近は、官庁不祥事専門家として、 問題を追及していく覚悟を決めた。」(コラム#2152)
 「守屋問題を、1夫妻の問題として終わらせようといる 検察(日本という国の)のバカさ加減  ⇒ そもそも、便宜供与だとか、接待ゴルフは瑣末な問題      
 防衛省の腐った体質にこそ目を向けなければいけない。 ⇒ 本来は、日本の〈恥部=政官業の癒着〉が浮き出される問題なのに!」(コラム#2216)

 「日本は米国の属国であり、外交・安全保障の基本を米国にぶんなげているので、本来の仕事をやらせてもらえない外務・防衛両省から退廃・腐敗が始まり、深刻化し、それが全省庁に波及している状況だということです。
 社会保険庁のことを思い出してください。

<中略>

 広汎な国民が覚醒し、蹶起し、総選挙の早期実施を勝ち取り、適切な投票行動をとることを私は呼びかけたいと思います。」(コラム#2213)
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 補助金や地方交付金を、特定業者の事業に使うことを斡旋し、その見返りに、選挙資金を得る。これが、これまでの国会議員秘書の仕事でした。
 21世紀に、本当に、必要な事業を、探し出したり、選別するには、どうすればいいか、 これも大問題ですが、今は、とにかく、太田さんが言う、癒着のトライアングルを、全部壊すのが先決です。

<八目山人>(2008.4.3)
http://yajizamurai.blog24.fc2.com/blog-entry-1195.html

 朝鮮征伐の時、朝鮮人を5万人連れ帰り、ポルトガル人に奴隷として売ったと、太田述正という防衛庁のキャリア組だった人が、書いていますが、そんな多くの人を積めるだけの船が、何処にあったのか。李瞬臣に船を沈められ、物資の輸送も大変だったのに。
 真実は、日本軍に協力した朝鮮人が、そのまま残れば殺されるので、どうしても連れて行って欲しいと付いて来たもので、家康が朝鮮と国交を回復する時、帰りたい者は名乗り出よと言っても、儒者以外では、一人も名乗り出なかった、と言うのが真実です。

<太田>

 「戦国時代には、戦闘に伴って「人取り」と呼ばれる略取が盛んに行われており、日本人奴隷は、主にポルトガル商人を通して世界中に輸出された(当時の日本の主要な輸出品の一つは奴隷であった)。関白の豊臣秀吉は、バテレン追放令でこれを禁じた。反対に、文禄・慶長の役では、数万の朝鮮人が日本へと略取され、大半はやはりポルトガル商人へと売却された。」とコラム#1717で記したところですが、これはウィキペディアの引用ですよ。
 それにしても、「真実は・・」以降の典拠を教えて欲しいなあ。

<Chase>(2008.4.11)
http://blog.zaq.ne.jp/fifa/

 太田述正氏のブログが面白い。
 数年程前から注目して読んでいたが、昨年からTVにも出演するようになり、スマッシュブレークしたような感じだ。
 氏の言論は、外交・防衛問題に関する限り、超一級品であり、日本人の彼への言論の理解がいかに進むかによって、真の改革がなされるか否かが決まるといっても過言でない。なんて私程度の人間がいえるものでは全くないが、心底正直な気持ちである。いい加減な言論が引きも切らない中で、太田氏の言論は干天の慈雨ともいうべきものである。
 組織の中枢にいた人間が、組織を真正面から批判するというのはもの凄いことである。この一点だけで、氏の言論の真実性が担保されているといっていいだろう。
 氏の言論のキーワードの一つが、戦後日本人の吉田ドクトリンへの盲信ともいうべき度を越した帰依の精神状態である。そこまでこのキーワードが重く戦後社会に圧し掛かっているとまでは認識していなかったが、氏の言論では元凶扱いであった。
 しかし、眼前にあるその桎梏を、現代においても克服できない日本人自体が摩訶不思議な存在である。自分たちで問題を意識できれば自ら変えればいいだけではないかと米国からよくいわれる日本人の勝手な憲法の呪縛の論理と同じである。
 太田氏は思想家ではないので発生論的な考察は残念ながら示されていない。
 日本人が単純に堕落したのか、もっと根深い連綿と続く 日本人のDNAによるものか。この問いに快刀乱麻に答えることができるのは植田信先生だけかもしれない。

<太田>

 どうもどうも。
 ところで私は、思想家であるか否かはともかくとして、縄文モード論とか、吉田茂の心中の忖度(コラム#1651等)といった「発生論的な考察」を行っていますのでお忘れなく。

<植田信>(2008.4.27)
http://8706.teacup.com/uedam/bbs

 コラム#2509に、小泉政権下で吹き荒れた「対米従属論」の核心の質問がありました。
 質問者はKAZU氏。
 ・・・
 この問題は、なかなか難しいようです。

 そこで、参考まで日高義樹氏の2003年の発言を紹介してみます。『アメリカの世界戦略を知らない日本人』からです。

 「アメリカ金融界の中心になっている全米銀行協会の元幹部が次のような報告をアメリカ政府に出したことがある。
 『アメリカ政府としては日本の財政投融資、そして郵便貯金制度、さらには際限のない公共投資をいまややめさせなければならない。
 日本の財政投融資、そして郵便貯金制度は、第二次世界大戦後の日本経済の危機を救った極めて優れた措置であった。大袈裟ではなく、財政投融資のアイデアは、ローマ帝国以来の優れた国家財政政策だった。
 しかしながら財政投融資や郵便貯金をそのために回すというやり方は、第二次大戦直後、日本経済が崩壊に瀕している中でのみ許された異常な特別措置である。
 こうした異常な特別措置は冷戦が終わって正常な資本主義体制になった今、早急にやめさせなければならない。日本が正常な資本主義活動の新しい政策を考え出すように指導しなければならない。』
 この銀行元幹部の提案は、日本が現在の経済的な発展を遂げた背景には財政投融資などの異常な政策を経済危機にあたって認めたアメリカの姿勢があり、日本経済の拡大はそういったアメリカの姿勢によってのみ可能だったといっているのである。」p.43,44

 さて江田氏によれば、小泉政権の構造改革案は日本発です。
 太田氏によれば、そういう発想は江田氏の夜郎自大です。
 どちらが真相か。

 私は、イメージ的には、歯科医の検診を受けて、治療の必要あり、と診断された児童のようなものだろう、と思います。児童は日本であり、医者がアメリカです。

 虫歯になりつつあることを医者が知り、治したほうがいいと警告します。医者としては当然の警告であり、義務です。
 一方、児童の親は、自分の子供が歯を磨かないので、虫歯の心配をしています。だから、歯を磨け、と子供にうるさく言います。
 この親と医者の立場が一致したのが、小泉構造改革だった、と。

 さて、実際の問題に戻って、ここで問題になるのが、財投、郵貯は、危機に対する特別措置だったのか、です。
 もしそうであれば、状況が変われば、正常に戻すべきでしょう。
 アメリカ側はそういう認識です。
 戦後の日本は長く特別措置を必要とするような経済小国だったし、つい最近まではアメリカは冷戦をしていました。そういう状況では、日本が特別措置をして いてもやむをえない、と。それどころか、アメリカ側は、財投・郵貯をローマ帝国以来の優れた国家財政政策だったと称賛しています。
 しかし、冷戦が終わり、状況は変わった。日本も普通の資本主義に戻れ、と。

 ここで浮上するのが、それは異常事態に対する特別措置だったのか、という問題です。
 いや、それが日本社会の普通の行動パターンではないのか。
 つまり、官僚主導経済です。

 私の考えは、アメリカ側の認識と、小泉政権の構造改革は、それぞれの立場から出てきたものだろう、と思います。
 それが、以上のような一致を見たわけです。

<太田>

 結論の部分については、私の申し上げていることと違わないのでは?
 なお、その直前の箇所、「日本社会の普通の行動パターン<は>・・・官僚主導経済」についての私のざっくりした考えはこうです。

 日本文明の特質は、それが人間(じんかん)主義であるところにある。
 日本が弥生モードにある時には、人間主義の部分が潜在化し、縄文モードにある時には顕在化する。昭和期の日本は、基本的に縄文モードだった。私は昭和期の日本の体制を日本型政治経済体制と呼んでいる。
 この体制は、官僚主導であると同時に民衆主導でもあった。意志決定は基本的にボトムアップで行われたからだ。要するにこの体制は、責任の所在が明確でない体制だった。

<死ぬのはやつらだ>(2008.4.27)
http://anarchist.seesaa.net/article/94823320.html

 太田述正さんがいわゆる冷戦時代の「ソ連の脅威」に関する重要な証言を皮肉たっぷりにしている。
 太田さんとは、昨年末に防衛利権の国会議員による口利きを実名で暴露した人だ。
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_11/t2007112033_all.html
 以下、先月末に行われたASAGAYA/LOFT Aでのイベント。
「三菱重工の正体と自衛隊の本質」より。
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 ソ連の脅威ってのは無かったんですね。逆に私がいろんなところで(ソ連の脅威が無かったことを)強調しているのですが。それは(ソ連にとって)日米の脅威だったんです、すべて。
 ソ連にとって一番弱いところは、極東部なんです。今も基本的なところは変わっていないのだけれど、なぜかというと、シベリア鉄道一本だけで結ばれている。人口も稀薄で、産業基盤もものすごく脆弱でしょう。逆に日米は、そのような場所に高度な産業が発達していて、米軍も駐留し、その米軍戦力と遜色ない自衛隊が存在している。
 実際、米軍はソ連との戦争に関して、ヨーロッパで遅滞作戦をしながら時間を稼ぎ、極東の日本を拠点として反攻をする。そういう戦略をとっていたんです。
 私も最初は驚きました。ソ連の脅威がすごいと言われた極東で、日米が反攻作戦をとる、というのはどういう事なのかと。
 実際に、防衛庁内で、北海道にソ連が上陸作戦を行った場合の図上演習をいろいろやっていたのだが、いつも自衛隊側が優勢になってしまう、米軍を無視しても。
 そういう状況だったのです。
 そんななかで、自衛隊創設直後から、ソ連による日本侵攻を想定した「日米共同作戦計画」が、自衛隊と在日米軍の間で毎年作られていた。日本が有事の際は、米軍が助けに来てくれるシナリオになっていたが、これは助けじゃない。ソ連領土に日米で反攻するのだから。
 防衛庁はそんなウソをついて、ソ連脅威論を唱える文化人の発言をほくそ笑んで見ていたんです。
 実態はまったく逆なんです。ソ連が日米の脅威に慄いているんです。
 だから護衛艦の役目なんてほとんどないんです。
 ソ連攻撃の際に、米海軍の空母を潜水艦の脅威から守るぐらいしかないのです。
(中略)
 私は、内部告発をしているつもりはないんです。現状はこうなんです。まさに期待通りの自衛隊なんです。ご安心ください。憲法9条は守られています。(戦争には)何の役にも立ちません。
 そして、防衛庁の中には、一般社会で通用するような人は1人もいません、みなさんの期待通りに。
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 予想通りというか、なんというか…結局「ソ連の脅威なんてなかった」ってのはガックリだ。
 80年代「ソ連脅威論」が元統幕議長来栖弘臣の「仮想敵国ソ連−われらこう迎え撃つ」や中川八洋の馬鹿げた本でブームとなったことを思い出す。
 太田さんのいうところの「期待通りに戦争に役に立たない自衛隊」ってのは、装備に関してその通りだよね。
 いまは、「中国脅威論」ってのがあるけど、どう考えても、日米がお得意先である中国が戦争するわけないしなぁ。

<太田>

 「そんななかで、自衛隊創設直後から、ソ連による日本侵攻を想定した「日米共同作戦計画」が、自衛隊と在日米軍の間で毎年作られていた。日本が有事の際は、米軍が助けに来てくれるシナリオになっていたが、これは助けじゃない。ソ連領土に日米で反攻するのだから。」
は、
 「そんななかで、ソ連による日本侵攻を想定した「日米共同作戦計画」が、自衛隊と在日米軍の間で作られていた。日本が有事の際は、米軍が助けに来てくれるシナリオになっていたが、これは助けじゃない。ソ連領土に日米で反攻するのだから。」
に改めないと間違いですね。
 ホントに私、そんな風にしゃべったのかなあ。
 ところで、このコラムに対する投稿はいずれもレベル高いですね。
 皆さん、ぜひついでにお目をお通しください。