太田述正コラム#2392(2008.2.28)
<米キリスト教原理主義退潮へ?(その3)>(2008.4.7公開)

 1960年代に米南部のキリスト教原理主義者達はプロテスタント右派の幼稚園から大学までの一貫校をいくつもつくりました。これは、公立学校における白人と黒人の分離禁止に対抗する目的で始まり、やがて進化論等の世俗的考え方の教育を回避する目的がつけ加わりました。
 今日のキリスト教右派の闘士の多くはこれらの学校の卒業生であり、彼らは政府、教育、財界のあらゆるレベルで力を振るう地位に就いており、彼らの子供達や孫達は、キャンパス十字軍(Campus Crusade for Christ)(注2)のような団体で活発に活動しています。
 (以上、特に断っていない限り
http://newsweek.washingtonpost.com/onfaith/guestvoices/2008/02/a_very_undead_christian_right.html 
前掲による。)

 (注2)米国最大のキリスト教原理主義団体と言われる。1951年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校の学生によって創設され、現在世界中に27,000人の専従職員を擁する。(
http://en.wikipedia.org/wiki/Campus_Crusade_for_Christ
。2月28日アクセス)

 それに何と言っても、キリスト教原理主義者は、現在でも米国で最も大きな投票ブロックです。
 しかも、人口学者も政治学者も一様に、今後10年から20年、米国では原理主義者がどんどん増えると予測しているのです。
 というのは、彼らは平均より子沢山であり、その上他宗教他宗派からの改宗者を沢山引き寄せると考えられているからです。
 もちろん、これまで説明したところからもお分かりのように、原理主義者達の様相が変貌しつつあることも忘れてはならないでしょう。
 このことを踏まえると、彼らは一層革新的(progressive)になるだろうと考えられています。
 昨年7月末にインターネット上で行われた調査によれば、原理主義者達の60%が、環境を保護しエイズ問題に取り組み貧困を軽減し人権を増進することの方が妊娠中絶や同性愛を減らすことよりも関心があると答えています。そして、特に関心があることとして、貧困の減少、健康状態と教育の改善、そして拷問の阻止を挙げています。
 だからと言って、彼らがリベラルになるわけではなさそうなのです。
 彼らの70%は妊娠中絶の廃絶は重要であるか極めて重要であると思っていますし、50%近くは同性愛者同士の結婚に反対しているのですから・・。
 彼らがなべて民主党支持者になるということもありえないと考えられています。
 これまでのあらゆる世論調査を通じ、原理主義者達の民主党のクリントン候補嫌いは一貫していますし、民主党のオバマ候補支持へという大きなうねりも見出せません。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/22/AR2008022202383_pf.html 
前掲による。)

 ここで大事なことは、キリスト教原理主義者達はおおむね低所得者層か中所得者層に属しているという点です。
 よって彼らは、過去四半世紀にわたって米国の製造業の基盤を掘り崩してきたところの自由貿易政策とは相容れないものがあるのです。
 つまり彼らの大部分は、近年隆盛を極めている企業財務、ハイテク、サービス、情報といった分野とは無縁だということです。
 民主党のカーターが1976年の大統領選を制したことによって一番裨益したのは共和党でした。カーター政権下でキリスト教原理主義者達が経済的に辛酸を舐めた結果、彼らと共和党との結びつきが一層強まったからです。
 今年11月の大統領選挙で民主党の候補者が当選するとして、2009年以降米国経済が不況に突入し財政がガタガタになるという可能性は否定できません。
 そうなった暁には、再びキリスト教原理主義者達と共和党との強固な結びつきが復活したとしても決して不思議ではないのです。
 (以上、
http://www.latimes.com/news/opinion/la-oe-jenkins25jan25,0,6613708,print.story
前掲による。)

6 終わりに

 このシリーズを読んでよくお分かりにならなかった方は、「原理主義化するキリスト教」シリーズ(コラム#93、95)、「両極分解する米国」シリーズ(コラム#331、456、458、470)、「ブッシュの大統領再選」シリーズ(コラム#524〜526、528、538)にあたってください。

(完)