太田述正コラム#2390(2008.2.27)
<米キリスト教原理主義退潮へ?(その2)>(2008.4.6公開)

 実際、2001年には18歳から29歳白人のキリスト教原理主義者達のうち55%が共和党支持者だと答えていたのですが、2004年11月には50%、2007年7月には40%へと次第に減ってきています(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/22/AR2008022202386_pf.html  
(2月25日アクセス)及び
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/26/AR2008022602647_pf.html
(2月27日アクセス))。

 そこへもってきて、原理主義者達を束ねて共和党と結びつけてきたお化け伝道師達が次々に退場しています。
 ジェリー・ファルウェル(Jerry Falwell。1933〜2007年。キリスト教原理主義最大のロビイスト団体の一つ、Moral Majorityを創設)とD・ジェームス・ケネディ(D. James Kennedy。1930〜2007年。テレビ伝道師)は亡くなりましたし、ジェームス・ドブソン(James Dobson。1936年〜。2004年にSlate誌が米国で最も影響力の強いキリスト教原理主義指導者と評した)やパット・ロバートソン(Pat Robertson。1930年〜。1988年の大統領予備選に共和党から出馬)は引退年齢にさしかかっています(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/22/AR2008022202383_pf.html  
。2月25日アクセス)。

4 キリスト教原理主義者達の動向と民主党
 
 当然これは民主党にとっては追い風です。
 ミズーリ州とテネシー州での先般の大統領予備選の時の調査では、白人の原理主義者で投票した人々の約三分の一が民主党の候補者に投票しています。これはたった二つの州での調査でしかありませんが、従来は約四分の一だったことを考えると興味深いものがあります(
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/26/AR2008022602647_pf.html
前掲)。

 一頃は、民主党の指導者達は原理主義者をナチス協力者であるかのようにみなしていたため、原理主義者の40%が自らを政治的に穏健であるとみなしているにもかかわらず、彼らに全くアプローチをしませんでした。
 それどころか、カトリック信徒までも袖にしてしまっていました。
 1988年の民主党の大統領候補のデュカキス(Michael Dukakis。1933年〜。大統領選挙ではブッシュ父に敗北。ギリシャ正教信徒)は、民主党の歴史上初めてのことですが、選挙期間中カトリックの集会への出席を拒み抜いたものです。
 しかし、最近ようやくそれではいけないという反省と、キリスト教原理主義者達の間で変化も見られるということから、民主党の指導者達の姿勢にも変化が現れています。
 まず、民主党の妊娠中絶寄りのスタンスにも微妙な変化が出てきました。
 つい最近の2004年の大統領予備選の時ですら、民主党の全候補者が妊娠中絶の部分的禁止にすら絶対反対で足並みを揃えたものです。世論調査では20%しかこのようなかたくなな態度には賛意を表していなかったにもかかわらず・・。
 ところが、2006年の秋、二人のカトリック信徒の民主党下院議員が妊娠中絶を減らすための措置を盛り込んだ法案を上程しましたし、同じ頃、コロラド州では、妊娠中絶の部分的禁止を掲げる民主党の候補者が知事に当選しました。
 そして今回の大統領予備選では、クリントン候補は敬虔なメソディストであり、アーカンソー州で長年日曜学校で教えた経験がありますし、オバマ候補に至っては、著書の『希望の大胆さ(The Audacity of Hope)』の中で、民主党は「抵抗勢力の党(party of reaction)に堕してしまった。・・宗教的影響の増大に対して抵抗し、寛容を世俗主義と同等視することによって、われわれは、諸政策により大きな意義付けをするところの道徳的言語を投げ捨ててしまったのだ」、「公的な場における神への言及が常に政教分離違反を構成するわけではない」、「世俗主義者が、公的な広場に入場する際にそれぞれの宗教をドアの前に置いてくることを宗教信者に対して求めることは間違っている」と民主党離れした記述を行っています。
 おかげで、クリントンはともかくとして、少なくともオバマは原理主義者の一部の支持をとりつけるのに成功しつつあります。
 (以上、
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/02/22/AR2008022202386_pf.html
上掲、及び
http://newsweek.washingtonpost.com/onfaith/georgetown/2008/02/are_evangelicals_obamacurious.html
(2月27日アクセス)による。)

5 キリスト教原理主義と米国政治の今後

 だからと言って、キリスト教原理主義の米国政治における影響力はこれからも減衰を続ける、とまでは言い切れません。

(続く)