太田述正コラム#2376(2008.2.20)
<パキスタン議会選挙(その1)>(2008.4.3公開)

1 始めに

 比較的公正に実施された選挙の威力、意義といったものを感じさせる結果が今次パキスタンの議会選挙で出ました。
 
2 選挙前の状況

 ブット暗殺事件等については改めて触れませんが、選挙前のパキスタンの情勢には深刻なものがありました。
 過去2年間でテロリストの攻撃による死傷者数は5倍に増えました。2007年には実にテロリストの攻撃や政治的暴力や国地帯の紛争が1442件もあり、3,448人の死者と5,353人の負傷者が出ているのです。(
http://www.time.com/time/printout/0,8816,1700689,00.html
。1月6日アクセス)

 このような情勢の下、昨年11月にムシャラフが戒厳令をしく直前に実施された世論調査によれば、どれくらいイスラム教の原則に則って国が統治されるべきかを1から10までの指標から選ばせたところ、61%が10、すなわちイスラム教の原則に則るべきことが絶対的に必要であると考え、回答の総平均は9.0であり、60%はシャリア(イスラム法)が現在に比べてより大きな役割を果たすべきだと考えています。
 その一方で、どれくらい人民によって選挙された議員によって統治される国、すなわち民主主義国家に生きたいかを1から10までの指標から選ばせたところ、回答の総平均は8.4でしたし、裁判所の判決が政治的ないし軍事的権力から独立している程度が高い国、すなわち司法権が独立した国に生きたいかを選ばせた結果も同じようなものでした。
 そもそも、日常生活のタリバン化を欲する人は15%しかいませんし、五分の三はアルカーイダの活動はパキスタンの死活的利益にとって脅威であると考えています。また、三分の二は現在の政府のマドラッサ(イスラム学校)改革計画・・算数や科学をより重視することを含む・・を支持しています。
 面白いことに、シャリアが現在に比べてより大きな役割を果たすべきだと考えているうちの60%は、民主主義国家やマドラッサ改革計画への支持が平均より高いという結果が出ています。
 いずれにせよ、64%は米国が世界において責任ある態度で行動しているとは思っていませんし、米国との安全保障や軍事に関する強力がパキスタンのためになっていると考えている人は27%しかいません。それどころか、72%は米国のアジアにおける軍事的プレゼンスはパキスタンの脅威であると考えているのです。また、86%は米国のねらいはイスラム世界を弱体化し分裂させることにあると考えているのです。
 (以上、
http://newsweek.washingtonpost.com/postglobal/needtoknow/2008/01/a_new_lens_on_pakistan.html  
(1月10日アクセス)による。)
 要するに、パキスタンの人々は米国が大嫌いで、イスラム教が大好きであると同時に、自由民主主義も大好きであるわけです。

 また、昨年12月初頭に公表されたパキスタンでの世論調査結果によれば、67%がムシャラフの大統領即時辞任を求めており、70%はムシャラフの政府が選挙で再選されるべきではないと考えていました。
 そして、56%は軍部が政府において何の役割も果たすべきではないと考えているのです。
 ちなみに、ブットの党Pakistan Peoples Party(PPP)の支持者は30%、シャリフの党Pakistan Muslim League(N)(PML-N) の支持者は25%、ムシャラフの与党Pakistan Muslim League (Q)(PML-Q))の支持者は23%でした。
 (以上、
http://www.nytimes.com/2007/12/13/world/asia/13pakistan.html?_r=1&oref=slogin&ref=world&pagewanted=print  
(2007年12月13日アクセス)による。
 要するに、パキスタンの人々は、ムシャラフに心底飽きているわけです。

3 議会選挙の結果

 そうして、まさにこの二つの世論調査の結果を忠実に反映した選挙結果が出たのです。

(続く)