太田述正コラム#2455(2008.3.30)
<皆さんとディスカッション(続x99)>

<MN>

 温かいレスをありがとうございます。
 ヴィリリオの引用の件については、まったくおっしゃる通りです。。
 冗長を避けようとしたのと、急いで書いたことが重なり、とりわけ推敲の足りない文になったと反省しています。
 始めの引用部分については、なぜUNやNATOが批判されるに至ったか、という部分が欠けており続く引用部分でも、前述部分に同様です。
 戦争のテクノロジに関する著者の考察を省いて『軍人』がいかなるものとなるかを示す部分のみを引用したため、説得力に欠け、扇動的になってしまったと思います。
 また時間のあるときに補足させていただきたいと思います。
 さて、本山論文にご興味をお持ち頂いたようでとても嬉しく思っております。

>無線ICタグの国際標準化問題

 その後、について少し調べさせていただきました。
 まずは
http://ja.wikipedia.org/wiki/Electronic_Product_Code
 これに、どうやらEPCがGTIN(ジーティン)に衣替えしたらしいことを付け加え ておきます。
 GTINに対応するEPCとUコードの勝ち負け、みたいな話はまだ見つけていませんが、『GTIN』が標準化された今、そのリンケージであるEPCとUコードは、いわゆるデファクトスタンダードの争いになっていると思います。
 そして、
http://www.dsri.jp/invres/study_report/iryou_research.htm
http://www.fmric.or.jp/trace/tebiki/tebiki_rev_draft070209.pdf
http://homepage3.nifty.com/nsk-nhk/edi/20061127GTIN.pdf
 すでにわが国で導入が進められている様子が伝わります。EPCでネ。

 極め付けです
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/gtin.html
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/eanucc.html
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/gdsn.html
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/epc.html
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/rfid.html
http://jp.sun.com/solutions/retail/funamoto/vol2/

 サンのシステムがウォルマートに売り込まれたようですね。

<太田>

 さっそくありがとうございます。
 お示しの一番最後のfunamoto/vol2(2005年5月末以降執筆)によれば、

 「ウォルマートに限らず、ターゲット、ベストバイ、アルバートソン、ドイツのメトロ、英国のテスコをはじめとした大手小売業でのRFID本格稼動が本年中には一斉に開始される。・・このような中で、RFIDの採用に積極的に取り組む消費財メーカーが次々と出てきている。・・サプライチェーンの革命的とも言える壮大なプロセス変革事業を、目的を同じくして着実に推進している・・。重要なことは<米国では>各サイドが個別に行っているのではなく、一体となって進めていることである。・・我が国においても対岸の火事として傍観したり、批評家的立場を取っているだけではなく、具体的な一歩を踏み出す時期に来ていると認識する必要があるだろう。」

とうことのようですね。
 本山教授がおっしゃるように「IT設備投資世界第1位」の米国防省が「第2位<の米>ウォルマート」と連携してRFID流商品管理無線ICタグの導入をグローバルに推進しているのだとすれば、軍が技術/組織革新を引っ張ってきたという拙著『防衛庁再生宣言』での指摘を裏付ける最新動向の一つということになります。

<ちんみ>

 --ワーキングプアの「派遣」先は、戦場〜--

 堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』岩波新書、700円(税別)に関する書評(栗原裕一郎)が
http://business.nikkeibp.co.jp/article/life/20080326/151245/
に載っています。

 ブッシュ大統領の肝いりで2002年「落ちこぼれゼロ法」が施行された。全国一斉学力テストを義務づけ教育に競争を導入することで高等学校における学力の低下に歯止めをかける、というのが表向きの目標として掲げられていたが、この法律の本当の狙いは生徒たちの個人情報にあったという。全高校に生徒の個人情報の提出が要請されており、拒否した学校は助成金をカットされるという条項が織り込まれていたのだ。裕福な子女が通う高校にとっては助成金などどうということもないが、貧しい地域の高校は存続にかかわるため提出せざるをえない。つまり貧困層がターゲットだったわけだ。個人情報収集の目的は何か? 軍へのリクルートを効率的におこなうための素地づくりである。〈米軍はこの膨大な高校生のリストをさらにふるいにかけて、なるべく貧しく将来の見通しが暗い生徒たちのリストを作り直す。そして七週間の営業研修を受けた軍のリクルーターたちがリストにある生徒たちの携帯に電話をかけて直接勧誘をするしくみだ〉
 ・・
 唐突に憲法9条を持ち出す著者の思考形態<や、陳腐な>グローバリズム批判<といった>イデオロギーに染まった部分については読み手がチェックを入れるという前提に立てば、本書はきわめてすぐれたレポートであると思う。

<太田>

 私が、タイトルを見ただけで読まないことにした書評ですね。
 私は随分前から日本人の書いた外国についての本は一切読まないことにしています。この種の本の書評だって原則そうです。ただ、批判をする素材としてこの種の本の書評に目を通すことはあります。
 今にして思えば、この書評は読んだ方がよかったかも。
 書評子である栗原裕一郎も、そしてこの本の著者である堤未果(川田龍平参議院議員の奥さんになった人らしい)も、どちらも問題なしとしないからです。
 まず、「唐突に憲法9条を持ち出す著者の思考形態<や、陳腐な>グローバリズム批判<といった>イデオロギーに染まった部分」というのは、的確な堤未果批判です。私だって同じ批判をしたことでしょう。
 しかし、それに続く、「については読み手がチェックを入れるという前提に立てば、本書はきわめてすぐれたレポートであると思う。」には「ありえねー」と言いたくなりました。
 視座が歪んでおれば、取材も、従って記述も歪んでくるはずだからです。
 事実記述が歪んでいるというのが堤に対する第二の批判であり、これは最低限のチェックをせずに「すぐれたレポートであると思う」と言い切った栗原に対する第二の批判にもなろうかと思います。
 どういうことか。
 ブッシュが導入した問題の法律を、堤と同様の観点から批判している米国のサイト
http://www.afsc.org/newengland/nh/finalafscyouth/militaryrecuitment.html
に昨日アクセスしたところ、以下のような記述がありました。
 
 「・・この法律に基づいた支援を受けた個々の教育機関(Each local educational agency)は、軍のリクルーターまたはより高等な教育機関(institution of higher education)からの、中学校生徒の名前、住所、電話番号へのアクセス要求に応じなければならない。これら要求に応じない学校は連邦補助金の相当部分の支給を打ち切られる場合がある。・・中学校の生徒またはその両親が要求すれば、その生徒の名前、住所、電話番号が書面による同意なくして開示されることはない。また学校当局は、軍のリクルーターに他の外部組織(outside entities)に対するもの以上の便宜供与を行わないとすることができる。例えば、生徒達がそれ以外の組織のリクルーター(alternative speakers)の話をも併せて聞くことができるフォーラムを学校に設け、そのフォーラムにのみ軍が募集担当者を派遣することができることとすることができる。・・」

 なーんだ、と拍子抜けされたでしょ。
 それでもなおかつ、この法律を批判するなんて、米国内ではごくごく少数の意見のはずですよ。
 読者がよく知らない外国の話を取り上げて、鬼面人を驚かす類の記述するのは、いかがなものでしょうか。

 ところで私は、日本の現役官僚や天下りした官僚OBの書いた本は、その書評を含め、一切取り上げないことにしています。
 意識するとせざるにかかわらず、体制べったりの内容であるに違いない本になど何の関心もないからです。
 しかし、その書評が英米の有力メディアに載ったらそりゃあ読みます。
 300万部以上売れたという坂東眞理子(1946年〜)の『女性の品格』(2006年9月)がニューヨークタイムスで厳しく批判されていました(
http://www.nytimes.com/2008/03/29/world/asia/29bando.html?ref=world&pagewanted=print
3月29日アクセス)。
 板東は東京大学文学部卒後の1969年に総理府入省。1975年総理府婦人問題担当室(男女共同参画室の前身)が発足した時、最年少の担当官として参加、1978年に日本初の「婦人白書」の執筆を担当した。1980年よりハーバード大学へ留学。統計局消費統計課長、埼玉県副知事、在豪州ブリスベン総領事(女性初の総領事)、総理府男女共同参画室長、内閣府男女共同参画局長等を経て2003年に退官。・・2003年8月31日の埼玉県知事選挙に出馬するが落選。以後、同年10月に昭和女子大理事、2004年4月同大女性文化研究所長および教授、2005年4月同大総務担当副学長、2007年4月同大学長に就任、という経歴です。
 確かに知事選に出た時は自民党の推薦を受けたわけではありませんし、昭和女子大とのご縁も天下りではなかった可能性はあります。
 実に、現役官僚の時代に著書24冊、翻訳書2冊も上梓しているのですから・・。
 (以上、事実関係は
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E6%9D%B1%E7%9C%9E%E7%90%86%E5%AD%90
(3月30日アクセス)による。
 しかし、だからこそ板東はうさんくさい。
 彼女の官僚時代の経歴は、(まだ現役官僚とも言える)最高裁裁判官の横尾和子と、役所こそ異なれ、極めて似ており、一定レベルに達した女性キャリア官僚に対する逆差別の典型的事例であるとも言えそうです。
 それはともかく、官僚時代にこんなに沢山の本を書いたこと自体が問題なのです。
 これは、彼女が勤務で得られた知識や情報を流用し、恐らくは勤務時間の一部も使って印税収入を得ていたことを意味する、と言いたくなるところはぐっと抑えましょう。
 彼女自身が、『女性の品格』の中で、「ほとんどあらゆる経済的社会的指標に照らし、日本の女性は他の先進諸国の女性に遅れをとっている。日本のシステム、すなわち、法、職場は女性に対して厳しいものとなっている。」ことを認めている(NYタイムス上掲)にもかかわらず、この女性差別システム・・これは政官業癒着構造と表裏の関係にあると言える・・の抜本的変革の必要性を指摘しない内容の本ばかりを出していたであろうことが問題なのです。
 さもなきゃ彼女は、逆差別の対象としておいしいポストばかりをあてがわれる形で出世し、局長まで勤め上げることなどできなかったことでしょう。
 逆差別の対象になるほどの恵まれた女性であれば、それこそ日本の女性差別システムの抜本的変革を目指し、犠牲を払うことを厭わず、問題提起をしたっていいくらいのところ、せめて沈黙していてしかるべきだったと私は思うのですが、まことに遺憾です。
 それでも懲りずに板東は、『女性の品格』において、「攻撃的で独立的」であるという印象を与えないところの「男とは異なった形の品格」の追求という「洗練された」道を薦めることによって、事実上古くさい「良妻賢母」となることを日本の女性達に薦めた(NYタイムス上掲)ことでまたまた大儲けをしたわけです。
 これじゃいつまで経っても、日本の女性は浮かばれないじゃありませんか。

<ケンスケ2>

 コラム#2092「朝鮮戦争をめぐって(その2)」を読みました。
 朝鮮戦争が、金日成の皮をかぶった人民解放軍の南進であったことは、よく知られるようになっています。
 ようやく。
 米軍はこのときまで、ゲリラ戦というものを体験しておらず、正規軍同士の決戦で勝負がつくような戦争しか想定していなかったわけですね。
 この失敗はその後ベトナムでもイラクでも繰り返されるわけですが。
 旧日本軍の踏み込んでいた泥沼の深さも、今漸くアメリカ人も理解し始めたのかも知れませんね。

<太田>

 朝鮮戦争に人民解放軍が参戦したのは、あくまでも途中からです。
 また、朝鮮戦争は、北側が、ゲリラ的な戦術を採った部分はあったでしょうが、基本的に正規軍同士の戦いでした。
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太田述正コラム#2456(2008.3.30)
<駄作史書の効用(その2)>

→非公開