太田述正コラム#2351(2008.2.7)
<オバマ大頭領誕生へ?(続x4)>(2008.3.22公開)

1 始めに

 2月5日火曜日、いわゆるスーパーチュースディに全米22州で大統領予備選が一斉に行われ、オバマが14州を制しクリントンが8州を制したところ、両者は、(カリフォルニア州等で不在者投票分がまだ確定していないものの、)ほぼ同じ得票率、つまりは選挙人数を獲得し、両者とも勝利宣言を発するという結果になりました。
 この22州における予備選の分析を行い、今後の展望を占ってみましょう。

2 分析

 (1)全般

 出口調査の結果は、オバマが若年者、高学歴層、黒人に支持され、クリントンが女性、労働者、ラティノ/アジア系に支持されていることをはっきり示しています(
http://www.guardian.co.uk/uselections08/story/0,,2253170,00.html
。2月7日アクセス。以下同じ)。

 (2)黒人差別を克服した米国社会?

 ただし、このうち黒人にオバマが支持されていることが、米国社会の黒人差別性を意味しているかどうかについては、意見が分かれています。
 事前の世論調査でオバマがクリントンに追いついたとされていたマサチューセッツ、カリフォルニア、ニュージャージーでクリントンが楽勝したのは、ブラッドレー効果(コラム#2294)によるのではないかとする指摘があります。
 (そして、そのように受け止める人が多ければ、オバマを民主党大統領候補に指名したとしても、本戦で共和党候補にブラッドレー効果で敗れるのではないかという懸念から、今後オバマが伸び悩む懼れがある、ということになるわけです。)
 (以上、
http://commentisfree.guardian.co.uk/jonathan_freedland/2008/02/it_aint_over_yet.html
による。)
 これに対し、米国社会が黒人差別を克服したことは明らかだとする指摘もあります。
 今回オバマが、党員選挙ではなく党員集会(caucus)が行われた7州(いずれもオバマ勝利)、を除く15州中の11州で、20年前に黒人で民主党大統領予備選に立候補したジェシー・ジャクソン(Jesse Jackson)がとった白人からの最高得票率たる20%強を超える白人得票率を獲得したし、8州では得票率40%を超えたし、コネチカットではクリントンと白人得票率がほぼ同じだったし、カリフォルニアではクリントンを上回り、ユタとイリノイでは大きく上回ったことからそう言える、というのです。
 (以上、
http://www.slate.com/id/2183835/
による。)
 私としては、後者の指摘が正しいと信じたいところです。

 (3)支持層から見たオバマとクリントン拮抗の異例さ

 クリントンは、その支持層から見て民主党最強の候補のはずなのに、今回両者の得票率が拮抗したというのは異例であるという指摘がなされています。
 実際、過去においては、ハート(Gary Hart)はクリントン的支持層に支持されたモンデール(Walter Mondale)に、ツォンガス(Paul Tsongas)とブラウン(Jerry Brown)はビル・クリントンに、ブラッドレー(Bill Bradley)はゴア(Al Gore)に民主党大統領予備選で敗北しています。
 今回オバマがクリントンと拮抗することができたのは、オバマがハートやブラッドレーと高学歴者、リベラル、無党派層という支持層を共有しているだけでなく、熱狂的な若年層と、ハートやブラッドレーが望むべくもなかったところの黒人、という二つの新たな重要な支持層を持っているからだ、というのです。
 (以上、
http://blog.washingtonpost.com/the-trail/2008/02/06/dems_evenly_matched_support_me.html?hpid=topnews
による。)

 (4)党員集会に強いオバマ

 今回党員集会が行われた7州すべてでオバマが勝利しただけでなく、今まで党員集会が行われた州のうちアイオワ州でも彼は勝っており、党員集会でクリントンが勝利したのはネバダだけです。このネバダは、クリントンの支持層であるラティノが多数を占めているという特殊事情がありました。
 これは、直接会った人を惹き付けて止まないオバマの魅力に加えて、オバマに心酔した支持者達による熱意溢れかつ徹底的な電話作戦や戸別訪問・・これは党員投票が行われるような人口の多い州では十全には実施できない・・に起因する、というのです。

 (5)投票率の高さ
 
 今回投票率は27%に達し、これは過去最高であった1972年の民主党予備選投票率の25.9%を上回る史上最高でした。

 (以上、
http://thecaucus.blogs.nytimes.com/2008/02/06/the-results-its-all-in-the-details/
による。)

3 今後の展望

 (1)オバマ不利説

 ブラッドレー効果を心配する指摘については既にご紹介したところですが、そのほか、オバマが、クリントンの支持層である労働者層における支持を増やさないとクリントンに勝てないのではないかとする指摘があります。
 その鍵をにぎっているのは、一つは、労働者層の心に響く経済政策をオバマが打ち出せるか、そしてまた、労働者層に一番強く、既に予備選を降りたエドワーズ(John Edwards)前上院議員の支持を取り付けることができるかだ、というのです。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/comment/story/0,,2253692,00.html
による。)

 (2)オバマ有利説

 これに対し、オバマ有利説はひきもきりません。

 まず、彼は選挙資金面でクリントンより優位に立っています。
 1月の寄付受け入れ額はオバマが3,200万米ドルであったのに対し、クリントンは1,300万米ドルにとどまっており、ついに自分のカネを貸し付けるところまで追いつめられています。
 これは、オバマの支持者の方が寄付する人が多く、しかもその大部分は小額寄付者なので、何回も追加的寄付ができるのに対し、クリントンの支持者で寄付する人は少なく、しかもその多くは多額寄付者で、既に一人当たり寄付額目一杯寄付している人が多いためです。
 ということは、今後クリントンの寄付集めはますます苦しくなっていくということです。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/barackobama/story/0,,2253603,00.html
による。)

 次に、これからの予備選でのオバマの優位が予想されていることです。
 ワシントン州は党員集会なので、オバマ勝利はまず間違いありませんし、ルイジアナもネブラスカもワシントン市もメリーランドもバージニアも黒人党員が多いことからオバマが有利です。
 また、ハワイはオバマが育った所ですし、ウィスコンシンでは州知事がオバマ支持を表明しています。
 一方クリントンが優位にあるのは、州知事が支持を表明しているオハイオ州やペンシルバニア州くらいなものなのです。
 (以上、
http://www.guardian.co.uk/uselections08/hillaryclinton/story/0,,2253207,00.html
による。)

4 終わりに

 オバマ優位は固まったと私は見ているのですが、いかがでしょうか。
 オバマが暗殺されでもしない限り、オバマは民主党の大統領候補となり、米国の大統領になることでしょう。
 予想がはずれたらどうするかって?
 クリントンが大統領になったって、女性差別撤廃論者でもある私としては、祝杯を挙げるつもりですから、別にどうってことありません。
 どっちに転んでも、ブッシュよりは全然マシですよ。